AIアート・オークションが1億円の快挙! 「アートにおけるAIの影響力が可視化された」
4000人近くのアーティストが中止を求めたクリスティーズのAIアート・オークション「Augumented Intelligence(拡張知能)」が終了した。オークションの入札者の約半数がミレニアム世代やZ世代で、総売上も予想を上回ったことから、クリスティーズのバイスプレジデントはAIの影響力が証明されたオークションだと語った。

世界三大オークションハウスの一つ、クリスティーズが開催したAIアートのみが出品された史上初のオークション、「Augmented Intelligence(拡張知能)」が3月5日に終了した。同社の発表によれば、落札額は予想されていた60万ドル(約9000万円)を上回る72万8784ドル(約1億1000万円)を記録し、コレクターたちの間で新たな波が巻き起こったという。
最も高値で落札された作品は、レフィク・アナドルの《Machine Hallucinations - ISS Dreams - A》で、20万ドル(約3000万円)の予想落札価格を大きく上回る27万7200ドル(約4133万円)で買い手が付いた。クリスティーズによれば、入札者のほぼ半数にあたる48%がミレニアル世代またはZ世代であり、オークション参加者の37%を占めたという。
アナドル作品以外にも、作曲家のホリー・ハーンドンとマット・ドライハーストが手がけた《Embedding Study 1 & 2 (from the xhairymutantx series)》は7〜9万ドル(約1043〜1340万円)の予想落札価格に対し、9万4500ドル(約1410万円)で高額落札された。34のロットで構成された今回のオークションの落札率は82%だった。
このオークションの開催前には、4000人近くのアーティストが中止を求める公開書簡に署名していた。その書簡は、AIは同意なしに人間の創造性を搾取するモデルであり、AIによって生成されたアート作品は、補償なしに著作権のある素材を使用して訓練されたデータセットに依存していると指摘し、次のように締めくくられていた。
「AIモデルやそれをアーティストが使用することをよしとすることは、AI企業による人間のアーティストの作品の大量盗用を助長し、さらなるインセンティブを与えることになります。人間のアーティストを尊重する気持ちがあるのなら、オークションの中止をを求めます」
これに対してクリスティーズは、出品アーティストの正当性を擁護。AIは拡張ツールであり、人間のアーティストに取って代わるものではないと主張した上で、次のように答えている。
「このセールに参加するアーティストたちは、主要な美術館のコレクションに収蔵されているような、学際的なアートの実践と実績を持っています。オークションの出品作品は、自身の作品をさらに発展させるためにAIを使用しているのです」
また、クリスティーズのバイスプレジデント兼デジタルアート販売部門のディレクターを務めるニコール・セールズ・ジャイルズは次のような声明を発表している。
「このオークションでは、テクノロジーとアートの境界を押し広げる素晴らしいクリエイティブな才能にスポットライトを当てることを目標としていました。また、コレクターをはじめとする幅広いコミュニティが、こうしたアーティストが現在の芸術界にどういった影響力を与えていて、どれほど重要なのかを認識してくれることを期待していました。今回のオークション結果は、まさにそれを証明してくれたと言えるでしょう」
ビープルをはじめとする一部のデジタルアーティストはこのオークションを支持したが、一方では、人間による芸術性と機械主導のイノベーションの間の継続的な闘争を象徴するものとして非難する声もあった。賛否両論はあるにせよ、AIアートが市場で確固たる地位を築きつつあることは、今回の結果で示されたと考えていいだろう。(翻訳:編集部)
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