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マーク・ブラッドフォードとリチャード・プリンスは4億円超え! フリーズ・ロサンゼルスのVIPデー、何がいくらで売れた?

2月16日〜19日に開催されたフリーズ・ロサンゼルス。初日のVIPプレビューでは、4億円を超える作品に買い手がつくなど、売れ行きは好調だったようだ。高額作品の販売実績を紹介する。

フリーズ・ロサンゼルスの会場風景。ジェシカ・シルバーマンのブース。Photo: Mark Blower

2月16日から19日にかけて開催されたフリーズ・ロサンゼルスでは、初日から期待以上の売り上げになったという声があちこちのギャラリーで聞かれた。中でもアメリカやヨーロッパの美術館と成約に至る作品が多かったという。

リーマン・モーピン共同経営者のジェシカ・クレップスは、US版ARTnewsのメール取材にこう答えた。

「会場の内外で人々の熱気が感じられましたし、キュレーターやコレクターとも今年はより突っ込んだ話ができました。どちらかというと、キャリアが長く、評価が確立されたアーティストの作品を探している人が多かったようです」

リック・ロウのドローイングと絵画9点を出品したガゴシアンからは、VIPプレビューの開場から数時間で作品が完売したとの報告があった。ガゴシアン・ニューヨークのディレクター、アントワン・サージェントは、今回の結果はリック・ロウへの熱狂的な支持が「高まる一方」であることの証だと語った。

注目アーティストの作品を早い時間に売り切ったのは、ガゴシアンのようなメガギャラリーだけではない。ドロン・ラングバーグのソロブースを出展したロンドンのビクトリア・ミロでは、1点8万ドル以下の絵画作品が18点売れた。

以下、フリーズ・ロサンゼルスの出展ギャラリーから、初日に作品が売れたと報告されたアーティストのうち8人を紹介する。

* 各見出しは、アーティスト名(ギャラリー名)/金額の順に表記

1. マーク・ブラッドフォード(ハウザー&ワース)/約4億7000万円

Photo: Courtesy Hauser & Wirth

フリーズ・ロサンゼルスの初日に最も高額で売れた作品は、ハウザー&ワースが出品したマーク・ブラッドフォードの抽象画《Shall Rest in Honor There》(2023)で、価格は350万ドル(約4億7000万円)。同ブースで100万ドルを超えるものはこの作品だけだったが、ヘンリー・テイラー、ルチタ・ウルタード、チャールズ・ゲインズといった所属アーティストの作品も、4万5000ドル〜45万ドル(約600万円〜6000万円)で売れている。

2. リチャード・プリンス(グラッドストーン・ギャラリー)/約4億円

Photo: Courtesy Gladstone Gallery

グラッドストーン・ギャラリーの担当者によると、初日の開場から数時間で多数の作品が売れたという。中でも特に高額だったのがリチャード・プリンスの写真作品《Untitled (cowboy)》(1998)で、販売価格は300万ドル(約4億円)。同ブースでは、キース・ヘリングによるブロンズ製の壁掛け型作品も50万ドル(約6700万円)で売れている。さらに、ローズマリー・トロッケル、アーサー・ジャファ、フィリップ・パレノ、エイミー・シルマン、ジル・マルレディ、ダヴィッド・ラペノー、シャフリヤール・ナシャトの作品も、2万ドル〜47万5000ドル(約270万円〜6400万円)で販売された。

3. ハンク・ウィリス・トーマス(ペース・ギャラリー)/不明

Photo: Courtesy Pace

ペース・ギャラリーのブースでは、エイドリアン・ゲニー、奈良美智、マシュー・デイ・ジャクソンなどの作品が4万5000ドル〜200万ドル(約600万円~2億7000万円)の価格帯で販売された。また、トーマス・ノズコフスキーと、ロサンゼルスを拠点とするメイシャ・モハメディの絵画作品にも買い手がついた。さらに、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)とその妻コレッタ・スコット・キングを記念するモニュメントとして制作された、ハンク・ウィリス・トーマスの彫刻《The Embrace》の小型バージョンも売れている。このモニュメントは1月にボストンで公開され、物議を醸したものだ。

4. ダナ・シュッツ(デビッド・ツヴィルナー)/約1億6000万円

Photo: Courtesy David Zwirner

デビッド・ツヴィルナーは、初日にリサ・ユスカヴァーゲ、ミヒャエル・ボレマンス、ダナ・シュッツ、オスカー・ムリーリョ、レイモンド・ペティボンなどの作品を販売。中でも高額だったのが、120万ドル(約1億6000万円)でヨーロッパの美術館に販売されたシュッツの油彩画《The Encounter》(2022)だ。物議を醸す作品で知られるシュッツだが、今回販売されたのは、ダークブラウンの背景に武器を振りかざして対峙しているような2人の人物が描かれた、274 × 356 cmの大型絵画。同ブースではほかにも、リサ・ユスカヴァーゲが女性を描いた絵画《Sari》(2015)が、やはりヨーロッパの美術館に100万ドル(約1億3400万円)で売れた。ミヒャエル・ボレマンスやオスカー・ムリーリョの作品も美術館に購入されている。

5. シャンタル・ジョフィ(リーマン・モーピン)/約3200万円(複数作品の合計)

Photo: Courtesy Lehmann Maupin

ニューヨークのリーマン・モーピンは、ロンドン在住のアーティスト、シャンタル・ジョフィの作品6点が初日に売れるなど、好調な売れ行きを記録した。作品は、ニューヨークとカリフォルニアのコレクターやアメリカ中西部の美術館が購入し、合計販売額は24万1000ドル(約3200万円)になった。3月12日までフェニックス美術館で個展を開催中の日本人アーティスト、Mr.(ミスター)の彫刻、絵画、ドローイングも、マイアミ現代美術館などアメリカの複数の美術館が買ったという。さらに、今年3月にニューヨークのリーマン・モーピンで個展を開催するビリー・ザンゲワとロリエル・ベルトランの作品にも買い手がついている。

6. チェイス・ホール(デビッド・コルダンスキー)/不明

Photo: dario lasagna

ロサンゼルスを拠点とするギャラリー、デビッド・コルダンスキーのように、人気上昇中のアーティストのソロブースで多額を売り上げたディーラーも。チェイス・ホールの新作は開場から数時間で完売し、ギャラリーの説明では、世界的な「大規模」美術館やコレクターの手に渡ったという。なお、ホールにとって初となる美術館での個展が、2月28日からジョージア州サバンナのSCAD美術館で始まる。ギャラリーのシニアディレクター、カート・ミューラーによると、個展はロサンゼルスから遠く離れたアメリカ東部で開催されるにもかかわらず、美術館やコレクターから「驚くほどの反響」を得ているという。

7. アーニー・バーンズ(オルトゥザール・プロジェクツ、アンドリュー・クレプス・ギャラリー)/約1億3400万円超(複数の作品の合計)

Photo: Courtesy Ortuzar Projects and Andrew Kreps Gallery. © The Estate of Ernie Barnes

共同ブースを出したオルトゥザール・プロジェクツとアンドリュー・クレプス・ギャラリーは、アーニー・バーンズの絵画とドローイングを出品し、バーンズ作品への継続的な需要の高まりを実感させる売上を記録した。ギャラリーの報告によると、VIPプレビュー開場直後の数時間で、バーンズ作品の販売実績が100万ドル(約1億3400万円)を超えたという。3点の絵画はそれぞれ50万ドル(約6700万円)、それ以外の8点が6万ドル〜10万ドル(約800万円〜1300万円)という価格帯。また、記事執筆の時点で、両ギャラリーは、ある美術館がバーンズの絵画1点を100万ドル前後(約1億3400万円)で購入予約済みだと発表している。なお、ロサンゼルスのUTA Artist Spaceでもバーンズの作品を展示中だ(4月1日まで)。

8. ウッディ・デ・オセロ(ジェシカ・シルバーマン)/約3800万円(複数の作品の合計)

Photo: Phillip Maisel

サンフランシスコでギャラリーを運営するジェシカ・シルバーマンは、初日の開場早々、ウッディ・デ・オセロの22万5000ドル(約3000万円)の大型彫刻と、5万5000ドル(約740万円)の絵画が売れたと話す。ジュリー・バッファローヘッドの油彩画2点は、それぞれ3万5000ドル(約470万円)で売れ、1点はアメリカ東海岸の美術館コレクションに納められた。ロイ・ホロウェル、レベッカ・ネス、ローズ・B・シンプソンの作品も、3万5000ドル〜9万5000ドル(約470万円〜1270万ドル)で売れている。また、パエ・ホワイト、ハヤル・ポザンティ、チェルシー・リョーコ・ウォンの作品は、それぞれ5万ドル(約670万円)以下の価格帯で販売された。シルバーマンは「今回のフリーズ・ロサンゼルスでは、出展アーティストの作品の中でも特に野心的なものを押し出した」と自信を見せていた。(翻訳:清水玲奈)

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