大スキャンダルの大英博物館が盗難事件から回収した宝飾品を展示へ。「オープンな組織に変わる」
大英博物館では現在、所蔵品の大規模な盗難・紛失・破損事件の調査が行われている。そんな中、回収された351点のうち10点が、間もなく始まる展覧会で展示されることになった。
大英博物館は昨年夏、30年間に2000点もの所蔵品が盗難に遭い、紛失・破損していたことを認めた。その大部分は、古代ギリシャ・古代ローマの金や貴石、ガラスなどの宝飾品で、しばらく公開されていないものだった。
この事件では、シニアキュレーターのピーター・ヒッグスが、盗まれた品に関与したことを理由に解雇された。ヒッグスは約25年にわたって窃盗を行っていたと見られ、盗品の一部をECサイトのeBayに出品。中には、数百万円相当の宝飾品にたった51ドル(直近の為替レートで約7500円、以下同)の値が付けられていたケースもあった。また、ヒッグスの解雇を受け、ハートヴィヒ・フィッシャー館長とジョナサン・ウィリアムズ副館長が辞任している。
盗難・紛失事件へのずさんな対処をイギリスのメディアから激しく非難された同博物館は、体制の立て直しに取り組んでいる。特に、再発防止のために収蔵品の記録・管理強化が求められる中、ジョージ・オズボーン理事長は1000万ポンド(約18億7000万円)をかけたデジタル化プロジェクトへの着手を公約した。
大英博物館はまた、事件によって「こうした品への関心が改めて呼び起こされた」とし、歴史を通じて人々を魅了してきた古代の宝飾品の重要性を探る展示を計画。金や貴石、ガラスは、身につける宝飾品のほか印章に使われることもあり、王族や貴族、芸術家の収集の対象でもあった。
2月15日から6月2日まで開かれる企画展、「Rediscovering gems」の展示品の中には、紀元前1世紀後半から紀元後1世紀初頭のローマ時代のガラス工芸品2点が含まれる。1つは沈み彫り技法で知恵・工芸などを司る女神ミネルヴァの横顔を描いたもの、もう1つはキューピッドのカメオだ。
オズボーン理事長は声明で次のように述べている。
「我われは、回収された盗品を隠さず、世界に向けて公開することを約束しました。これは大英博物館で進んでいる組織文化変革の一例です。もっとオープンになり、自らの所蔵品や歴史に対する当事者意識を持つよう変わりつつあります」(翻訳:石井佳子)
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