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アマゾンの川底から人の顔。干ばつで出現した古代の岩絵は先住民の歴史を知る貴重な手がかり

深刻な干ばつで記録的な水位低下に見舞われているブラジルのアマゾン川で、2000年前のものと見られる川底の岩絵が出現した。描かれていたのは、幽霊のような人面や動植物などだ。

ブラジルのマナウス近くで10月4日に空撮された、ネグロ川につながる支流。アマゾナス州では、エルニーニョ現象による深刻な干ばつで水位が低下し、魚の大量死で水質汚染が発生。船の航行が不可能となって孤立した地域には、ヘリなどで食料、医薬品、水が運ばれている。Photo: Bruno Zanardo/Getty Images

干上がった川から岩絵が見つかったのは、アマゾン川の支流であるネグロ川とソリモンエス川の合流点に近いポント・ダス・ラジェス。この遺跡では、13メートルを超える水位低下があった2010年の干ばつ時に初めて岩絵が発見された。今年は危機的な干ばつで14メートル近く水位が下がったため、これまで以上に多くの岩絵が露出したという。しかし、流域の住民や川に生息する生物にとって、水不足は非常に深刻な状況にある。

古代の岩絵には人間の顔や川の流れを抽象的に描いたものもあり、さらに矢や槍などを研磨するのに使われたと考えられる溝も発見された。アマゾナス連邦大学のカルロス・アウグスト・ダ・シルバは、研究者チームは1つの岩に25の溝があるのを確認したと地元のニュースサイト、アマゾニア・レアルに答えている。

また、英ガーディアン紙に「ここは古代の人々が道具を作るのに利用した場所だった」と述べ、アマゾンのこの地域には、先コロンブス期(*1)の紀元前1000年から紀元後1000年頃まで、先住民の大規模なコミュニティがあったと説明した。


*1 スペイン人による征服以前、アメリカ大陸にヨーロッパの影響が及ぶ以前の時代。

シルバとともに調査にあたっている考古学者のフィリッポ・スタンパノーニ・バッシは、アマゾニア・レアルにこう語っている。

「黒色土や大量の陶磁器片、岩絵などは、この地域の先住民の歴史を雄弁に物語っています。ネグロ川沿いの主要都市であるマナウスに住む私たちは、こうした遺跡に敬意をもって接しなければなりません」(翻訳:石井佳子)

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