「3匹のこぶた」を再解釈した女性アーティスト作品を、ドイツの右翼政党が「グロテスク」と非難
ドイツのオスナブリュック美術館で開催されているソフィア・シュスミルヒの展覧会では、「3匹のこぶた」を再解釈したパフォーマンスなどが展示されている。こうしたなか、中道右派政党のドイツ・キリスト教民主同盟は彼女の作品を「グロテスク」と非難しており、シュスミルヒに殺害予告が届いているという。
アーティストのソフィア・シュスミルヒは、オスナブリュック美術館で実施している展覧会が中道右派の政治家たちの非難の対象となり、殺害予告を受けたとドイツのメディアに語った。
彫刻やパフォーマンス、テキスタイル、動画、そして写真で構成されているシュスミルヒの展示は、おとぎ話の「3匹のこぶた」を修正主義的な視点で解釈している。あるパフォーマンスでは、子どもたちを捕食する食人族が、捕食対象を自分の胃袋の中で守ろうとする歌が披露された。その作詞作曲を手がけたのはシュスミルヒ自身だという。今回の展示の説明には次のように記されている。
「おとぎ話は、善悪の区別を明確につけている。正しく良しとされる行動を取るように教えてくれるものだ。しかしこの展示は、善悪の区別がそれほど単純ではないことを示そうとしている。正しさを決めるのは誰なのだろうか」
この展覧会はまた、「子宮をもつ人々」が単なる「産む機械」と捉えられている状況に言及していることも、ステートメントに記されている。
そして、このパフォーマンスと関連する展示物は「家庭内暴力、流産、子どもを授かることのできない夫婦の関係性など、一部の人にとって不快な感情や記憶を引き起こす可能性があるトピック」を扱っており、16歳以下の子どもはパフォーマンスと展示の観覧を控えることをすすめるという、警告も併記されていた。
この展覧会は、同様のテーマに焦点を当てたオスナブリュック美術館のプログラムの一部であり、中道右派政党であるドイツ・キリスト教民主同盟(CDU)の党員から非難されている。
「このようなグロテスクで不快な描写が、芸術という名目で公に展示されている」と、オスナブリュック出身のCDU党員、マリウス・キーテはドイツの日刊紙ディー・ターゲスツァイトゥングに語っており、キーテをはじめとするCDU党員は、オスナブリュック美術館をボイコットするよう呼びかけている。
また、シュスミルヒに殺害予告が届いていることが、ドイツのアートメディアMonopolが美術館側に実施した取材から明らかになった。
シュスミルヒがドイツのラジオ番組で語ったところによると、CDU党員たちは、子どもを身ごもる人の身体的自律性を侵害していると批判した上で、彼女のパフォーマンスの禁止を求めたという。シュスミルヒは番組内で次のように語っている。「CDU党員たちは、私の作品のテーマを理解することはできないでしょうし、恐れているのでしょう」(翻訳:編集部)
from ARTnews