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ロンティ・エバース(Lonti Ebers)

拠点:イギリス・ロンドン、アメリカ・ニューヨーク
職業:インフラ関連、不動産業
収集分野:現代アート

ロンティ・エバースは、ブルックフィールド・アセット・マネジメントのCEOである夫とともに、ロンドンとニューヨークで2拠点生活を送っている。彼女も多くのコレクターと同様、700点を超える現代アートのコレクションについて基本的には公にしていない。例外的に注目されたのは、2019年5月のサザビーズ・ニューヨークのオークションで、アリス・ニールの《Georgie Arce No. 2》(1955)を予想最低落札価格の倍にあたる72万8000ドル(約1億630万円)で落札したことだ。

エバースはまた、アーティストを支援する献身的な姿勢でも知られる。以前はニューヨークのニューミュージアムで長年にわたり理事を務め、現在はニューヨーク近代美術館の理事になっている。2013年にニューミュージアムでクリス・バーデンの回顧展が開催されたときは、それぞれ1キロの重量がある金の延べ棒を山のように重ねた1985年の作品、《Tower of Power》を貸し出してもらうための資金を提供。この作品は、当時300万ドル(約4億4000万円)の価値があるとされていた。数年後、彼女は他の理事とともに、ニューミュージアムの第1期拡張工事(2018年に完成)への寄付を行った。エバースは最終的に副理事長となったが、2020年のニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、長年ニューミュージアムの館長を務めていたリサ・フィリップスの報酬をめぐる軋轢から、2018年に理事の職を辞している。

2018年、エバースはブルックリンのブッシュウィック地区とイタリア・トスカーナ州キウスレ村で、2つのアーティスト・レジデンス・プログラムを開始した。ブッシュウィックのスペースを設計したオランダ出身の建築家、フロリアン・イデンバーグは、2007年にニューミュージアムがマンハッタンのバワリー地区に移転した際、SANAA設計の美術館建設の陣頭指揮にあたった人物だ。

ブッシュウィックのオープンは2021年。こけら落としにはベルリンを拠点とするアーティスト、グラダ・キロンバの個展をルース・エステベスのキュレーションで開催した。エバースは、工場の多いブルックリンの環境を反映したブッシュウィックのスペースを「アートのキャンパス」とし、イタリアのスペースは牧歌的な環境を反映した場所にしたいと考えている。2018年に彼女は、US版ARTnewsにこう語った。「コレクションスペースを持つことが目的ではありません。アーティストのことを第一に考えたいのです」

注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。

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