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中国・明代の貴重な酒杯「チキンカップ」も! 大英博物館に史上最高額の美術品寄贈

大英博物館が、世界最大級の中国陶磁器コレクションを寄贈された。その価値は10億ポンド(約1980億円)にのぼり、イギリス国内の美術館への美術品寄贈としては史上最高額と見られている。

中国・明代、成化帝時代(1465-1487)のチキンカップ「闘彩鶏缸杯」。Photo: ©The Trustees of the British Museum

大英博物館が、パーシヴァル・デイヴィッド財団から10億ポンド(直近の為替レートで約1980億円、以下同)にのぼる史上最高額の美術品寄贈を受けた。寄贈されたのは世界最大級の中国陶磁器コレクションで、「チキンカップ」と呼ばれる鶏が描かれた中国・明代の貴重な酒杯も含まれている。

総数約1700点のコレクションは、2009年から大英博物館への長期貸与品として専用展示室で公開されていたもの。こうした高額な美術品寄贈はイギリスでも珍しく、大英博物館で話題になった最も新しい例は、亡くなった同館理事からの1億2300万ポンド(約244億万円)相当の遺贈だった。

大英博物館のニコラス・カリナン館長は、デイヴィッドが所有していた陶磁器を「比類なきプライベート・コレクション」と呼び、その喜びをこう語った。

「この素晴らしい陶磁器によって、私たちの所蔵品に特別な一面が加わります。世界中の学者、研究者、そして来館者のみなさんにとって、現存する中国美術工芸の最高峰を研究し、楽しむことのできる非常に貴重な機会となるでしょう」

パーシヴァル・デイヴィッド卿は、1892年にボンベイ(現在のムンバイ)で、イランにルーツのある裕福なユダヤ系の一家に生まれた。父から準男爵の称号と、一族が経営する織物業、銀行業の所有権を受け継いだ彼は、1914年に22歳でロンドンに移住。初めて3点の中国陶磁器を購入した後、中国美術と書籍の熱心なコレクターとなり、半生をかけて類まれなコレクションを築き上げた。

デイヴィッドは、ヨーロッパのみならず日本、香港、中国にも旅して収集を行い、1924年に北京で初めて中国皇帝の宝物を鑑賞した。そのほとんどが箱に入ったままなのを目にした彼は、貴重な美術品や工芸品を展示するために建物の修復費用を寄付。1928年から29年にかけては、北京故宮博物院の正式顧問を務めている。パーシヴァル・デイヴィッド財団の管財人によると、1964年に亡くなる前、彼は自分のコレクションを幅広い人々に見てもらいたいと語っていたという。

大英博物館のジョージ・オズボーン会長は今回の寄贈について、過去に例のない「重要な文化的再生計画」を開始する同博物館の将来に向けた「真の信任投票」だと声明で述べている。

大英博物館は2023年、所蔵品1500点が紛失・盗難によって所在不明になっていることが判明し、一大スキャンダルとなった。今年3月には、30年間にわたり収蔵庫から美術品を盗んだとして元キュレーターを訴えるなど、同館はずさんな管理をめぐる問題からの再建途上にある。なお、失われた所蔵品の一部は回収されている。(翻訳:石井佳子)

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