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パン工場で奴隷を強制労働? ポンペイ遺跡が伝える「古代の奴隷制度の最も衝撃的な側面」

イタリアポンペイ遺跡で、奴隷とロバを監禁してパンの材料となる小麦を挽かせた「牢獄のパン工場」跡を発見したと、12月8日、ポンペイ考古学公園が発表した。

イタリア、ポンペイ遺跡公園で発見された「牢獄のパン工場」跡。Photo: Courtesy Pompeii Archeologic

ポンペイ考古学公園の声明によると、発掘調査の結果、保存状態の良いフレスコ画がある居住区と、パン工場が発見された。工場部分にあった小部屋には、壁の上部に鉄格子が取り付けられた小さな窓があり、床には、目隠しをされたロバが長時間歩かされた跡が残っていたという。

ポンペイ考古学公園のディレクター、ガブリエル・ズクトリーゲルは声明の中で、今回発見された小部屋は「隷属的な身分の人々の存在を想像せざるを得ない空間」だとし、次のように話す。

「数少ない窓に鉄格子が取り付けられていたことから、奴隷と主人に信頼関係も解放の約束もないものだと分かります。古代の奴隷制度の最も衝撃的な側面です」

ポンペイで奴隷のための部屋が発見されたのは今回が初めてではない。例えば、2023年8月には、奴隷にされた人々が使っていた小さな寝室と、中流階級の住居が発見されたと発表された。これらの発見により、古代ローマ帝国時代の奴隷の暮らしに新たなスポットが当てられた。

ヴェスヴィオ山は紀元79年に噴火し、周辺の古代ローマ帝国の都市とその住人は一夜にして火山灰に埋められた。そのため、住民とその住居の一部がそのままの状態で残されており、今もなお新たな発見が続いている。

ポンペイ考古学公園は、欧州連合(EU)からの資金援助を受け、近年様々な取り組みを行っている。「牢獄のパン工場」跡の発見は、古代都市ポンペイの未発掘地域に斜面を造成するための大規模プロジェクトの一環として発掘が行われていた中での出来事だった。(翻訳:編集部)

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