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アニッシュ・カプーアがオペラ『シモン・ボッカネグラ』の舞台美術を担当! 日本では初の舞台作品

11月15日から新国立劇場で上演中のオペラ『シモン・ボッカネグラ』は、現代アート好きにも一見の価値がある。なぜなら、その舞台美術をアニッシュ・カプーアが担当しているのだ。

プロローグの舞台美術は、オペラの舞台である海運王国ジェノヴァを彷彿とさせる船の帆を抽象化したデザイン。撮影:堀田力丸 / 提供:新国立劇場

新国立劇場オペラ『シモン・ボッカネグラ』の演出を務めるピエール・オーディとアニッシュ・カプーアは、過去にもクロード・ドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』(モネ劇場、2008年)やリヒャルト・ワーグナーの『パルジファル』(オランダ国立オペラ、2012年)でもコラボレーションを実現しているが、日本で二人による演出と舞台美術が披露されるのは今回が初となる。

オーディは本作のに寄せたコメントの中で、「ヴェルディ作品の演出において、カプーアのようなヴィジュアル・アーティストが起用されるのはまれなこと」と強調し、「抽象的・象徴的な美術表現に耐えうるヴェルディのオペラをひとつ挙げるとすれば、『シモン・ボッカネグラ』をおいてほかにはない」と語っている。

オペラの本編全体にわたり提示される、逆さ吊りの火山。撮影:堀田力丸 / 提供:新国立劇場

オペラ本編においてダイナミックに提示される「逆さ吊りの火山」は、自身もオペラ愛好家であり、中でも『シモン・ボッカネグラ』は大好きな作品の一つだというカプーア本人のアイデアだ。孤独と死がつきまとう主人公シモンの人生を、エトナ山の近くに住み、最後には火口に身投げした古代ギリシアの哲学者・エンペドクレスに重ね合わせたという。

最終幕では、その火口から溢れた真っ赤な溶岩が辺り一面に広がるなか、舞台に黒い太陽が昇り、新たな夜明けを迎える。

舞台デザイン全体にわたり、血のような赤色や、全てを飲み込んでしまうような漆黒など、カプーアらしいモチーフが随所に表れる。それらが物語とともに刻一刻と変化する今回の『シモン・ボッカネグラ』は、現代アート好きにも一見の価値のあるオペラだろう。

最終幕で、舞台全体を包み込む黒い太陽。カプーアの《世界の起源》(金沢21世紀美術館所蔵、2004年)を思わせる舞台美術。撮影:堀田力丸 / 提供:新国立劇場
公演情報

新国立劇場オペラ『シモン・ボッカネグラ』
公演日程:2023年11月15日(水)19:00/18日(土)14:00/21日(火)14:00/23日(木・祝)14:00  /26日(日)14:00
会場:新国立劇場 オペラパレス

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