セントラル・セント・マーチンズ校舎で学生らがデモ。「ジェノサイドを前に中立という立場はとれない」
イスラエルによるガザへの攻撃に対して中立の立場をとっているロンドン芸術大学。これに対して同大学の学生団体「Students for Justice in Palestine」は、セントラル・セント・マーチンズ校舎のエントランスを占拠し、大学側に言論の自由や停戦を求める声明の発表、さらには副学長の辞任を要求した。
5月中旬、イギリスの名門美術大学であるロンドン芸術大学の学生たちは、イスラエルによるガザへの攻撃に対して、大学側が中立の立場をとっていることに抗議するべく同大学のカレッジの一つであるセントラル・セント・マーチンズの校舎のエントランスを占拠した。
教育機関が「大量虐殺に資金を提供していること」「シオニスト団体と関係をもっていること」に対して学生たちは声を上げており、抗議参加者たちは数カ月に及んだ抗議の末、「校舎を占拠する以外の手段は残されていなかった」と語っている。
パレスチナの保健当局によると、ガザへの攻撃によって3万5000人が殺害されており、そのほとんどは一般市民だという。また、ガザ近辺に住む人々のほとんどは避難を強いられており、230万人の国民は家を追われている。イスラエルは、10月7日に1200人の市民を殺害し200人の人質をとったハマスへの報復として攻撃を開始した。
アート・ニュースペーパーによると、ロンドン芸術大学の副学長を務めるジェームズ・パーネルと学生抗議団体「Students for Justice in Palestine(SJP)」は5月中旬に会議を開いたが、双方の合意に達せなかったことから今回の抗議運動に至ったようだ。「今回の会議で大学側に提示した要求がかなわないことは明確でした」と、会議に参加したSJPのメンバーの一人は語る。
学生たちはさまざまな要求を大学側に投げかけている。停戦を求める声明を大学が発表すること、International Holocaust Rememberance Alliance(IHRA)が定義する反ユダヤ主義を支持しないこと(IHRAの定義は反ユダヤ主義と反シオニズムを混同していると批判されている)、パレスチナに対して自由に言及する権利と集会を開催する権利を保障することがその一例だ。それ以外にも、パレスチナ人の学生への奨学金制度の用意、パレスチナの大学との協定の締結、そしてパレスチナについて学べる場の用意を大学側に要求している。
学生たちはまた、パーネルの辞任も求めている。2001〜2010年まで英国議会の労働党に所属し、2002〜2004年までLabour Friends of Israel(イスラエルの労働党友の会)の会長を務めたパーネルは、多くの学生から前述の目標達成への道を阻む大きな障害とみなされている。彼の辞任を求める理由について、学生はこう語る。
「教授や講師とはかなり良好な関係を築けています。でも、教育者に話すのと、政治家であるジェームズ・パーネルと話すのとでは明確な違いがあるのです」
イギリスの大学教職員が所属する労働組合「University and College Union」の支局員であり、ロンドン芸術大学の職員でもあるラフル・パテルによると、今回の抗議は大学がイスラエル・ハマス紛争に対する立場をとらなかったことに起因しているという。
「大学はこの紛争に対して声明を発表しておらず、中立を保つ意思を示しています。しかし、ジェノサイドを前に中立という立場はとれないと、私たちはこれまで主張してきました」とパテルは語り、ロシアがウクライナを侵攻した際に同校はロシアを非難する声明を瞬時に発表したことを指摘する。「ガザに対する声明を発表しないことによって、ロンドン芸術大学は視点の偏りをあらわにしています」
イスラエルがガザに侵攻して以来、大学や美術大学における学生の抗議活動や反イスラエルデモ、そしてガザ停戦を求める活動が全米に広がっている。ニューヨーク・タイムズによると、こうした活動に参加した2900人以上の学生が逮捕・拘束されたという。(翻訳:編集部)
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