72歳のタカコ・ヤマグチら15人が受賞! 女性アーティストの支援団体が2024年の受賞者を発表
ヴァージニア・ウルフのエッセイの一節から名付けられた女性アーティストの支援団体、アノニマス・ワズ・ア・ウーマン(Anonymous Was A Woman=AWAW)が運営するアワードが、2024年の受賞者を発表した。対象は、40歳以上の女性アーティストで、今年は15人が受賞した。
1996年以来、女性アーティストの活動を支援するため、毎年40歳以上のジェンダーアイデンティティが女性であるアーティストを対象にアワードを授与してきた非営利団体、アノニマス・ワズ・ア・ウーマン(Anonymous Was A Woman=AWAW)が、今年の受賞者15人を発表した。
アーティストのスーザン・アンターバーグによって設立された同団体のアワードは、芸術的達成の基盤となる経済的自立について論じたヴァージニア・ウルフのエッセイ『自分だけの部屋』(1929)の一節から名付けられた。これまで毎年少なくとも10人のアーティストに1人2万5000ドル(現在の為替で約387万円)を授与しており、総額は500万ドル(約7億8000万円)以上にのぼる。選考条件は、40歳以上で「キャリアにおける重要な岐路であるか」ということ。過去の受賞者のベティ・サー、キャロリー・シュニーマン、キャリー・メイ・ウィームス、ニコール・アイゼンマンらはその後も更なる活躍を続け、彼女たちの功績がこのアワードの知名度向上にも貢献。こうしたこともあり、今年から受賞者は15人となり、賞金も5万ドル(約775万円)に増額した。
2024年の受賞者のおもな顔ぶれは、近年アート市場で評価が高まる、ロサンゼルス在住の日本人作家タカコ・ヤマグチ(72歳)、時間と幻想の概念を探求し、打破するアルゼンチン人アーティスト、リリアナ・ポーター(83歳)、アメリカ先住民に伝わるギーズ・ベンド(Gee’s Bend)のキルト作家として知られるメアリー・リー・ベンドルフ(89歳)ら。AWAWの創設者、スーザン・アンターバーグは、「女性と芸術の両方がかつてないほど支援を必要としているこの時期に、今年の受賞者を祝福できることを嬉しく思います」と祝った。
また今年、AWAWはあらゆる年齢層の女性ビジュアルアーティストを対象に、要望やキャリアについての初の調査「Anonymous Was A Woman」を実施した。この調査は、AWAWがSMU Data Artsおよびジャーナリストのシャーロット・バーンズとジュリア・ハルペリン、そしてナンシー・A・ナッシャーおよびデヴィッド・J・ヘミスエガー・コレクションのディレクター、ローリング・ランドルフと共同で企画したものだ。調査結果はアート界の有力者や、美術館・ギャラリー関係者などに広く共有される予定で、アーティストにも、自身やコミュニティのニーズをよりよく主張するために、このレポートを活用することを呼びかける。
調査結果は、2025年4月9日にニューヨーク大学で開催されるシンポジウム「 アーティスト、思想家、リーダーの集い」で発表される。また、これに合わせて同大学のグレイ美術館で、過去25年間にアワードを受賞したアーティストの作品を集めた展覧会が開催される。スーザン・アンターバーグは「『Anonymous Was A Woman』の調査とシンポジウムにより、芸術界の女性たちの現状について芸術界のコミュニティに知ってもらい、前向きな変化をもたらす方法を模索するという、より広い支援活動の段階に移行できることを楽しみにしています」と語った。
2024年のアノニマス・ワズ・ア・ウーマン受賞者は、以下の通り。
エリカ・バウム(Erica Baum、63歳)
メアリー・イーノック・エリザベス・バクスター(Mary Enoch Elizabeth Baxter、42歳)
メアリー・リー・ベンドルフ(Mary Lee Bendolph、89歳)
ナタリー・ブクチン(Natalie Bookchin、62歳)
ラシダ・バンブレー(Rashida Bumbray、46歳)
メアリー・エレン・キャロル(Mary Ellen Carroll、62歳)
ロビン・ヒル(Robin Hill、69歳)
ジョイス・コズロフ(Joyce Kozloff、81歳)
ジェン・リウ(Jen Liu、48歳)
グラディス・ニルソン(Gladys Nilsson、84歳)
リズ・フィリップス(Liz Phillips、73歳)
リリアナ・ポーター(Liliana Porter、83歳)
シャーリー・ツェー(Shirley Tse、56歳)
タカコ・ヤマグチ(Takako Yamaguchi、72歳)
コンスタンティナ・ザヴィツァノス(Constantina Zavitsanos、47歳)
(翻訳:編集部)
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