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世界最古のヘブライ語聖書がサザビーズで競売へ。落札予想価格は最高67億円!?

2月15日、オークションハウス大手のサザビーズが、ほぼ完全な形で残る最古のヘブライ語聖書とされる「サスーン写本」を競売に出すことを発表。高額落札が予想されている。

ニューヨークのサザビーズに展示されたサスーン写本。約1100年前のもので、ほぼ完全な形で残るヘブライ語聖書としては最古のものとされる(2023年2月15日撮影)。Photo: Roy Rochlin/Getty Images

約1100年前のものとされるサスーン写本の予想落札価格は3,000万ドル〜5,000万ドル(約40億円〜67億円)で、歴史的文書の過去最高額に達する可能性がある。

写本の名は、実業家、慈善家として活躍し、ユダヤ教古文書の収集家でもあったデービッド・ソロモン・サスーンがかつて所有していたことにちなんでいる。サザビーズによると、ヘブライ語聖書で最も古い時期のものとされるレニングラード写本より1世紀近くも前に作られたという。エルサレムのイスラエル博物館にあるアレッポ写本は、サスーン写本より古いものだが、全体の5分の2近くが欠落している。

サザビーズの書籍・写本部門トップのリチャード・オースティンは、声明で次のように述べている。「サスーン写本は、現存する歴史的文書の中でも長く畏敬の対象となってきた伝説的な存在で、紛れもなく人類史上最も重要でかけがえのない文書の1つだ。1000年以上の歴史があるからこそ、この写本は比類なき存在感と重厚感を放っている」

サスーン写本には、ヘブライ語聖書24巻の単語をどのように綴り、読み、アクセントをつけるべきかについて中世初期の学者たちが記したマソラの注釈が含まれている。また、1000年以上にわたる注釈や聞き書き、解説、所有者記録なども収められている。サザビーズによると、後者は「アブラハムの宗教」と言われるユダヤ教キリスト教イスラム教が、中世の東部地中海沿岸地域でどのように発展し、広まっていったかを詳細に伝えるものだという。

サザビーズのオースティンはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、2年前に委員会を立ち上げ、サスーン写本の予想落札額に関する議論を始めたと語った。算出にあたって考慮されたのは、100枚以上の動物の皮が用いられていること、1人の手によって丹念に記された書、歴史的価値の高さなどだ。

それに加え、過去2回の歴史的文書の高額落札記録も参考にしている。1つは、ビル・ゲイツが1994年に3080万ドルで落札したレオナルド・ダ・ヴィンチの「レスター手稿」。2021年11月には、US版ARTnewsが選ぶトップ200コレクターズにもランクインしている大富豪、ケン・グリフィンがアメリカ合衆国憲法の初版を4320万ドルで落札し、ゲイツの記録を塗り替えた。

サスーン写本の現所有者は、シリア・レバノン・スイス系銀行家の子孫、ジェイコブ(ジャッキー)・サフラだ。サフラは1月に、サザビーズ・ニューヨークのオールドマスターズ・オークションで、17世紀イタリアの画家で人気の高いアルテミジア・ジェンティレスキの作品2点を売却している。

サスーン写本は、1982年に大英博物館で公開されて以来、一般の目に触れていない。しかし、サザビーズは近々、写本をロンドンやテルアビブのディアスポラ博物館、ダラスロサンゼルスニューヨークへ巡回させる予定だ。

サザビーズのライブオークションは、5月16日午前に開催される。(翻訳:石井佳子)

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