ディオールが最新ショーで、黒人女性アーティストで女性解放の象徴、フェイス・リングゴールドとコラボ
6月24日、ディオールの2024-25秋冬オートクチュールコレクションがロダン美術館で開催された。会場はアフリカ系アメリカ人のフェイス・リングゴールドが1970年代に制作した作品の複製画で覆われていた。
毎シーズン、クリエイティブディレクターのマリア・グラツィア・キウリの情熱に導かれ、様々な女性アーティストとコラボレーションしたランウェイショーを実施しているディオール。これまで、ジュディ・シカゴやジョアナ・ヴァスコンセロス、イザベラ・デュクロをはじめとするアーティストの作品に光を当ててきた。そして、新たに発表された2024-25年秋冬クチュールコレクションのランウェイでは、2024年4月に93歳で亡くなった画家のフェイス・リングゴールドとのコラボレーションが実現した。
リングゴールドの作品は、アフリカ系アメリカ人女性を中心に描いており、彼女たちの生活や視点を情熱的かつ正確に表現している。1980〜1990年代にかけてリングゴールドは、ペインティングが施されたキルトを制作しており、欧米の歴史において軽視されてきた黒人の少女や女性の物語を伝えるために手芸の技法が用いられた。
6月24日に開催されたショーでは、汎アフリカの旗に使われている赤、緑、黒で「女性に自由を」と書かれたリングゴールドの作品《Woman Freedom Now》(1971)の複製で覆われた建物の中で行われた。この作品が作られた当時は、作品の画像がデモのポスターに用いられることもあったという。
また建物内では、会場内の巨大な壁などに「女性よ自由になれ」と青と緑で書かれた《Woman Free Yourself》(1971)の巨大な複製画が掲げられたり垂れ幕として用いられた。
リングゴールドの最初の抽象画作品である《Windows of the Wedding》(1974)も天井から吊り下げられ、会場を彩っていた。この作品に描かれている模様は、中央アフリカで誕生した織物のクバにインスピレーションを得たものだという。また、キウリがコラボレーターとして頻繁に起用するインドのチャナキア・スクール・オブ・クラフトの職人たちは、展示されたリングゴールドの作品に呼応するような新作を、今回のショーのために制作している。
このショーに関する声明を発表した際、ディオールはリングゴールドの作品には触れず、2024年パリオリンピックを切り口にしたコレクションについて言及していた。選手たちが着用するジャージに対してキウリは、金属メッシュを用いたドレスをデザインしたと記している。
金属メッシュを用いた背景には、「繊細さと強さを併せ持ち、男性と同じレベルで活躍できる女性の魅力とエレガンスを再考する」取り組みを続ける目的があったという。
詩人で作家のアミリ・バラカは、リングゴールドの《Woman Free Yourself》は「現代における傑作だ」と語っており、バラカの発言通り、彼女の作品はその地位に上り詰めたと言える。とはいえ、かつては女性解放の象徴として扱われていたリングゴールドの作品は、ディオールのショーにおいてフェミニズム的なメッセージを伝える以上の役割はないように思われた。(翻訳:編集部)
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