ミュウミュウと映像作家セシル・B・エヴァンスがコラボ。ランウェイは新しいアイデアを試す「実験場」
3月5日、ミュウミュウの2024-2025年秋冬コレクションがパレ・ディエナ内で開催された。会場の天井からつるされたディスプレイには、映像作家のセシル・B・エヴァンスが手がけた作品が映し出されており、自身が関心を寄せている「記憶」というテーマを掘り下げることができたとエヴァンスは語る。
2024-2025年の秋冬コレクションをパリ・ファッションウィークで3月5日に発表したミュウミュウ。そのランウェイショーで上映されていた短編映像作品《Reception!》をアーティストのセシル・B・エヴァンスが手がけている。
デジタル技術の根底に潜む構造を長いこと探求してきたエヴァンスは、2016年のベルリン・ビエンナーレで《What the Heart Wants》を発表し、人種と技術の関係を探った作品として高い評価を得ている。また、批評家のハナ・ブラックはアートメディアArtforumにおいて「社会のテクノロジー化に関心」を示している作家だと、エヴァンスを評した。
ミュウミュウのランウェイで上映された《Reception!》は、その地続きとなっている作品とも捉えられる。複数の映像で構成されたこのインスタレーションに登場する、人類最後の通訳者を演じているのは、フランスの俳優ガスラジー・マランダだ。使われなくなった言語のスペシャリストを演じる彼女は、かつて政府庁舎として使われていたデータセンターを再利用し、水に沈んでいく仕事場で他人の記憶を英語に書き換える仕事を行っている。
今回のショーで上映された映像を発注したのは、ミュウミュウとその姉妹ブランドを率いるミウッチャ・プラダだ。パレ・ディエナ内で開催されたミュウミュウのショーの会場にはディスプレイが吊り下げられ、AIが生成した映像がそこには映し出されていた。
エヴァンスがミラノのプラダ財団にあるジャン=リュック・ゴダールのスタジオ・ドルフェに関連したコラボレーションを提案したことで、エヴァンスの作品をより深く知ることになったと、プラダはWWDのインタビューに語っている。
プラダはブランドのプロジェクトにアーティストを起用することでよく知られているなか、今回コラボレーションによって、堅苦しくない環境で映像を探求し、自身が関心を寄せている「記憶」というテーマを掘り下げられたと、エヴァンスは言う。また、美術館やギャラリーの枠にとらわれずに新しものを生み出せたとエヴァンスは語り、このコラボレーションを「実験の場」と呼んでいる(翻訳:編集部)
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