安藤忠雄の「青春」、草間彌生の版画 etc. 大阪・関西万博とセットで見たい京阪神の展覧会BEST10【2025年GW】
大阪・関西万博が始まって初めての大型連休がやってくる。大阪市内でStudy: 大阪関西国際芸術祭 2025、京都ではKYOTOGRAPHIE 京都国際芸術祭 2025も開催されているこのゴールデン・ウイーク、京阪神には世界に誇るべき日本の宝や見逃せないアーティストの展覧会が大集結する。その中から見逃せない10展示を選んだ。一期一会のアートに出会いに旅立とう。

- 1. 日本国宝展(大阪市立美術館)
- 2. 安藤忠雄展|青春(グラングリーン大阪「VS.」)
- 3. 交差する未来 — パトリシア・ピッチニーニと北川宏人(Yoshiaki Inoue Gallery)
- 4. 〈若きポーランド〉-色彩と魂の詩 1890-1918(京都国立近代美術館)
- 5. 日本、美のるつぼ—異文化交流の軌跡—(京都国立博物館)
- 6. 松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界—反復と増殖—(京都市京セラ美術館)
- 7. 川内倫子+篠原雅武「Inhabiting Light」(MtK Contemporary Art)
- 8. We Like Us(Nonaka-Hill 京都)
- 9. 平松典己個展「鼾」(ARTRO)
- 10. パウル・クレー展——創造をめぐる星座(兵庫県立美術館)
1. 日本国宝展(大阪市立美術館)
日本美術の真髄。時代を超えて息づく至宝たち
リニューアルした大阪市立美術館で開催される大阪初の国宝展。日本の美の源流である縄文時代の造形から、仏教美術、中世の水墨画や絢爛豪華な桃山絵画、書跡、刀剣・甲冑・漆工・染織・陶磁器まで、幅広い時代と多様なジャンルの国宝約130件で、日本美術の流れをたどる。
第1章では「ニッポンの国宝—美の歴史をたどる」として、日本美術の造形にみるデザインに注目しつつ、金印「漢委奴国王」、新潟県出土の火焔型土器、神護寺蔵「伝源頼朝像」、狩野永徳の「唐獅子図屏風」、尾形光琳の「燕子花図屏風」といった、日本美術史を彩る不朽の名品を紹介。第2章「おおさかゆかりの国宝―大阪の歴史と文化」では、大阪にゆかりの深い国宝を一挙公開する。
日本国宝展
会期:4月26日(土)~6月15日(日)
場所:大阪市立美術館(大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82 天王寺公園内)
時間:9:30~17:00 (土曜・5月4・5日は19:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜 (4月28日、5月5日は除く)
2. 安藤忠雄展|青春(グラングリーン大阪「VS.」)
「青春」を生きる建築家・安藤忠雄の現在地とビジョン
大阪で生まれ、今なお大阪を拠点に世界で活躍する建築家・安藤忠雄の大規模個展。約60件の建築プロジェクトや230点余りのスケッチ・ドローイング、模型などを通じて、安藤の壮大な挑戦の軌跡と、現在進行中の取り組み、そして未来への果てなきビジョンまでを一望する。
会場は安藤が長年尽力してきた、大阪の都市再生プロジェクトの最前線である「グラングリーン大阪」の中心に位置する文化装置「VS.」。前面の芝生広場には、本展のテーマ「青春」を象徴する直径2.5メートルの「青りんご」のオブジェが設置され、来場者を誘う。
約1400平方メートルの地下空間に広がる展示会場では天井高15メートルの没入映像空間が設置され、安藤の代表作をヴァーチャル体験できるほか、初期代表作「水の教会」が、ほぼ原寸大のインスタレーションとして再現される。今なお「青春」を生きる稀代の建築家の熱意を体感できる。
「安藤忠雄展|青春」
会期:3月20日(木)~7月21日(月)
場所:VS.(大阪府大阪市北区大深町6-86 グラングリーン大阪内)
時間:10:00~18:00(金土・祝前日は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜日(祝日は除く)
3. 交差する未来 — パトリシア・ピッチニーニと北川宏人(Yoshiaki Inoue Gallery)
「理想」と「倫理」のあいだで、生命の境界を問う
現代彫刻の最前線で活躍するパトリシア・ピッチニーニと北川宏人による2人展。それぞれに異なるアプローチから「人間が生み出した生命」との関係性を多角的に問い直す。
ピッチニーニは、シリコンや人毛をつかって精巧に作り込まれた人間と動物のキメラ(異種合成体)のような生命体を通して、バイオテクノロジーの進化がもたらす新たな生命の可能性を探求。一方、テラコッタを用い、焼成後、表面をアクリル絵の具で着色する手法で、現代の若者や近未来風の人物像を制作する北川は、人間のエゴや欲望が生み出す「理想のペット」を風刺的に表現。私たちの願望や欲求が投影された生命体と人間との複雑な関係性を鋭く切り取る。
未来の生命は、人間の手によってどのように形づくられるのか? 科学の進歩と人間の欲望が交錯する場所で生まれる新たな生命形態。その可能性と危うさを、2人の視点から体験したい。
交差する未来 — パトリシア・ピッチニーニと北川宏人
会期:4月11日(金)~5月17日(土)
場所:Yoshiaki Inoue Gallery(大阪市中央区心斎橋筋1丁目3-10 心斎橋井上ビル 2・3F)
時間:11:00~19:00
休館日:日月祝
4. 〈若きポーランド〉—色彩と魂の詩 1890-1918(京都国立近代美術館)
独立を夢見た芸術家たちが紡ぐ、色彩と魂の詩
ロシア・プロイセン・オーストリアに占領され、1795年から1918年までの123年間、独立を失っていたポーランド。国を失った人々がアイデンティティの拠り所としたのが絵画や音楽などの芸術だった。本展では、19世紀後半、古都クラクフを中心に活動した「若きポーランド」と呼ばれる芸術家たちに焦点を当てる。
ポーランドの歴史や文化的逸話を大スケールで描いた画家ヤン・マテイコを先駆者とし、西欧の美術や浮世絵などの日本美術を貪欲に吸収しながら、独自の芸術表現を模索していった「若きポーランド」。約9割が日本初公開となる絵画や版画、家具やテキスタイルなどの工芸品約130点を通し、彼らの祖国の独立を願う心情を読み取る。象徴性に富み色彩豊かな彼らの作品に、前世紀転換期に花開いたポーランド美術の真髄を体感できる。
〈若きポーランド〉—色彩と魂の詩 1890-1918
会期:3月25日(火)~6月29日(日)
場所:京都国立近代美術館(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26-1)
時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで、入館は30分前まで)
休館日:月曜(5月5日は除く)
5. 日本、美のるつぼ—異文化交流の軌跡—(京都国立博物館)
国宝と重要文化財が物語る、海を越えた美の共鳴
現代に伝わる日本美術の名品には、海外交流のなかで古今東西の芸術文化が混じり合いダイナミックに形づくられてきたものが少なくない。本展では、「交流」をテーマに日本の美術をとらえなおす。
弥生・古墳時代から明治期までの絵画、彫刻、書跡、工芸品など、国宝19件、重要文化財53件を含む200件の文化財を厳選し、日本美術に秘められた異文化交流の軌跡をたどる。ゴッホが激賞した「グレート・ウェーブ」こと葛飾北斎の代表作「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」や世界に向けた琳派の美である俵屋宗達の国宝「風神雷神図屏風」など、世界に見られた日本美術、世界に見せたかった日本美術、世界と出会った日本の美術という視点で日本美術の底力を再発見する。
「大阪・関西万博開催記念 「日本、美のるつぼ—異文化交流の軌跡—」
会期:4月19日(土)~6月15日(日)※前期 5月18日まで、後期 5月20日から
場所:京都国立博物館 平成知新館(京都府京都市東山区茶屋町527)
時間:9:00~17:30(金曜は20:00まで、入館は30分前まで)
休館日:月曜(5月5日は除く)、5月7日
6. 松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界—反復と増殖—(京都市京セラ美術館)
南瓜から富士山まで。草間彌生が版画に刻んだ軌跡
世界的前衛芸術家・草間彌生(1929-)の版画作品の魅力に迫る展覧会。初期の作品から近年の代表作「愛はとこしえ」シリーズに至るまで、その全貌を一挙に紹介する。1993年の第45回ヴェネチア・ビエンナーレで日本を代表するアーティストとして国際舞台に立った草間だが、その前後に精力的に取り組んだ版画制作は、今日の高い評価を築く大きな契機となった。
草間が版画に初めて挑んだのは1979年。アメリカから帰国後に手がけた「死」や「苦悩」を描いた作品とは対照的に、華やかなモチーフと鮮やかな色彩が印象的だ。南瓜やドレス、南瓜やドレス、葡萄、花、蝶といった日常的な題材が、網目や水玉といった草間らしいパターンで構成され、独特の世界を形づくっている。網目や水玉の増殖が創作活動の根幹にあった草間と、複製芸術である版画は必然的に出合ったと言っても過言ではないだろう。シルクスクリーン、エッチング、木版画など、約330点におよぶ作品から、草間彌生の版画芸術の軌跡を紐解く。
松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界—反復と増殖—
会期:4月25日(金)~9月7日(日)※前期は6月29日まで、後期は7月1日から
場所:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町 124)
時間:10:00~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜日(4/28、5/5、7/21、8/11は除く)
7. 川内倫子+篠原雅武「Inhabiting Light」(MtK Contemporary Art)
川内倫子の写真と篠原雅武の哲学が織りなす対話
写真家・川内倫子と哲学者・篠原雅武による展覧会。篠原が書いた文章に対し、川内が写真で返信し、さらに篠原が文章で応答するというように、文章と写真のダイアローグで構成されている新刊『光に住み着く Inhabiting Light』(torch press、2025 )がベースになっている本展は、2人のダイアローグが相互に関わり合いながら、「光」という主題の深層を探る。
「川内倫子+篠原雅武「Inhabiting Light」
会期:4月11日(金)~5月3日(土)
場所:MtK Contemporary Art(京都府京都市左京区岡崎南御所町20-1)
時間:10:00~18:00
休館日:無休
8. We Like Us(Nonaka-Hill 京都)
「私たち」の境界線。写真が紡ぐ共感の力学
4人の写真家クリス・キリップ、ジム・マンガン、渡辺克己、カールハインツ・ワインバーガーによる作品と、ロカビリー愛好家の私的アルバム「フランクのロックン・ロール」を展示。展覧会タイトルの「私たちは私たちが好き」という言葉には、どのコミュニティにも共通する、世界を守り外部との距離を保つ本能が反映されている。
写真家たちは社会の周縁に生きる人々に時間をかけて寄り添い、信頼関係を築くことで彼らの美意識や自己表現を捉えた。キリップは1970~80年代のイギリスで産業衰退に直面した労働者階級の暮らしを記録し、マンガンはユタ州とアリゾナ州の州境に位置する特異な宗教文化を背景に持つコミュニティの少年たちの姿を捉えた。渡辺は1960~70年代の新宿・歌舞伎町で「流しの写真屋」として活動し、ワインバーガーは1950~60年代のスイスの若者サブカルチャーをドキュメントした。ある特定のコミュニティを記録しながら、他のコミュニティとの相互理解や共感を生み出す写真の力に迫る。
We Like Us
会期:4月12日(土)~5月24日(土)
場所:Nonaka-Hill 京都(京都市東山区新門前西之町201-4)
時間:11:00〜18:00
休館日:日月祝
9. 平松典己個展「鼾」(ARTRO)
古都を舞台に繰り広げる3つの展覧会
1986年生まれの画家、平松典己による個展。平松は日本大学芸術学部を卒業後、ドイツ・カールスルーエ国立美術アカデミーでダニエル・ロート、マルセル・ファン・エーデンに師事。現在もベルリンを拠点に活動を続ける。平松の油彩は特定のモチーフから出発することなく描かれはじめ、長い期間をかけて絵の具を重ねる中でモチーフが立ち現れてくるという。抽象的な構成と重層的な色彩が特徴的な平松の絵画と、築100年の蔵を利用した同スペースとの調和も楽しんでもらいたい。
また同会期にて、京都市内の曼殊院門跡(京都市左京区一乗寺竹ノ内町42)で庄司朝美と平松典己による「Silent Witness」、妙心寺・桂春院(京都市右京区花園寺ノ中町11)でAnton MunarとPol Wah Tseによる「Puentes Malos (Bad Bridges)」も開催する(開館時間などは施設による)。
平松典己個展「鼾」
会期:4月19日(土)~5月10日(土)
場所:ARTRO(京都市中京区貝屋町556)
時間:11:00〜18:00
休館日:月火
10. パウル・クレー展——創造をめぐる星座(兵庫県立美術館)
抽象の中にひそむ命の輝き クレーの創造世界を辿る
人生に内在する根源的な悲劇性と向き合いながら、線と色彩によって光を呼び起こし、抽象のなかに生命のエネルギーを表現したスイスの画家パウル・クレー(1879–1940)。その独創的な表現スタイルは、生前から高い評価を受け、現在では20世紀前半を代表する最も重要な美術家のひとりとされている。
本展では、初期から晩年にかけての代表作を通して多彩な創作世界を紹介しつつ、生涯にわたる創造の軌跡をたどる。キュビスム、表現主義、ダダ、シュルレアリスムといった彼が影響を受け、また影響を与えた同時代の芸術潮流にも光を当て、他作家の作品も交えて展示することで、その芸術の核心に迫る。
パウル・クレー展——創造をめぐる星座
会期:3月29日(土)~5月25日(日)
場所:兵庫県立美術館(兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1[HAT神戸内])
時間:10:00~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜日(5月5日は除く)、5月7日