火山噴火から逃れた人々の足跡か。ポンペイ近くの工事現場から青銅器時代の集落跡や神殿が出土
イタリア・カンパニア州でメタンガス用パイプラインの改修工事を行っていた際に、青銅器時代から古代末期までさかのぼる複数の遺跡が発見された。紀元前1995年に起きたヴェスヴィオ火山の噴火の悲惨さが伺える人と動物の足跡や、古代末期に作られたとされる墓跡も出土したことから、数千年にわたって同地域で文明が存在していたと考えられる。

イタリアのカンパニア州、サレルノ県でメタンガスのパイプラインの改修工事が行われた際に、青銅器時代から古代末期までさかのぼる遺跡が複数発掘された。出土してから2年間にわたって実施された調査は、同国の考古学協会であるSoGEArchが率いた。
改修工事中に発掘されたのは、青銅器時代のものとされる人間と動物の足跡。ポンペイから約32キロメートル離れたサレルノのカサルツァーノ川近くで発見された足跡には、ヴェスヴィオ火山の噴火による岩石の破片が含まれており、これらの足跡は、住民たちが激しい噴火から逃れようとしていた証拠だと専門家は見ている。また、家屋の土台が残されていたこと、そして陶器の破片が付近から出土したことから、火山が噴火する前までは組織化された集落があり、小屋が建っていた可能性が高いという。
ヴェスヴィオ火山の噴火は、紀元79年にポンペイを火山灰で覆い、街と住民を一夜にして焼き払ったものとして知られているが、青銅器時代に起きた噴火は紀元前1995年に起きたとされており、79年の噴火と比べると被害はより甚大だったと考えられている。
これ以外にも、ヌチェリア・アルファテルナ近くでは紀元前3〜2世紀にかけて建てられたとされる神殿が発見された。神殿内では陶製の奉納品が発見されており、当時信仰されていた宗教の実態や崇拝されていた神々に関する理解を深めるために、さらなる分析が行われる予定だ。
また、凝灰岩の板で覆われた列をなす墓坑には、複数の埋葬跡が発見されており、古代末期からローマ帝国への移行期に作られたものと推測されている。これらの墓からは子どものものと思われる遺骨が出土しており、ささやかな副葬品とともに埋葬されていたという。
青銅器時代までさかのぼる足跡や、古代末期に作られた墓の発掘調査が行われたことで、イタリア南西部では数千年にわたって文明が築かれていたことが明らかになった。(翻訳:編集部)
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