#草間彌生

草間彌生(1929〜)は、長野県松本市出身の現代アーティスト。幼少期から幻覚・幻聴に悩まされ、その体験を題材にした絵画を製作し、アートへと昇華。単一モチーフの反復、増殖による自己消滅など、オブセッショナルな芸術哲学を見出している。

網目模様や水玉模様は今や彼女の代名詞であり、「前衛の女王」「水玉の女王」といった異名でも知られる。カボチャをモチーフにした作品も多く、2021年に台風の影響で破損したのち復元された香川県・直島の作品『南瓜』などは記憶に新しい。

来歴

10歳の頃より、水彩・パステル・油彩などを使った幻想的な絵画の制作を始める。1957年に渡米し、「ネット・ペインティング」と呼ばれる巨大な平面作品や、鏡や電飾を用いたインスタレーションを発表。他にも、ハプニングと称される過激なパフォーマンスを実行し、前衛芸術家としての地位を確立した。

1962年、クレス・オルデンバーグやアンディ・ウォーホルらが参加したグループショーに参加すると、様々なアーティストに「ソフト・スカルプチャー」などの影響を与える。1966年には第33回ヴェネチア・ビエンナーレに参加し、インスタレーション作品《ナルシスの庭》を発表した。

一方で、映画製作や新聞の発行などメディアを通した表現も行っている。1968年、自作自演の映画『草間の自己消滅』が第4回ベルギー国際短編映画祭に入賞。他にも、第2回アン・アーバー映画祭で銀賞、第2回メリーランド映画祭にて受賞するなど、高く評価された。

1973年に日本に帰国した後は、美術作品の製作発表を続けながら、小説や詩集を発表するなど活動の幅を広げる。初の小説、『マンハッタン自殺未遂常習犯』を1978年に発表すると、1983年には『クリストファー男娼窟』で第10回野性時代新人賞を受賞した。

1994年より野外彫刻を世界中で手がけ、その作品が街中で見られるようになる。リスボンの地下鉄通路では、壁画の制作も行う。2009年には正方形絵画群《わが永遠の魂》シリーズの制作を開始した。

現在も精力的に活動を続け、次々に新作を発表する草間彌生。2017年には東京・新宿に草間彌生美術館が開館。草間は開館に際し、「私の生涯における最大の感激」としながら、「この草間彌生美術館に込めた思想や、すべての最愛なる人類へ捧げる愛を込めた私の一生と、生涯を通してきた芸術への努力の真情を見て、感じ取っていただければこれに勝る幸いはありません」とコメントを寄せた。

また、昨年香港に開館したアジア最大級のヴィジュアル・カルチャー博物館M+でも、草間彌生の大規模個展「Yayoi Kusama: 1945 to Now」が開催されるなど、アジアへの影響力も大きい。

コラボレーション・映画

草間彌生は、著名ブランドとのコラボレーションも多い。近年では、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションで、ニューヨーク・ロンドン・パリ・表参道など世界各地の店舗に奇抜な作品が登場し、ソーシャルメディア上を賑わせた。

草間彌生の半生を振り返る映画『草間彌生∞インフィニティ』は、彼女を知る上で有益な情報源となるだろう。