金属探知機愛好家が「リチャードの秘密」と銘刻された中世の印章を発見。中央には古代ローマの宝石
- TEXT BY ARTNEWS JAPAN
イギリス・エセックス州の村ゴスフィールドで2025年9月、金属探知機愛好家が、中央に彫刻宝石を嵌め込んだ中世の銀製印章を発見した。調査の結果、その宝石が古代ローマ時代に制作されたものであることが判明し、1000年以上の時を隔てた二つの時代が一つの遺物に重なり合う、きわめて稀な例であることが明らかになった。

金属探知機愛好家が2025年9月、イギリス・エセックス州の村ゴスフィールドで印章を発見したとBBCが伝えた。
印章は銀製で、その中央には二頭立ての馬車と御者が彫刻された楕円形のカーネリアンがはめ込まれていた。発見後、この遺物は、個人が見つけた携帯可能な考古遺物を公的に記録する制度「ポータブル・アンティクイティーズ・スキーム(携帯型考古遺物記録制度)」に基づき、コルチェスターおよびイプスウィッチ博物館による調査を受けた。その結果、印章本体の制作年代は1200年から1400年の間と推定され、銀製の覆輪部分にはラテン語で「+SECRETVM・RICARDI(リチャードの秘密)」という銘文が刻まれていることが判明した。この表現は中世の私的印章に典型的なものであり、印章がリチャードという名の男性のために作られ、個人的な用途に用いられていたことを示している。
さらに注目すべきは、印章の中央に据えられたカーネリアンだ。様式比較に基づく分析の結果、この宝石はローマ帝政初期にあたる紀元前1世紀後半、あるいは紀元1世紀初頭に制作された「インタリオ」であることが明らかになった。古代ローマ時代には、宝石に図像を凹彫りするインタリオと呼ばれる技法が高度に発達し、所有者の権威や教養を示す印章として広く用いられていた。

エセックス州の出土品連絡担当官であるロリ・ロジャーソンは、「異なる二つの時代の物品が一つに組み合わさっている例は珍しい」と述べ、この発見の重要性を強調する。印章の持ち主であったリチャードは、熱した蝋にこの印章を押し、手紙や文書を封印していたと考えられる。ロジャーソンは、彼が意図的に古代ローマのインタリオを選び、自身の印章に組み込んだ可能性が高いと指摘し、こう説明した。
「これは間違いなく、所有者の社会的地位を示す指標でした。『遠い過去の時代や場所に由来する貴重なものを手に入れる手段を私は持っている』と示すものであり、その人物がかなり重要な存在であった、あるいは少なくとも自分自身を重要だと考えていたことを物語っています」
今回発見された印章は、中世における個人のアイデンティティや社会的地位を浮かび上がらせると同時に、古代ローマ世界の物品が数世紀を経た後も流通し、象徴的価値を保ち続けていたことを示す好例だ。この印章は今後、コロナ―(検死官)と呼ばれる役員によるトレジャー審問(treasure inquest)に付され、法的に「トレジャー(埋蔵文化財)」に該当するかどうかが判断される予定だ。
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