リサ&スティーブン・タナンバウム(Lisa and Steven Tananbaum)

拠点:アメリカ・フロリダ州パームビーチ
職業:資産運用
収集分野:現代アート、戦後美術

タナンバウム夫妻は、2度目のデートでニューヨークのメトロポリタン美術館を訪れたとき、2人ともアート好きであることを知ったという。以来何年も一緒に過ごすうちに、アートを見る趣味はアートを所有する情熱へと変わっていった。彼らのコレクションはダミアン・ハーストの蝶の作品から始まり、現在ではブライス・マーデン、エルズワース・ケリー、フランク・ステラ、ウィレム・デ・クーニング、ゲルハルト・リヒターといった歴史に残る大作家や、ジェニー・サヴィル、村上隆、アンドレアス・グルスキー、そしてもちろんハーストなど現在活躍中の作家の絵画、彫刻、写真作品を所蔵している。

2018年4月、スティーブン・タナンバウムは、購入した3つのクーンズ作品《Balloon Venus Hohlen Fels (Magenta)》、《Eros》、《Diana》が納品されないのは投資詐欺だとして、メガギャラリーのガゴシアンとジェフ・クーンズを相手取って訴訟を起こした。ガゴシアンは、クーンズが「完璧主義者で、1つの作品を完成させるのに何年もかかることが多い」と擁護したが、タナンバウムは作品に1300万ドル(約19億円)以上を支払っていた。この3作品が「限定版のマルチプル(量産作品)」、「ファインアート」、「コピー」のいずれにあたるかという技術的な問題で決着がつくと思われていた注目の法廷闘争は、2年後の2020年1月に両者が和解に合意し、幕を閉じた。和解の条件は開示されず、全ての訴訟と反訴は棄却された。

同時期に、スティーブン自身も論争の的となった。2019年、ニューヨーク近代美術館が4億5000万ドル(652億円)をかけた拡張・改修工事を終えて再オープンしたとき、スティーブンの資産管理会社がプエルトリコの債務危機で利益を得たことに抗議する人々が、彼を理事会から解任するよう同美術館に要求している。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。
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