チャールズ国王の公式肖像画が「地獄の悪魔のよう」「冥界への入り口」と大炎上
5月14日、イギリスのチャールズ国王の即位後初となる公式肖像画がバッキンガム宮殿で公開された。しかし、背景が赤一色の個性的な肖像画に世間は大騒ぎになった。
チャールズ国王の新作肖像画は高さ2メートル30センチ、幅約1メートル65センチ。ウェールズ衛兵の制服を着て剣を持つ国王の姿が正面から描かれている。しかしこの絵が想像を超えてくるのは、その背景が赤一色であることだ。国王の表情は憂いを帯び、体は背景に消え入るよう。その肩の上には蝶が止まっている。
この肖像画を手掛けたのは、イギリス人アーティストのジョナサン・ヨー。過去には2008年に故フィリップ殿下、2014年に国王の妻カミラ王妃を描いたほか、トニー・ブレア元首相や実業家のルパート・マードック、ダミアン・ハーストなど著名人の肖像画も制作している。
この個性的なチャールズ国王の肖像画は、すぐに批判の的となった。Cut誌ライターのダニエル・コーエンは、「チャールズ国王の顔は、暴力的な筆致の間に浮かぶ、実体のない亡霊のようだ」と指摘し、ニューヨーク・タイムズ紙の主任ファッション批評家、ヴァネッサ・フリードマンは、「それにしても、この(赤という)色の選択は、国王が即位以来耐えてきた......そう、大炎上を考えると、特に危ういように思える」と書いた。
その予想通り、ソーシャルメディアには肖像画のイメージについて残酷な言葉が立て続けに投稿された。例えば「地獄の大悪魔」、「サタンだ」、「血の入浴」、「大英帝国時代に流れた血に囲まれている」、「冥界への入り口」などだ。これらはまだ序の口であり、最近のXの傾向を考えると、今後炎上が加速する可能性が高い。
だが、少なくとも1人の美術批評家はこの作品を気に入っていた。リチャード・モリスはX(旧ツイッター)に、「少しエッジが効いているが、コンテンポラリーな肖像画を得意とするアーティストらしい仕事ぶりだ。偉大な画家に自分の本当の姿を描いてもらうために、チャールズ国王は自分の欠点や死の訪れについて受け入れる必要があった。ヨウはそれを見事に捉えている」と投稿した。
肖像画に対する国王のリアクションについてヨウはBBCに、「予想外の強い色彩に少し驚きつつも、満足そうな笑みをたたえていた」と語った。
この肖像画は、かつては毛織物商の業界団体であり、現在は慈善団体となっているドレイパーズ・カンパニーがヨウに依頼したものだ。ヨウは肖像画のお披露目に際して発表したステートメントで、「戴冠式以来初となる国王陛下の肖像画をドレイパーズ・カンパニーから依頼されたことは大変光栄であり、喜びでした」と述べ、こう続けた。
「このプロジェクトを始めたとき、国王陛下はまだプリンス・オブ・ウェールズ殿下でした。私が描いた国王陛下の肩にとまる蝶のように、この肖像画もまた、公的生活における国王陛下の役割が変化するにつれて進化してきました」
「私はこれまでも、個々の被写体の顔に刻まれた人生経験や人間性を捉えることに尽力してきました。この肖像画でも、それが達成できたと思います。唯一無二の役割を担っている国王陛下の人生経験や人間性を捉えようとすることは、プロとしてとてつもない挑戦であったと同時に、私はその過程を楽しみ、この機会を頂いたことに心から感謝しています」
この肖像画を完成させるにあたり、国王は4度にわたってヨウの前でポーズをとったという。初回は2021年6月に行われた。タイムズ紙とのインタビューでヨウは、チャールズ国王の物腰が「国王になってから確実に変わった」と振り返っている。
肖像画は8月末からロンドンの金融街にあるドレイパーズ・ホールに展示されるが、それまでは、ロンドンのフィリップ・モールド・ギャラリーで一般公開される。
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