金色のトランプ大統領がビットコインを差し出す彫像が出現。暗号資産支援策の一方で利益相反批判も

トランプ大統領の全身金色の彫像がワシントンD.C.に出現した。米連邦準備制度理事会(FRB)が9カ月ぶりの利下げを発表した日に突如登場した像は、ビットコインを連邦議会議事堂に向けて差し出している。

トランプ大統領は自身のイメージをモチーフにした暗号資産(ミームコイン)「TRUMP」を1月にローンチした。Photo Jonathan Raa/NurPhoto via Getty Images

9月17日、アメリカの首都ワシントンD.C.の連邦議会議事堂前に、ドナルド・トランプ大統領がビットコインを掲げる金色の彫像が現れた。高さ約3.7メートルのトランプ像は議事堂を向いて立ち、背後にはワシントン記念塔が見える。FRBが利下げ決定を明らかにしたこの日、彫像は朝9時から午後4時までこの場所に置かれていたという。

米ABCテレビ系列のローカルメディアによると、設置したのは暗号資産の投資家グループで、代表者のヒチェム・ザグドゥディ(Hichem Zaghdoudi)は同メディアの取材にこう答えている。

「この像の設置は、暗号資産や通貨政策の未来に関する議論の喚起を目的としています。現代の政治と金融イノベーションが交わる場所を象徴するものです」

ザグドゥディはさらに、トランプ像が「FRBの金融政策決定の日に、暗号通貨の影響力が拡大していることへの考察を促す」ことを願っていると語った。しかし、美術評論的な観点からは、この像の不思議な造形に目が行ってしまう。

彫刻の顔にはほとんど皺がなく、スーツには気味が悪いほどの張りがある。髪型は奇妙な形に突き出ており、腕は不自然なほど短い。制作者がジェフ・クーンズ流のアメリカ的キッチュさを皮肉ろうとしているのなら、これらは意味のある特徴と言えるだろう。

しかし、もしトランプへの評価を強調しようとしているのなら──それを意図しているのだとは思うが──説得力に欠けると言わざるを得ない。とはいえ、この作品はエアブラシを吹き付けたように、彼の欠点をすべて消し去ったものになっている。おそらくそれが狙いなのだろう。

そもそも、トランプ大統領の暗号通貨支援策そのものに欠陥があるとする批判は根強い。8月には大統領一族が運営するワールド・リバティ・フィナンシャル(WLFI)が、15億ドル(約2220億円)の資金調達を進め、WLFIトークンを保有する公開会社を設立する計画だと報じられた。

9月初めのWLFIトークン発売は今ひとつという結果に終わったが、それでもWLFIによってトランプ大統領がどれほどの利益を得るのか、利益相反を問題視する声は以前から上がっている。トランプ一族は暗号資産の推進に熱心で、大統領の次男であるエリック・トランプは最近、暗号資産が「米ドルを救う」と発言した。しかし、それと正反対の主張をする専門家もいる。

ちなみに、今年1月のトランプ大統領の就任以来、ワシントンD.C.に金色の彫刻が出現するのはこれが初めてではない。しかし、以前の作品は今回ほど大統領をリスペクトしているようには見えなかった。1つは親指を立てた金色の手が自由の女神の頭を叩き潰している像で、もう1つは金色のテレビにアメリカの国章である鷲の装飾が施されているもの。このテレビには、「トランプ・ダンス」を踊る大統領が15秒の無音ループで映し出されていた。(翻訳:石井佳子)

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