ヴェネチア・ビエンナーレのロシア館参加に批判広がる──「文化が政治の道具になってはならない」

2022年のウクライナ侵攻以来初めて、ロシアが第61回ヴェネチア・ビエンナーレに参加することになった。この決定をめぐり、ウクライナ政府やアーティストらから参加の是非を問う批判が広がっている。

2022年に閉鎖されていたロシア館の外観。Photo: James Arthur Gekiere/BELGA MAG/AFP via Getty Images
2022年に閉鎖されていたロシア館の外観。Photo: James Arthur Gekiere/BELGA MAG/AFP via Getty Images

2022年のウクライナ侵攻以来初めて、ロシア館が第61回ヴェネチア・ビエンナーレのナショナル・パビリオンに参加することになった。しかし、この決定が広く歓迎されているとは言い難い。ウクライナは3月上旬、ロシア館を激しく非難する声明を発表し、ビエンナーレ側にロシアを除外するよう求めた。ウクライナの外務大臣を務めるアンドリー・シビハは、SNSに次のように投稿している。

「ヴェネチア・ビエンナーレは、世界で最も権威ある芸術祭のひとつです。ウクライナ国民と文化遺産に対してロシアが毎日犯している戦争犯罪を正当化する舞台にしてはなりません」

シビハはさらに、ロシアが「政治的影響力の道具として、文化を平然と利用している」ことを指摘し、かつてウクライナに連帯を示していたビエンナーレが立場を翻したと批判。シビハが言及している連帯とは、ロシア館があるジャルディーニに2022年に設けられた、ウクライナに焦点を当てたインスタレーション《Piazza Ucraina》を指すとみられる。この作品は、戦争下にあるウクライナのアーティストたちの作品やメッセージを掲示し、国際社会との対話や連帯を生み出す広場として構想されたものだ。当時ビエンナーレは、ロシアによる侵攻を「残忍な侵略」と強く非難していた。

「パビリオンを除外する権限はない」

ロシアが最後にヴェネチア・ビエンナーレに参加したのは2019年。2022年にはロシア館が閉鎖され、2024年にはロシアとの外交関係の維持を図るボリビアがロシア館を使用した。こうした経緯もあり、ロシア当局はアナスタシア・カルネーエワがキュレーションを手掛ける今年の展覧会を、「復帰」ではなく「今の情勢において新たな創作活動の形を模索し続ける」取り組みの一環と位置付けている

2024年には、イスラエルとイランを芸術祭から除外すべきと圧力が高まったが、ビエンナーレ側は「イタリア共和国が認めたすべての国は、自らの判断で参加申請することが可能」と説明し、国ごとのパビリオンを除外する権限はないと表明した。そのうえで、「外部からのいかなる請願も考慮することはできない」との立場も示している。

ロシアの参加をめぐる一連の批判について、US版ARTnewsがビエンナーレにコメントを求めたところ、広報担当者は今年の参加国一覧を含む3月4日付の発表を参照するよう述べた。この発表では次のように説明されている。

「各国からの参加申請を受け入れるにあたって、ヴェネチア・ビエンナーレは文化と芸術の排除や検閲を断じて拒絶します。当芸術祭は、ヴェネチアという都市と同様に、対話を育み、開放的で、芸術的自由を担保する場であり続けます。人々と文化のつながりを醸成し、紛争と苦しみの終息を願っています」

2022年のロシア館が閉鎖されたことについてビエンナーレは、同館キュレーターの判断によって閉鎖されたと2024年に説明している。キュレーターのライムンダス・マラサウスカスはアーティストのキリル・サフチェンコフ、アレクサンドラ・スハレワとともに参加を辞退し、ウクライナでの戦争を「政治的にも感情的にも耐え難い」と表現する共同声明を発表していた。

参加中止を求める公開書簡も

今回ウクライナが発表した声明と時を同じくして、ロシアの参加中止を求める公開書簡も出回っている。ビエンナーレの会長を務めるピエトランジェロ・ブッタフオーコに宛てられたこの書簡は、ロシアの参加を許可することで、ビエンナーレの中立性が損なわれると主張し、次のように述べている。

「『文化は政治を超える』という(ミハイル・シュヴィドコイの)主張は中立的と言えるのでしょうか。現代ロシアにおいてこの論理は、文化交流や対話という言葉の影に攻撃性と国家目的を隠しながら、それらを推進するための政治的手段となっています」

署名者には、欧州議会副議長を務めるイタリアの政治家ピナ・ピチェルノや、ヴェネチアでアート・スペースを運営するコレクターのフランチェスカ・ティッセン=ボルネミッサが名を連ねる。アーティストのラグナル・キャルタンソン、トマス・サラセーノ、そしてロシアの反体制パフォーマンス集団プッシー・ライオットのメンバーであるナージャ・トロコンニコワも署名した。

プッシー・ライオットはさらに、ロシア館に対する抗議活動を予告し、「ウクライナ、ロシアの戦争犯罪の被害者、ロシアの政治犯、そしてウクライナの戦争捕虜に対して無条件の連帯を表明したい」と、Instagramに投稿した。

こうした批判の広がりの発端となったのは、リトアニアの外務大臣ケストゥーティス・ブドリースによる非難声明だった。ブドリースは3月上旬、「人殺しかつテロリストであるロシアと、これまで通りの関係を維持するなどもってのほかだ」とSNSに投稿し、ロシアの参加を認めたビエンナーレの判断を「忌まわしい」と批判した。(翻訳:編集部)

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