ポンペイ犠牲者の最後の瞬間をAIが可視化──すり鉢を手に逃げる男性の映像など、公開も視野に

79年のヴェスヴィオ山噴火により火山灰に埋もれた古代都市ポンペイ。2024年の発掘調査で出土した男性の遺骨や遺留品などのデータをもとに、AI技術を用いて犠牲者の行動や最期の状況を映像として可視化する試みが進んでいる。

AIがデータに基づき生成した、大きなすり鉢を盾に逃げるポンペイ犠牲者の姿。Photo: Pompeii Archological Park.

79年、ヴェスヴィオ山が噴火し、ローマの都市ポンペイは火山灰と高温のガスに覆い尽くされた。この大惨事を湾の対岸から目撃した作家の小プリニウスは後に、住民たちが降り注ぐ火山砕屑物や火山灰から身を守るため、頭に枕を縛りつけ、噴火で生じた暗闇の中を進むために松明を手にしていた様子を記録に残している。また、小プリニウスの叔父であり養父でもあった軍人の大プリニウスは、ポンペイ救出へ向かう途中、有毒ガスを吸って命を落としたとされる。

2024年、考古学者たちはポンペイ南門の外で2体の人骨を発見した。2人は海へ逃れようとする途中で命を落としたと考えられている。1体は若い男性のもので、火砕サージ(*1)によって死亡したと推定されている。

*1 火山噴火により発生する現象で、血液が沸騰するほどの高温のガスと灰が猛烈な速度で押し寄せる爆風。

2024年の発掘調査でみつかった遺骨。頭部には大きなすり鉢がある。Photo: Instagram/pompeii_parco_archeologico
遺骨とともに見つかったオイルランプ。Photo: Instagram/pompeii_parco_archeologico

もう1体は、やや高齢の男性のもので、頭部付近には、明らかな破損痕のある大きな素焼きのすり鉢が置かれていた。4月27日付のポンペイ発掘調査電子ジャーナル「Scavi di Pompei」に掲載された研究報告によると、この男性は、ラピッリと呼ばれる噴石から身を守るため、すり鉢を盾のように使っていた可能性があるという。この行動は、小プリニウスの記述とも重なる。さらに男性の遺骸のそばからは、オイルランプと10枚の青銅貨も見つかった。噴火による混乱の中でも、闇を照らす灯りと金銭を携え、可能な限り周到な準備を整えて避難しようとしていたことがうかがえる。

ポンペイ考古学公園は、現在、イタリアのパドヴァ大学との共同研究として、画像生成・編集AIツールを活用し、発掘調査で収集したデータをもとに犠牲者のデジタル復元モデルを制作している。すり鉢を手に逃げた男性の最期の瞬間も映像として再現が進められており、将来的には一般公開できるビジュアル作品として仕上げることを目指している。

このAIによる復元について、イタリアのアレッサンドロ・ジュリ文化相はEuronewsの取材に対し、次のように語っている。

「イタリアは歴史的に、古典文化をイノベーションの重要な柱として位置づけてきました。ポンペイでは、AIが計り知れない考古学的遺産の保護を支援するだけでなく、古代の暮らしをよりわかりやすく、親しみやすい形で伝えることにも貢献しています」(翻訳:編集部)

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