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ポンペイで「100年に1度の発見」! 豪華な温浴施設は有力政治家が所有、社交場の役割も

ポンペイ遺跡公園で、広大で豪華な温浴施設跡が見つかった。有力な政治家が所有していたと見られ、ポンペイの個人宅の温浴施設としては最大規模となる。

ポンペイ遺跡公園で見つかった、豪華な浴場跡。Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico

ポンペイ遺跡で、豪華な温浴施設跡が発見されたとポンペイ当局が発表した。場所は、富裕層が住んでいた地区であるレギオ9区のノラ街道沿いの住宅で、有力政治家であったアウルス・ルスティウス・ウェルスが所有していた可能性があるという。

浴場には、高温のカルダリウムとぬるま湯のテピダリウム、そして冷室のフリギダリウムの3部屋が設けられていた。アートニュースペーパーによると、人々はまずカルダリウムに入り、次にテピダリウムで肌にオイルを塗り、最後にフリギダリウムエリアへ移動したという。フリギダリウムは運動選手のフレスコ画に囲まれており、ベンチとモザイクの床を備えた更衣室と20~30人が入れるほどのプールがあった。ポンペイ遺跡公園のディレクターであるガブリエル・ツォクトリーゲルは、「暑い夏には、足を水につけて友人たちとおしゃべりをしながら、ワインを一杯楽しむこともできたでしょう」と推測する。

ポンペイ遺跡公園で見つかった浴場跡。Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico
Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico
Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico
Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico
Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico

これらの施設は、洗濯場やパン焼き窯を備えた大きな邸宅の一部であり、2024年に発見された漆黒の壁に見事なフレスコ画が描かれた巨大な宴会場「黒の間」と繋がっていた。これについてポンペイ遺跡公園は、「大広間である『黒の間』と温浴スペースが繋がっているということは、邸宅全体が贅沢な宴会場であったことを示しています。ここは、所有者が選挙に立候補した友人の支持を確保したり、あるいは自身の地位を主張したりする上で重要な役割を果たしていました」と説明する。

また、同遺跡公園によると、宴会場の近くに浴場があることは、ガイウス・ペトロニウスが1世紀後半に書いたとされる小説『サテュリコン』の一場面を彷彿させるという。その小説は、ヴェスヴィオ火山が噴火した79年と同時期の1世紀のカンパニアの都市を舞台としており、裕福な自由民トリマルキオは、主人公たちを風呂に入れる前に、手の込んだディナーを振る舞った。ツォクトリーゲルは、「客たちは、ホストが企画した豪華なショーに心からの賞賛を込めて拍手を送り、そして長い間、彼の邸宅での出来事の話題で持ちきりになったでしょう」と想像する。

ポンペイで調査を続ける考古学者のソフィー・ヘイは、浴室跡の発見について、BBCに「100年に1度の発見」と語りながらも、古代ローマ人の暮らしの暗部が明らかになったことを指摘する。温浴室のすぐ後ろにはボイラー室があり、鉛製の大きなボイラーが置かれていた。広大な浴場システムを維持するためにはボイラーをフル稼働させなければならず、奴隷たちは過酷な暑さに晒されていたと考えている。ヘイは、「これらの発掘調査で最も興味深いのは、奴隷と非常に裕福な人々の生活の間の際立ったコントラストです。遺跡にはその様子が示されています」と話す。

浴室跡は現在も発掘調査中のため、人数制限を設けて公開しているが、いずれは一般公開する予定だ。

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