ヤール&パメラ・モーン(Jarl and Pamela Mohn)
拠点:アメリカ・ロサンゼルス、ニューヨーク
職業:ベンチャーキャピタル
収集分野:ロサンゼルスの新進アーティスト、ライト・アンド・スペースおよびミニマリズムの作品
60年代後半にディスクジョッキーとしてラジオの世界に入ったヤール・モーンは、リー・マスターズという名で20年ほどキャリアを積んだ。その後、MTVとVH1の幹部となり、E!エンタテインメント・テレビジョンの設立、南カリフォルニア公共ラジオの会長を経て、2014年から2019年まではCEOとしてNPR(米国公共ラジオ放送)を率いた。ベンチャーキャピタルとしては、スタブハブ、オキシジェン・メディア、ライアット・ゲームズ、フレッシュ・ペットなどに投資している。
モーンは、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)、ハマー美術館、ロサンゼルス現代美術館、LAXART、ICA LAや、ゲティ財団のパシフィック・スタンダード・タイム・イニシアティブを支援するなど、ロサンゼルスのアートシーンにおける重鎮的な存在だ。LACMAでは、モーンファミリー財団が、マイケル・ハイザーの巨大な彫刻《Levitated Mass》(2012)の購入を支援している。
モーンのコレクションの始まりは、ミニマリズムやライト&スペースの作品だった。後者は西海岸、特にロサンゼルスを含む南カリフォルニアを中心とした芸術運動だ。この2つのムーブメントに関しては、ドナルド・ジャッド、ダン・フレイヴィン、ソル・ルウィット、ジェームズ・タレル、ロバート・アーウィン、メアリー・コース、ドウェイン・バレンタイン、ヘレン・パシュジャン、ダグ・ウィーラーなどの作品を収集している。また、モーン夫妻は10年ほど前からロサンゼルスの新進アーティストにも目を向け、カンディス・ウィリアムズ、ローレン・ホールジー、リズ・グリン、マス・バス、トッド・グレイ、サマラ・ゴールデンなどをコレクションに加えた。
さらに、ハマー美術館の「メイド・イン・L.A」ビエンナーレを支援し、参加アーティストに賞を授与するための資金を提供している。この賞の過去の受賞者には、カンディス・ウィリアムズ(2021年)、ローレン・ホールジー(2018年)、アダム・リンダー(2016年)、アリス・ケーニッツ(2014年)、そして初回受賞者のメレコ・モクゴシ(2012年)らがいる。2021年にはハマー美術館に対する510万ドル(約7億円)の追加寄付を発表し、新進アーティストや認知度の低いアーティストの作品取得を継続的に支援するための基金を創設した。
ヤールはUS版ARTnewsのメールにこう答えた。「私たちにとって、ロサンゼルスのアートコミュニティの一員であるのはとても大切なことです。新進アーティストがキャリアを確立するのを支援し、何十年も活動しながら商業的成功を収められなかった、過小評価されている才能あるアーティストを支援することを第一に考えています」
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。