ヴェネチア・ビエンナーレにイスラエル不参加を求める声が拡大──署名者には同芸術祭アドバイザーも
活動家団体「Art Not Genocide Alliance」は、ヴェネチア・ビエンナーレにイスラエルの不参加を求める公開書簡を発表した。書簡には約200人の美術関係者が署名し、芸術祭のアドバイザリーチームのメンバーも名を連ねている。
活動家団体「Art Not Genocide Alliance」は3月中旬、ヴェネチア・ビエンナーレにイスラエルの除外を求める公開書簡を発表した。書簡には、第61回ヴェネチア・ビエンナーレに関わるアーティストやキュレーターら、美術関係者およそ200人が署名している。
署名者には、昨年5月に急逝したビエンナーレ芸術監督コヨ・クオの構想を引き継ぐアドバイザリーチームのメンバー、ゲイブ・ベックハースト・フェイフーとラシャ・サルティも含まれる。メイン展示「In Minor Keys」に参加するアーティスト数十名に加え、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、フランス、ポーランドなど各国パビリオンの関係者も名を連ねた。さらに、実名で署名することで身の安全や政治的・法的な不利益を受けるおそれがあるとして、各国パビリオンのアーティストとキュレーター12人が匿名で署名している。
公開書簡には次のように記されている。
アーティスト、キュレーター、美術従事者は、ジェノサイドを行うイスラエルに発信の場を与えることを、集団として拒否します。この書簡はパレスチナのアーティストや文化従事者に寄り添い、パレスチナへの連帯を示すと同時に、シオニストによるジェノサイド、アパルトヘイトの終焉と、パレスチナに自由が取り戻されることへの願いが込められています。
2024年、ジェノサイドを行う国家がビエンナーレに参加することへの批判は高まり、イスラエル館は閉鎖を余儀なくされました。パレスチナへのジェノサイドが2年半に及んで公然と行われており、ナクバから77年が経った今もなお、イスラエルは命を奪い、文化を破壊していることを隠蔽し、クリエイターであることを装うために、ビエンナーレに参加しようとしているのです。
「Art Not Genocide Alliance」は、第60回ヴェネチア・ビエンナーレの開催前にも同様の書簡を公開しており、最終的には2万人以上の署名が集まった。2024年4月には、イスラエル代表のルース・パティールが、停戦と人質解放の合意が成立するまでイスラエル館を開館しないと表明した。その後も会期終了まで合意には至らず、イスラエル館は開館しなかった。会期中はパビリオンの外で抗議活動も続いた。
今年のビエンナーレでイスラエルは、ジャルディーニではなくアルセナーレで展示を行う。代表作家に選ばれたハイファ在住のアーティスト、ベル=シミオン・ファイナルはUS版ARTnewsに対し、この変更を前向きに受け止めていると語った。アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビアなどと同じエリアで展示できる点にも期待を示している。
ビエンナーレを巡る論争は、イスラエルの参加問題にとどまらない。今月初めには、ロシアが2022年のウクライナ侵攻以来初めてロシア館実施を発表し、これにも強い反発が広がった。中止を求める書簡には、8500人を超える署名が集まっている。
これに対しビエンナーレ側は、文化と芸術における排除や検閲を拒否する立場を示し、地政学的緊張のなかでも展覧会は対話と芸術的自由を支える場であるべきだと説明している。また、イタリア共和国が認めたすべての国には、自らの判断で参加申請する権利があるとも述べた。
ただ、この説明でも批判は収まらなかった。3月中旬には22カ国の文化大臣が、会長ピエトランジェロ・ブッタフオーコにロシア参加の再考を求める書簡に署名し、戦争が続くなかでこれほど目立つ文化的舞台を与えれば、事態を「正常」に見せかけかねないと警告した。
また、EU当局者も声明を出している。欧州委員会上級副委員長のヘンナ・ヴィルックネンと、文化・スポーツ担当のグレン・ミカレフは、ロシアが参加した場合、EUがビエンナーレに提供した200万ユーロの資金を打ち切る可能性があると表明した。ロシアの参加容認は、EUがウクライナ侵攻に対して維持してきた立場と相いれないというのがその理由だ。
戦争が続くなかでロシアやイスラエルの参加をどう扱うのかは、ビエンナーレが掲げる「中立」に深い疑問を投げかけている。US版ARTnewsのコラムが指摘するように、芸術展が完全に中立であり続けることは難しい。だからこそ、オリンピックなど他の国際イベントが整備してきたような倫理基準を、ビエンナーレも検討すべき段階に来ているのかもしれない。(翻訳:編集部)
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