ジェフ・クーンズはAIでの作品制作に興味なし。「後部座席に座るだけの怠け者にはなりたくない」
近年、テクノロジー志向のアーティストだけでなく、村上隆やデイヴィッド・サーレら世界的に著名な画家たちも制作に人工知能(AI)を導入している。これにジェフ・クーンズが自らの考えを示した。
ジェフ・クーンズは、グラナダのアルハンブラ宮殿で3月16日まで開催されているパブロ・ピカソとの展覧会「Reflections」のオープニングにちなんだガーディアン紙の取材に対して、「当面はAIを作品制作に導入することに抵抗がある」と話した。
AIの使用についてクーンズは、「今のところ、選択肢を提示してもらう以外に、直接的にAIを用いた作品制作はしていません。AIはあくまでツールであり、エージェントではありません」と語り、「例えば、あるテーブルを木で作った場合どう見えるか、大理石で再現したらどうなるか、あるいは(クーンズが作品によく使う)鏡面仕上げのステンレススチールだとどうか、というようなシナリオでしかAIは使っていません」と述べている。
そして、こうした最新テクノロジーに対する自身の姿勢について、あるノーベル賞生物学者と化学連鎖反応について議論したことを絡めながら、こう説明した。
「ノーベル賞受賞者と生命について話していたとき、その人が『生命とは、化学反応の連鎖をアニメーションにしたものにすぎない』と言ったんです。私はその考えがとても美しいと感じ、突然、自分が経験していることは幻想にすぎないのだということを本当に理解したような気がしました。私はこの生物学的なプロセス、そして視覚や触覚といった感覚をとても信じています。(AIを作品制作に導入することは)自ら運転せずに車の後部座席に座るだけのようなもの。私はそんな怠け者にはなりたくありませんから」
風船細工の犬をステンレスで再現した巨大な《バルーン・ドッグ》などのクーンズの作品は、全てが機械のコントロールのもとに生産されているかのように見えるが、実は多くの人々の労力と時間が費やされた結果であることは知られていない。
だが、これまでクーンズは必ずしもデジタル技術を使用した作品制作に反対の立場を取ってきたわけではない。2019年には、アート・ニュースペーパーのインタビューで、自身の作品は「3D、コンピュータデータ、そのデータのエンジニアリングやリバースエンジニアリングを基盤とするものへと進化した」と語っている。
現在開催中の展覧会「Reflections」では、前述の生物学の知識がベースになっているとクーンズは話す。
「この展示会では、3つの要素があります。ピカソ、私、そして美術館のコレクションです。展示室でそれらの異なる要素が組み合わさると、3つを合わせた以上のものが生まれます。それが、生物学が私たちに与える創造力であり、能力なのです。今この瞬間まで、AIはそれを実現できていません」(翻訳:編集部)
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