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今週末に見たいアートイベントTOP5: 淺井裕介と福⽥美蘭が岡本太郎に挑む、ごはんから環境保護を考える

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

川崎市市制100周年・開館25周年記念 「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」(川崎市岡本太郎美術館)より、福田美蘭《夜》2024年、作家蔵

1. 地球飯~Tasty, Healthy, Earth-friendly(日本科学未来館)

今日から実践!「ごはん」を通して考える環境保護

テーマを設けて未来にむけた研究開発や、その実現に取り組む人々の「いま」に触れ、体験するシリーズ企画「Mirai can NOW」の第8弾は、「食」について考える。

私たちが日々食べるごはんは、地球規模で考えると気候変動や生物多様性の損失といった環境問題だけでなく、飢餓や飽食など社会的格差も含む複雑な問題を引き起こしている。そこで本展では、複数の展示を通して環境負荷が低い食材を選び、食品ロスを減らす地球にも人にも優しいごはん「地球飯(ちきゅうめし)」を提案する。料理研究家のコウケンテツ、長谷川あかりによる「地球飯」レシピも展示されるので、グルメなあなたも必見だ。

地球飯~Tasty, Healthy, Earth-friendly
会期:9月11日(水)〜12月9日(月)
場所:日本科学未来館(東京都江東区青海2丁目3番6号)
時間: 10:00 〜 17:00(入場は30分前まで)
休館日:火曜


2. 川崎市市制100周年・開館25周年記念 「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」展(川崎市岡本太郎美術館)

淺井裕介《野生の星》2019年、愛知県美術館蔵

2人の作家が「岡本太郎」を通して生んだ新しい表現

1963年生まれの福⽥美蘭と81年生まれの淺井裕介。年代も表現も異なる2人のアーティストが「岡本太郎」の名のもとに集った。淺井は⼟、⽔、⼩⻨粉などの⾝近な素材を使い、あらゆる⽣物の根源を想起させるような神話的世界を描いている。また、展覧会が開催される土地で採取した⼟を絵の具にし、現地の⼈々と協⼒して⼤規模な作品を制作するなど、⼟地に根ざした作品を⼿掛けることでも知られている。一方の福⽥美蘭は芸術や⽂化、現代社会への批評的まなざしを可視化する作家。綿密なリサーチと福⽥ならではのウィットに富んだ視点に基づく作品は、鑑賞者へ物事に対する新たな視点をもたらす。

本展では、淺井は川崎市内で採取した⼟を絵具にして巨⼤な新作を展示する。福⽥は本人曰く「⽣真⾯⽬」な岡本太郎に挑んだ新作を発表するほか、岡本の作品によるインスタレーションを展開する。また、常設展⽰室では、2⼈の作家がそれぞれ独⾃の視点で選んだ当館収蔵の岡本作品約150点を作家のコメントとともに紹介する。

川崎市市制100周年・開館25周年記念 「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」展
会期:10月12日(土)〜2025年1月13日(日)
場所: 川崎市岡本太郎美術館(川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内)
時間: 9:30 〜 17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館)、12月29日~2025年1月3日


3. 残照 原田裕規(KEN NAKAHASHI)

展示風景:原田裕規「残照」KEN NAKAHASHI、2024年
撮影:齋藤裕也

原田裕規が注目する「風景」から眺める現代

独自の視点で見出した、社会のなかで広く認知されているとるにたらない視覚文化をモチーフに作品を制作するアーティスト、原田裕規。同ギャラリーでは2年半ぶり3度目となる個展となる本展では、原田にとって初の取り組みとなる平面作品のシリーズ「ドリームスケープ」が発表される。

同シリーズは、2020年頃より世界的に流行しているデジタル風景表現の潮流「ドリームスケープ」に着想を得たもの。非現実的な静寂感、安心感、無菌室感などに象徴されるドリームスケープの表現を、原田は「現代の世界情勢や地球環境を反映した風景画」であるとする。こうした視点に立って制作された原田のドリームスケープ・シリーズから、本展では2023年に映像バージョンが発表された、2023年8月に大火に襲われたハワイ・マウイ島のラハイナが描かれたデジタル・ランドスケープ作品《ホーム・ポート》と、本展のために制作された、原田がかつて暮らしていた山口県岩国市の山々が描かれたデジタル・ランドスケープ作品《残照》が発表される。世界の緊迫度が増す中、まるで世相を鏡写しにしたかのように反映する原田の作品を通じて、いまの世界と向き合ってみてほしい。

残照 原田裕規
会期:10月26日(土)〜11月21日(木)
場所:KEN NAKAHASHI(東京都新宿区新宿3丁目1-32 新宿ビル2号館5F)
時間: 13:00 〜 20:00
休館日:日月


4. 「ATAMI ART GRANT 2024」(静岡県熱海市内)

©️ATAMI ART GRANT 2024, Artwork by みょうじなまえ+林航, 《渚を編む》, Photo by kabo

計50組が競演!熱海の街がアート一色に

アーティストの制作活動支援を目的とし、2021年から実施する「ATAMI ART GRANT」。4年目となる今年は「超 -Beyond ATAMI-」をテーマに、アーティストを公募し20組を選出。同時に行う滞在制作型プロジェクトである「ATAMI ART RESIDENCE」の30組を合わせた計50組の作品が熱海市内に展示される。

みょうじなまえ、林航はアーティストユニットを組み、海湾の水深約25メートルに今も沈む昭和時代に運用されていたタンカー船「旭十六号」と、海岸を埋め立て造成された「渚町」の歴史を巡るインスタレーション作品を披露。やましたあつこは幼少期に感じた「安全地帯」をテーマに壁画を描いた。ほか出品作家は浅野ひかり、Anais-karenin、Ignasi Monreal、入沢拓、大塚珠生、(O)Kamemochi、倉知朋之介、小西隆仁、椎橋良太、志村翔太、田尻周也、戸田健太、早川翔人、早崎真奈美、春田美咲、べるりん、𠮷田桃子、risa taoka、lvdiankk、熱海分福、石﨑朝子、石山未来、井波吉太郎、井上修志、井上ひかり、Carlos Campos Morera、河野円、黒沢聖覇、小金丸信光、小林一毅、最後の手段、佐藤浩一、鮫島弓起雄、Sofía Londoño、Tyler Garces Ormsby、たかくらかずき、髙橋穣、田中勘太郎、Damjanski、DIEGO、永井ミキジ、長嶺慶治郎、NIINOMI、檜村さくら、副産物産店(矢津吉隆 + 山田毅)、藤田クレア、MISATO ANDO、Monica Hapsari。

「ATAMI ART GRANT 2024」
会期:11月2日(土)〜12月1日(日)
場所:ATAMI ART VILLAGE(熱海市熱海1877-1)ほか熱海第一ビル、熱海分福、熱海魚市場、大舘ビルなど静岡県熱海市内
時間: 10:00 〜 16:00(入場は1時間前まで)
休館日:屋内会場は月~木(店舗の場合は異なる)


5. 細井美裕「 ステイン 」(Gallery 38)

STAIN, 2024
Photography: So Mitsuya

多様な音が共存し、影響を与え合う空間

サウンドアーティスト細井美裕は、音が空間や時間の知覚を変容させる可能性を探求してきた。初個展となる本展では、環境音を用いたインスタレーション、映像、キネティック・スカルプチャーなど、約15のサウンドピースから構成される。各ピースは互いの音の中で共存し、展示全体も街の喧騒から切り離すことはできない。展示空間には周囲の雑音や街の音が「侵入」し、作品に影響を与えていく。作品の素材には、壊滅的な状況から日常的な出来事まで幅広いフィールドレコーディングが使われており、福島の原発周辺を歩く音、街での台風の音、友人との会話、子供たちの遊び声、日常の通勤といった多様な音源が含まれている。この状況を、細井は音が得意とする表現かつ情報処理の一形態であると考えており、「ノイズキャンセリング」が進む社会の中で、私たちが音に対する偏見を自覚する必要があると主張する。

また、近年手掛けるオブジェも展示する。これらのアッサンブラージュは、道具やベルなどで構成され、自身が現代の作家としての役割について感じる緊張感と不安定さを表現している。音の不在はエネルギーの不在を意味せず、むしろこれらの彫刻に宿った静寂が、より強い共鳴を放つことができると細井は語る。

細井 美裕「 ステイン 」
会期:11月7日(木)〜12月22日(日)
場所:Gallery 38(東京都渋谷区神宮前2-30-28)
時間: 12:00 〜 19:00
休館日:月火祝

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