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ジェフ・クーンズ作品が月に着陸! 横転などのトラブルを乗り越え、初の快挙

2月22日、ジェフ・クーンズの彫刻125点を載せた無人の月着陸船、Intuitive Machines Nova-C(Nova-C)が、横転した状態だが月面着陸を果たした。民間による月着陸船としては世界初の快挙であり、クーンズはSNSに喜びの声を投稿した。

2021年9月30日、イタリア、フィレンツェのストロッツィ宮殿で開催されたジェフ・クーンズ「シャイン」展の記者会見に出席したジェフ・クーンズ。Photo: Laura Lezza/Getty Images

ジェフ・クーンズの直径2.54センチの彫刻《Moon Phases》125点を月面に設置するプロジェクト、「Moon Phases」は2022年に発表された。その後、紆余曲折を経て、2024年2月15日未明に彫刻を側面に取り付けた月面着陸船Nova-Cが、スペースXのロケット「ファルコン9」でアメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられ、一週間後の2月22日、着陸船は無事に月面に到着。しかしNova-Cを開発したIntuitive Machines社によると、着陸船は横倒しの状態であるという。

実はNova-Cは、着陸すら危ない状況だった。ニューヨーク・タイムズ紙によると、着陸前、Nova-Cの軌道に誤りがあることに気が付いた管制官がレーザー距離計をオンにしたところ、2つのレーザーのセーフティ・スイッチが作動していたことが発覚。スイッチは手動でしか無効にできなかったが、幸いなことに、Nova-Cには予備でNASAで実験中のレーザー距離計、ナビゲーション・ドップラーライダーを搭載していた。Intuitive Machines社のエンジニアは、なんとかNASAのシステムから必要な高度と速度のデータを取得するためのソフトウェアパッチを設計し、着陸船の安全な着陸を確保した。横倒しになった理由についてははっきりしておらず、6本の着陸脚のうちの1本が地表に引っ掛かり、転倒したと推測する人もいる。

Verge誌によると、Intuitive MachinesのCEOスティーブ・アルテマスは最近のブリーフィングで、Nova-Cはクーンズの《Moon Phases》を下にして倒れていると報告した。

現在のNova-Cはソーラーパネルから電力を確保出来ている状況だが、横転しているためにアンテナの向きが計画通りではなく、通信を行うことが難しい。しかし、太陽から反対側に移動し、充分な電力を得られなくなる今週末まではデータを取り続ける。

完璧な状態ではないとはいえ、Nova-Cは月面着陸に成功した。ロイター通信によると、これは民間が製造、運営する月着陸船としては世界初、アメリカでは1972年以来の快挙だ。またクーンズにとっても、《Moon Phases》が月で最初の公認された芸術作品となる。

クーンズはNova-Cの打ち上げ以来、着陸船が送り続ける宇宙からの写真をSNSで紹介してきた。そして27日の夕方、「《Moon Phases》は月面にある!」という言葉と共に、歴史的な月面着陸に参加出来たことに対する感謝のメッセージを投稿した。(翻訳:編集部)

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