イスラエル代表作家が声明「文化的ボイコット支持しない」──参加中止求める抗議拡大に応答

第61回ヴェネチア・ビエンナーレイスラエル館の参加をめぐる抗議が広がる中、代表作家のベル=シミオン・ファイナルが長文声明を発表。対話と開放性を強調した。

Belu-Simion Fainaru. Photo Mark Niedirmann
イスラエル代表作家のベル=シミオン・ファイナル。Photo: Mark Niedirmann

第61回ヴェネチア・ビエンナーレイスラエル代表を務めるアーティスト、ベル=シミオン・ファイナル(Belu-Simion Fainaru)は先週末、同芸術祭でのイスラエル館の開催中止を求める声が続いていることについて、長文の声明を発表した。

この声明の中でファイナルは、「アーティストとして、私は文化的ボイコットを支持しません」と述べ、こう続けている。

「私は、とりわけ困難な時代においてこそ、対話と交流を信じています。アートは開かれた環境の中でこそ繁栄するものであり、その空間が狭められることは、アートそのものを損なうことにつながります。多様な視点を受け入れることは、アートと社会をめぐる議論を豊かにします。この理由から、近年、私は対話へのコミットメントを一層深めてきました」

ファイナルが出展するイスラエル館に対しては、アート・ノット・ジェノサイド・アライアンス(ANGA)などの団体が抗議を行っている。同団体はイスラエルを「ジェノサイド国家」と呼び、ビエンナーレからの排除を求める公開書簡の中でこう記している。

「私たちが、パレスチナに対する公然たるジェノサイドが2年半続いたという恐るべき事実、そしてナクバ(*1)から77年の節目に直面する中で、イスラエル国家は再び、ビエンナーレを利用して破壊者ではなく文化の創造者であるかのように見せかけようとしている」

* ナクバ(Nakba):1948年のイスラエル建国に伴うパレスチナ人の大規模な追放・難民化を指すアラビア語(「大惨事」)。

ANGAの書簡には、昨年死去した総合キュレーター、コヨ・クオ(Koyo Kouoh)によるメイン展示の参加作家数十名、クオが生前に任命したキュラトリアル・アドバイザー2名、そして、ベルギーからアラブ首長国連邦に至る各国代表を含む数十名が署名している。また、これに続き、イスラエルに加えてアメリカとロシアへの排除を求める第二の書簡も発表された。とりわけロシアの参加は大きな反発を招き、複数の公開書簡に加え、欧州連合がビエンナーレへの資金提供を停止する可能性を示唆する事態にも発展している。

ビエンナーレ側は、イタリアが国家として承認している国に対し出展辞退を求めることはできないとし、3月4日に参加国一覧を発表した声明の中で、「あらゆる形の文化および芸術の排除や検閲を拒否する」とし、同展が「対話、開放性、そして芸術的自由の場」であることを改めて示した。なお、パレスチナはイタリアにおいて国家として承認されていないため、これまでビエンナーレにおいてナショナル・パヴィリオンを開催したことはない。今年のコラテラル展(公式展示外でビエンナーレの承認を受けて開催される展覧会)には、パレスチナ・ミュージアムUS(Palestine Museum US)が主催するガザに関する展示が含まれている。

ファイナルは、自身の声明をビエンナーレ会長のピエトランジェロ・ブッタフオコ(Pietrangelo Buttafuoco)にも提出したと語っており、その内容は、ビエンナーレ側の公式見解と重なる部分も多い。ファイナルは、「私は、アートを普遍的な言語として捉えています。それは個が形を持ち、人と人とのつながりが可能になる媒体です」と声明に記し、こう続ける。「歴史を通じて、アートは世界の多様性を映し出してきましたが、その真価は開かれていることにあります。アートはすべての人のものであり、背景や信念、国境を超越するものです」

さらに声明の後半で、ファイナルは次のように述べている。

「私は表現の自由を重んじ、多様な声と視点を歓迎します。私は自らの作品を共有し、対話に開かれた存在であり続けるためにここにいます。イスラエル館は、真摯な交流の精神をもって訪れるすべての人を歓迎します。来場者にはそれぞれの経験や視点を持ち寄っていただき、作品が思索的な関与の場となることを願っています」

また彼は、ビエンナーレで発表予定の作品《Rose of Nothingness》について、彼は「人生もアートと同様に、蓄積や過剰によってではなく、欠如しているもの、いまだ生成しつつあるものに耳を傾けることによって形づくられる」ことを想起させるものだと説明した。本作は、16本のパイプから黒い水が滴り落ちる、反射する水盤を特徴とするインスタレーションだ。

前回の2024年のビエンナーレでイスラエル代表を務めたのは、ルース・パティル(Ruth Patir)。彼女はパビリオン開幕初日に一般公開を中止し、ガザでの停戦成立と、ハマスによって拘束された人質の解放が実現した場合にのみ再開するとしていた。しかし、いずれも会期中に実現することはなかった。(翻訳:編集部)

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