#フェミニズム/Feminism

女性の権利の拡大を目指す人権思想や、それに基づいた社会運動のこと。ラテン語のfemina(女性)を語源とし、男女同権の実現や性差別の克服、女性の社会進出などを大きな目標に掲げて展開される。

フェミニズムを波で捉えることに対して、各時代・地域特有の運動が無視されてしまうという批判はあるものの、一般に第1波は、おもに女性参政権の獲得をめざしたフランス革命期から、20世紀前半のイギリスでの運動、第2波は1960〜80年代にかけて展開された欧米での運動と説明されることが多い。第2波では、ベティ・フリーダン『女らしさの神話』やシモーヌ・ド・ボーヴォワールの『第二の性』などを契機として、リベラル・フェミニズム、ラディカル・フェミニズム、マルクス主義フェミニズム、カルチャル・フェミニズムなど多様な展開がなされた。第3波は、1990年代以降の運動で、ジュティス・バトラー『ジェンダー・トラブル』などの影響がみられる。

なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか

アートとフェミニズムが交差し出すのは、1970年代初頭からで、ケイト・ミレットの著書『性の政治学』(1970)や、リンダ・ノックリンが『ARTnwes』本国版に投稿した論文「なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか」(1971)などの例が挙げられる。この論文の概要は「近代以前の美術史における著名な作家はほとんどが男性であり、従来の美術史が男性中心主義的な視点によって書かれた男女非対称なものである。」といったもので、女性作家を発掘・再評価する必要性を強調した。

主なフェミニズム・アーティスト

1970年代には、《Maman》などの彫刻で著名なルイーズ・ブルジョワや、エキセントリックな性表現やハプニングを行った草間彌生、《ディナー・パーティ》 などの代表作を持つジュディ・シカゴ、舞台上に座った自分の衣服を、観客が切り取っていくパフォーマンス《カット・ピース》を行ったオノ・ヨーコなどが、先駆的なフェミニズム・アーティストとして評価された。

1980年代は、どこかで見たことのある女性に扮して写真を撮る《アンタイトルド・フィルム・スチル》シリーズで著名なシンディ・シャーマン、モノクロ写真に、赤地に白色のフォントの宣言文を重ねる作品で、アイデンティティやセクシュアリティの文化的な構造を批判するバーバラ・クルーガーらが活躍した。

その後は、シリン・ネシャット、ピピロッティ・リストキャサリン・オピーらの作家が登場し、女性アーティストによる制作活動は勢いを増しており、日本では、長島有里枝、北原恵、遠藤麻衣、長谷川愛、小田原のどかなどのアーティストが活躍している。

近年はLGBTQ+クィア理論などへの関心が高まっており、フェミニズムはこれらの動向とも相互関連した動きを見せている。 

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