電気椅子が描かれた「究極のウォーホル作品」がオークションへ。予想落札価格は約43億円
死刑執行の際に使われる電気椅子が描かれたウォーホル作品《Big Electric Chair》が5月にクリスティーズ・ニューヨークで開催されるイブニング・セールに出品される。アート市場規模が縮小傾向にあるなか、同社はおよそ43億円で落札されると推測している。

美術品の高額取引が鈍化しているなか、クリスティーズは5月にニューヨークで開催されるイブニング・セールにアンディ・ウォーホルの《Big Electric Chair》(1967-1968)を出品することを発表した。同社は、3000万ドル(約42億9000万円)の価値があると推定している。
中央にニューヨーク州で死刑が執行される際に実際に使われた電気椅子が描かれた幅およそ1.8メートルに及ぶこの作品は、もともとベルギー人コレクターであるロジャー・マティスとヒルダ・コレが所蔵していた。2人はすでに他界しているが、「ベルギーの現代美術シーンで最も影響のある人物だった」と、クリスティーズの戦後および現代美術の専門家であるピーター・ヴァン・デル・グラーフは語る。存命中にマティスとコレは積極的に現代アートを収集し、ベルギーのゲント美術館に長期的に貸し出すなどをして国内のアートシーンに大きく貢献していたという。
アート・バーゼルとUBSが発表した最新調査「Art Market Report 2025」によれば、世界のアート市場規模は12%減少して575億ドル(約8兆2167億円)で、2年連続で縮小している。また、1000万ドル(約14億2800万円)超の高額作品の取引額は45%減少した。
このような市況のなかクリスティーズは、《Big Electric Chair》の来歴をアピールしてコレクターを惹きつけようとしている。この絵画が予想価格の通りに落札されれば、2014年に同作品が記録した2040万ドル(約29億1500万円)を上回り、最高落札額の記録を更新する可能性がある。
クリスティーズの20世紀・21世紀美術部門の責任者を務めるアレックス・ロッターはUS版ARTnewsに対して、この絵画は「究極のウォーホル作品のひとつ」と言えると語り、こう続ける。
「これはウォーホルが制作した重要なシリーズ作品であり、死刑執行の際に電気椅子を使用することの是非というテーマは、彼が長年取り組んだテーマのひとつでもあります」(翻訳:編集部)
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