ブランクーシが祖国ルーマニアのために制作した彫刻群が世界遺産に登録
20世紀を代表する彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)が祖国ルーマニアのトゥルグ・ジウに設置した5つのモニュメントが、ユネスコの世界遺産に登録された。
今回世界遺産に登録されたのは、コンスタンティン・ブランクーシがルーマニアの都市トゥルグ・ジウに設置した5つのモニュメントだ。これらは第1次世界大戦中にトゥルグ・ジウを守って亡くなった兵士を称えるためのもので、ルーマニア出身のブランクーシが1935年に依頼を受けて制作した。だが、1950年にルーマニア政府が作品をスクラップにしようと計画し、それは実行されなかった。
ブランクーシの5作品は「コンスタンティン・ブランクーシの彫刻群」と呼ばれており、その中で最も有名なのは、全長30メートルの彫刻《Endless Column》(1937-38)だ。15個の合金の菱形がまるで塔のように連なっており、無限とルーマニア兵の限りない犠牲を表現している。またこの作品は、対象物の要素を抽出し、抽象化することで表現したモダニズム芸術の代表例とされている。
そのほか彫刻群には、実際に座ることができる《The Table of Silence》や、2人の人物が抱き合っている様子を表現した有名なブランクーシの彫刻を思わせる《The Gate of the Kiss》も含まれている。ブランクーシは、これらに対する制作報酬を受け取ることを拒否したという。
彫刻群の世界遺産登録は、7月26日にインドのデリーで開催された第46回世界遺産委員会で発表された。同会では、イタリア・ローマで最も古く、最も重要な道路であるアッピア街道や、パレスチナのガザ地区にある中東最古の修道院跡の世界遺産登録も決まり、今後、これらは法的な保護を受けることになる。
ユネスコは、ブランクーシの彫刻群について、「コンスタンティン・ブランクーシが考え出した抽象彫刻や、景観建築、エンジニアリング、都市計画の驚くべき融合は、戦争犠牲者の鎮魂というエピソードをはるかに超えて、人間の心理的性質についての独創的な視点を提供しています」と称賛した。
一方で、ルーマニアの文化大臣であるラルーカ・トゥルカンは、彫刻群が世界遺産に登録されたことについて、「私たちは記念碑的な作品群を保護し、後世のために、そして人類の文化的な記憶のために、それを無傷のまま保たなければなりません」とコメントした。
ブランクーシは近年、ヨーロッパのみならず世界中で大きな注目を集めている。2023年にはルーマニアの都市ティミショアラで、母国では半世紀ぶりとなる回顧展が開催された。そして2024年3月27日から7月1日までパリのポンピドゥー・センターで回顧展を開催、日本のアーティゾン美術館では3月30日から7月7日まで、美術館で日本初となる回顧展が開催された。(翻訳:編集部)
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