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ガザ地区最古の修道院跡をユネスコが世界遺産に緊急登録。「紛争で民間の文化財が狙われてはならない」

ユネスコは、イスラエル軍によるガザ地区の攻撃が続いていることを受けて、同地区にある中東最古の修道院、聖ヒラリオン修道院(別名テル・ウン・アメール)遺跡を急遽世界遺産に登録し危機遺産に指定した。

床にモザイクが残る、ガザ地区の聖ヒラリオン修道院跡。 Photo: Courtesy UNESCO

インドのニューデリーで7月26日に開催された第46回ユネスコ世界遺産委員会で、パレスチナガザ地区中部にある中東最古の修道院、聖ヒラリオン修道院(別名テル・ウン・アメール)跡が世界遺産に登録され、同時に危機遺産に指定された

聖ヒラリオン修道院は、4世紀にガザ地区出身の聖ヒラリオンによって創設され、パレスチナ修道会の本拠地となった。修道院はローマ時代後期からウマイヤ朝時代にかけて拡大し、5つに連なる教会のほか、洗礼堂、埋葬地、謁見ホールや食堂が備えられた。だが7世紀に起こった地震により破壊され放棄されたが、1999年に地元の考古学者によって再発見された。

同修道院跡は2012年に暫定遺産リストに登録されたが、ユネスコは2023年からのガザ侵攻という「差し迫った脅威」があることから、世界遺産登録と危機遺産指定を急いだ。聖ヒラリオン修道院遺跡は、パレスチナで世界遺産に登録された5つめのランドマークとなる。遺跡の保護と修復は、国際支援組織Première Urgence Internationaleが中心となり、スイスを拠点とする財団Aliphとブリティッシュ・カウンシルが加わるプロジェクトが行う。

ユネスコは声明で今回の決定について、「現在進行中の紛争が、特にガザ地区の文化遺産に与える影響について深い懸念を表明します」とコメントし、こう付け加えた。

「ユネスコは、全ての関係者が国際法を厳守するよう強く求めます、文化財は民間のインフラストラクチャーであるため、軍事目的のために狙われたり使用されたりすべきではありません」

2023年10月以来のイスラエル・ハマス間の紛争で、地元保健省によれば、ガザ地区では現在3万9000人以上がイスラエル軍の空爆により命を落としたが、同時に100以上の文化的建造物や史跡が破壊されている。(翻訳:編集部)

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