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スミソニアン協会傘下の21施設も多様性プロジェクトの廃止を発表。アクセシビリティの確保は継続

ドナルド・トランプが多様性に対する取り組みを廃止する大統領令に1月20日に署名して以来、スミソニアン博物館の多様性プログラムの存続の可能性が注目されていたが、DEIにまつわる部署を廃止することが発表された。一方で協会が運営する文化施設におけるアクセシビリティの確保は継続して行われるといい、同協会の長官は職員に対して「公平性の確保という協会の理念が変わることはない」と通達している。

トランプが署名した「DEI廃止」大統領令に従うことを表明したスミソニアン協会。Photo: Jakub Porzycki/NurPhoto via Getty Images
トランプが署名した「DEI廃止」大統領令に従うことを表明したスミソニアン協会。Photo: Jakub Porzycki/NurPhoto via Getty Images

ワシントンD.C.にあるナショナル・ギャラリー・オブ・アートが「ダイバーシティ、公平性、包括性(Diversity、Equity、Inclusion = DEI)」に関するプログラムの中止を表明してから数日後、21の国立博物館と美術館を運営するスミソニアン協会も、DEIにまつわる部署を閉鎖することを発表した。また、スミソニアン協会はすべての連邦政府職の採用を凍結し、職員の在宅勤務は認められなくなるとニューヨーク・タイムズ紙は報じている

この決定は、バイデン前政権が推進したDEIを重視する取り組みを「違法かつ不道徳な差別プログラム」と位置づける、ドナルド・トランプが署名した大統領令に則ったもの。ハーシュホーン博物館と彫刻の庭、スミソニアン・ナショナル・ポートレート・ギャラリー、スミソニアン・アメリカ美術館をなど、連邦政府から多額の資金提供を受けているスミソニアン協会は、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートといった他の連邦支援を受ける文化施設と同様に、トランプが大統領に就任した直後に署名された行政命令に沿った対応を進めている。連邦政府職の採用凍結とリモートワークの停止は、1月20日にトランプが署名した別の大統領令や覚え書きによって打ち出された方針だ。

スミソニアン協会内のDEIプログラムが終了する一方で、同協会が不可欠とみなす来館者のアクセシビリティを確保する取り組みは維持されるという。スミソニアン協会の長官を務めるロニー・バンチは職員に向けた内部メールで、DEI部門の閉鎖は連邦政府による指示に応じるための「第一歩」にすぎないと強調。同時に、「公平性と公正性の確保という当協会の理念が変わることはありません」と記している。スミソニアンは民間職員と連邦職員の両方を抱える特殊な組織であり、対応は複雑化したものの、行政命令に迅速に従う姿勢を示している。

採用が凍結される以前、スミソニアン協会では国立航空宇宙博物館や国立動物園をといった様々な文化施設で約40ポジションの求人が出されていた。また、パンデミック以降、連邦職員の多くは一定日数リモート勤務できる制度を利用していた。(翻訳:編集部)

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