トランプ大統領が政府庁舎の建築様式に関する大統領令に署名。「公共建築は古典的伝統に沿うべき」
パリ協定からの離脱、性別は男性と女性しか認めない、世界保健機関からの脱退など、就任1日目から過激な大統領令に次々と署名しているドナルド・トランプ。こうしたなか、アメリカ国内に新設される公共建築物および政府庁舎はすべて、古典主義建築が望ましいとする大統領令に署名した。
1月20日に大統領に返り咲いたドナルド・トランプは、連邦政府が新設する建物は「人々の称賛を集める」古典主義建築が望ましいとする、第一次政権時代に署名した大統領令を再び発令させた。
「美しい連邦公共建築(Beautiful Federal Civic Architecture)」と題されたこの大統領令は、「地域の遺産を尊重し、アメリカの古典的伝統に沿った」建築デザインを強調することで、「公共の空間を美しくすること」を目的としている。「古典的」という言葉は、新古典主義、ジョージアン様式、ギリシャ復興様式、ゴシック建築、およびモダニズム建築時代以前の建築様式を指しているという。
しかし、2020年にこの大統領令が発表された際に建築家の多くは、この動きを時代後れと批判し、トランプ政権が公共建築に画一的な建築スタイルを押し付け、国家主義的な理想を強引に推し進めようとしていると訴えた。
第一次政権時代に署名された大統領令をめぐっては、米建築家協会(AIA)が全面的に反対することを表明しており、同団体の元会長であるロバート・アイヴィーは、柔軟性に欠ける好みを押し付け、創造性を抑圧するものだと非難している。また、第一次政権時代に署名された大統領令で言及されたブルータリズムと、脱構築主義を想起させる建築物を新たに建設することを禁じようとしていると批判する声もあった。
アメリカとメキシコの国境に焦点を当てた他の大統領令とともに署名されたこの行政命令は、連邦政府機関の長および連邦政府所有の建物や不動産を管理する連邦政府機関である一般調達局に対し、連邦政府所有の建築物を伝統的および「古典的」な原則に沿ったものとするための提言を60日以内に行うよう指示している。
1962年に策定された連邦政府建築に関する方針では、公共構造物の建設や改修を行う際には、地域社会の意見を考慮した設計決定における共同統治に重点が置かれていたが、トランプが発令した大統領によってこの指針は覆されてしまった。
トランプが2020年に発令した大統領令は、2021年2月にジョー・バイデンが就任した際に早々に廃止されており、当時AIAの会長を務めていたピーター・エクスリーはこう語っていた。
「この大統領令が覆されたことで、公共の利益に最も適う連邦政府の建物を設計する上で必要とされる、設計選択の自由をバイデン政権は建築家コミュニティに復活させました。これは建築家の作業環境を整える上で、そして最高の建築物を建てるためには欠かせない要素なのです」(翻訳:編集部)
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