ARTnewsJAPAN

「見つけた人は通報を!」──あらたに268点の盗難・紛失品を回収した大英博物館が協力を要請

5月17日、大英博物館は紛失・盗難で所在不明になっていた1500点を超える収蔵品のうち、あらたに268点のありかを突き止めたとする声明を発表した。2月には350点あまりの回収が明らかにされていた。

ロンドンにある大英博物館の巨大なホール。Photo: David Liff/License: CC BY-SA 3.0/Wikimedia

大英博物館は昨年8月、大量の収蔵品が紛失または盗難に遭った事実と職員の解雇を発表。のちにこの職員は、シニアキュレーターのピーター・ヒッグスであることが分かった。窃盗は30年以上にわたって行われ、貴重な品々の多くがeコマースサイトのeBayで数千円から数万円という少額で売られていたとされる。

事件の深刻さに、当時のハートヴィヒ・フィッシャー館長は即座に辞任(それまでは2024年の早い時期に退任すると発表されていた)。ジョナサン・ウィリアムズ副館長も、第三者機関の調査結果を受けて昨年12月に職を辞した。この第三者機関からは、大英博物館のセキュリティやガバナンス、記録管理業務について36もの勧告が出された。US版ARTnewsでは、事件の経緯を12月20付の記事で詳しく伝えている。

再発防止のため、同博物館のジョージ・オズボーン理事長は1000万ポンド(直近の為替レートで20億円弱)を投じた5カ年のデジタル化プロジェクトを遂行し、収蔵品の記録管理体制を強化しなければならない。また、ナイジェリアギリシャの政府関係者から、ベニン・ブロンズといわれる青銅器の工芸品やパルテノン神殿の大理石彫刻など略奪文化財の返還を求める声も再燃している。

こうした厳しい状況の中、ジョージ・オズボーン理事長は声明で次のように述べた。

「ここまで来れるとは誰も思っていませんでしたし、私でさえ半信半疑でした。大英博物館から収蔵品が盗まれたという衝撃的なニュースを発表したとき、失われた品々は戻らない、見つかったとしてもほんの一握りだろうと誰もが思ったことでしょう。過去の盗難事件ではそうでしたから、そう考えるのも無理はありません。

しかし、大英博物館のチームはあきらめませんでした。緻密な捜査と支援者のネットワークのおかげで、これまで600点以上が手元に戻り、さらに100点の所在が確認されています。これは博物館から消えた1500点のほぼ半分に相当する素晴らしい成果です。とはいえ、ここで手を休めるわけにはいきません。これまでも数々の方にご協力いただいていますが、今後さらに所在不明の品を特定するため、情報をお持ちの方からの通報をお待ちしています」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい