ARTnews JAPAN編集部が選んだ2024年Art Collaboration Kyotoのベストブース
今年で4回目となるArt Collaboration Kyoto(以下ACK)がスタートした。国⽴京都国際会館を会場に11月1日から11月3日まで開催されるACKは、 18の国・地域から総勢69ギャラリーが参加。10月31日に行われたプレビューは、国際色豊かな大勢の人たちで賑わった。
今年で4回⽬とな るArt Collaboration Kyoto(以下ACK)が国⽴京都国際会館を会場にスタートした(11月1日から11月3日まで)。今年のACKは⽼舗から新進のギャラリーまで、 18の国・地域から69ギャラリーが参加した。キュレーションテーマは「Resilience~わたしたちがつなぐものたち」。10月31日に行われたプレビューのセレモニーで、プログラムディレクターの山下有佳子はその意味について、「Resilienceは、繋がりを維持すると同時に、困難が起こった時に耐え抜いていくという意味を持つ。伝統的な文化が色濃く残る京都は、時代とともに順応しながらも、繋いでいく意識を持った人たちが集まっている。この場所で開催する国際展は、続けて繋いでいくことで、文化を前に進められるものでありたい」と説明した。
その思いの通り、国内のギャラリーがホスト、海外ギャラリーがゲストとなって「コラボレート」しブースをシェアするアートフェア「ギャラリーコラボレーション」では、様々なきっかけで繋がりを持ったギャラリストたちがユニークな展示空間を創出していた。その中から特に印象深かった展示を紹介しよう。
(各見出しはホストギャラリー/ゲストギャラリーの順に表記)
1. MUJIN-TO Production(東京)/Crèvecœur(パリ)、Nonaka-Hill(ロサンゼルス)
道路の排水溝にある金網にスーパーボールがはさまっており、無造作にベビーオイルが転がっている。実はこれらはガラスで出来ており、MUJIN-TO Productionが出品した臼井良平の作品だ。それに調和するようにNonaka-Hillによるロス在住の画家、Kyoko Idetsuの味わい深い油彩とCrèvecœurの作品群が並ぶ。作家のほとんどは、日本にルーツを持っている。
MUJIN-TO Productionは、今年で3回目のACKとなるCrèvecœurの誘いを受けて初参加した。今年春に東京と熱海で行われた、国内外のギャラリーが共同で展覧会を開くイベント「温泉大作戦」で組んだ事がきっかけだった。Crèvecœuは、今年10月に開催された新進のアートフェア、パリ・インターナショナルの立ち上げメンバーでもある。同ギャラリーのアリックス・ディオノ=モラ二は、「ギャラリー間はライバルではなく、一緒に何かを創り上げる関係でありたい。そういった意味でもACKは理想の場所です」と話す。同ギャラリーは、ACKの海外勢の中では最古参だ。その理由について、「京都まで足を運ぶコレクターは真剣にアートを考えています。素晴らしいコレクターと出会えるから毎年参加しているのです」と明かした。
2. Sho + 1(東京)/KASMIN (ニューヨーク)
近年、現代アートと工芸のボーダーラインは無くなりつつある。この展示は、まさにそれを感じさせた。若い2人のギャラリストが掲げたテーマは「現代素材問答」。香港のThe Shop houseが出品したのは、スティーブ・ハリソンの十字に並べられたマグカップ。これは漢数字の「一」と洋数字の「1」を表しており、横に並べられたものは和の釉薬、縦は洋の釉薬で焼かれており、和と洋の文化の融合が示されている。一方、Kanegaeはデヴィッド・ビエルアンダーが制作した立体作品を出品した。一見、段ボール製に見えるが、廃棄されたPCやスマホから採れる、いわゆる「都市鉱山」の銀やプラチナで作られている。ほかにも聞けば聞くほど作品、そして素材に関する興味深い話が尽きない。是非ギャラリストに聞いてみてほしい。
4. CON_ (東京)/WWNN (ソウル)
ロシアのアーティスト、ブースアポリナリア・ブロッシュの優美なブロンズ彫刻を、平松典己とチョ・スジンの水が描かれた幻想的な風景画が囲んでいる。「湖畔」という展示テーマで作品を揃えたというが、なにかひとつの舞台のような、完成度と統一感を感じさせた。もともと2ギャラリーの交流は、CON_側が「(自分たちが扱う作家と)似たテイストの作家を扱っている」とWWNNが気になり、韓国のギャラリーを訪れたのが始まり。今回のコラボでより仲が深まり、来年秋以降にお互いのギャラリーをスワッピングして展覧会を開くことを決めたという。
5. neugerriemschneider(ベルリン)
京都にゆかりのある、国内外のアーティストや作品を紹介するセクション「Kyoto Meetings」からも、印象深かった展示を紹介したい。広い正方形の空間に、同じ大きさの絵画が等間隔で27枚並んでいる。これはスウェーデンの画家、アンドレアス・エリクソンの作品。彼はこの春日本を旅し、故郷に戻り熟考し、京都に戻ってこの連作を描き上げた。一連で日本の四季が表現されている。入り口入ってすぐ右側から冬が始まり、色づく春、夏、秋を経てまた冬に戻る。11月3日まで京都の無隣菴でも作品を展示するので、そちらも合わせて見てほしい。
6. MtK Contemporary Art(京都)
なんと、アート作品がもらえてしまうブースもある。MtK Contemporary Artが出品した田村友一郎の新作《ATM》には、彼がこれまで発表してきた文章の作品を全て学習したAIが入っており、ATMの画面に3桁のアルファベットを打ち込むと、そのアルファベットがそれぞれ頭文字になった3行の彼の文章がレシートのように出てくる。AIで絶対に同じパターンが出ないようにプログラムしているので、全くのオリジナル作品を手に入れられる。