アート視点で厳選! 大阪・関西万博の注目パビリオン【随時更新】

2025年4月13日に開幕予定の大阪・関西万博。参加国などが主導するパビリオンの中から、アートの視点で必見のパビリオンを厳選して紹介する。

紀元前2世紀の彫刻「ファルネーゼのアトラス」を展示予定のイタリア館の外観(イメージ図)。Visual by Visual MCA - Courtesy of Italy Expo 2025 Osaka

大阪・関西万博の開幕に向け、パビリオンの準備が急がれている。2025年4月13日から25年10月13日にかけて開催予定の今回の万博では、47カ国による国別パビリオンのほか、企業によるパビリオンやテーマ別のパビリオンがつくられる予定だ。

また、大阪・関西万博のプロデューサーを務める8人が主導するシグネチャーパビリオンも。プロデューサーには、生物学者の福岡伸一、アニメーション監督の河森正治、映画作家の河瀨直美、放送作家の小山薫堂、ロボット工学者の石黒浩、STEAM教育家の中島さち子、メディアアーティストの落合陽一、慶応義塾大学教授でデータサイエンティストの宮田裕章ら、多様な分野で活躍する専門家が名を連ねている。

これらのパビリオンはアート作品の展示の場としての役割を負っているわけではないが、アート視点で注目したいパビリオンを厳選して紹介していこう(随時アップデート予定)。

チェコ共和国:アルフォンス・ミュシャの彫刻 etc.

チェコパビリオン外観の完成予想図。©Office of Czech Commissioner General

チェコの伝統工芸品であるボヘミア・ガラスと同国で生産された木材を使って建設された、らせん状が特徴的なチェコパビリオン。内部ではチェコ出身のアーティストでアール・ヌーヴォーを代表する画家、アルフォンス・ミュシャが制作した黄金の彫刻や画家ヤクブ・マトゥシュカによる全長250メートルの壁画が展示されるほか、ガラス作家ロニー・プレスルによるガラス彫刻が展示される。

ガラス作家であるロニー・プレスルの彫刻作品《Evil Eye》。© Office of the Czech Commissioner General, EXPO 2025
チェコ館のイメージ図。天井にはプレスルの作品が吊るされ、壁画にはヤクブ・マトゥシュカの作品が描かれる。©Office of Czech Commissioner General, Rony Plesl

フランス共和国:クリストとジャンヌ=クロード etc.

フランスパビリオンの完成イメージ。© Coldefy & CRA-Carlo Ratti Associati

緑豊かな屋上が特徴的なフランスパビリオンは「愛の賛歌」をテーマに、外壁をドレープのような布で覆う予定。これは、フランスで活躍した環境芸術の大家、クリストとジャンヌ=クロードの作品にインスピレーションを受けている。

また、フランスパビリオンのメインパートナーを務めるLVMHグループは、館内でルイ・ヴィトンディオールの常設展示を行う。ルイ・ヴィトンはOMAの建築家である重松象平とのコラボレーションのもと、日本とクラフツマンシップへのオマージュを捧げた展示を展開。加えて、真鍋大度によるビデオインスタレーションも公開する。ディオールは、デザイナーでアーティストの吉岡徳仁と写真家の高木由利子の作品を展示予定だ。

ルイ・ヴィトンによる常設展示。©LOUIS VUITTON

また、会期中には特別展も開催。セリーヌがビジュアルアーティスト中村壮志と彦十蒔絵による漆作品を、ショーメは自然の美をテーマにした没入型展示を特別展示として公開する予定だ。

イタリア共和国:ファルネーゼのアトラス

イタリアパビリオン外観の完成イメージ。Visual by Visual MCA - Courtesy of Italy Expo 2025 Osaka

ルネサンスの理想の都市」をテーマにパビリオンの準備を進めるイタリアは、紀元2世紀に作られた彫刻像「ファルネーゼのアトラス」を展示することを発表している。日本の展示は初めてとなる同作は、天球儀を肩に担ぐギリシャ神話の神、アトラスを描いた像で、同パビリオン内の半円形の広場の中央に設置される予定だ。

館内のイメージ。中央奥にあるのが「ファルネーゼのアトラス」。Visual by Visual MCA - Courtesy of Italy Expo 2025 Osaka

シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」:塩田千春、宮島達男 etc.

Better Co-Being」は、慶応義塾大学教授の宮田裕章がプロデューサーを務めるシグネイチャーパビリオン。「いのちを響き合わせる」をテーマに、建築家ユニットのSANAAが設計を手がけた。壁も屋根もない、鉄鋼による天蓋だけが立った前例のないパビリオンは、「人と人との共鳴」「人と世界の共鳴」「人と未来の共鳴」という3つのシークエンス(共鳴体験)で構成される。キュレーションを金沢21世紀美術館館長の長谷川祐子が担当する。

シークエンス1では、塩田千春が「大量生産・大量消費社会から転換を迎える現代において、個々人の多様な背景や価値観を尊重しながら、いかに他者や世界とのより良い共存を目指すのか。その問いかけを詩的かつ空間的に表現」する作品を展示するほか、宮島達男が「多様な音(声)が重なるサウンドスケープを聴きながら、森と空の境目が溶け込むような風景を眺める体験」を創出し、来場者を思索的・内省的な状態へと導く。シークエンス2、3のアーティストは後日発表予定。

ウーマンズパビリオン in collaboration with Cartier:エズ・デヴリン、森万里子 etc.

「組子ファサード」を使ったウーマンズパビリオンの外観。©Cartier_RVB

「ともに生き、ともに輝く未来へ」をテーマに掲げるウーマンズパビリオンは、2020年のドバイ万博に続き、カルティエが内閣府などと共同で出展するパビリオン。日本における女性活躍の状況を広く国内外に発信するとともに、世界における女性活躍の状況を紹介することを目的としている。建築デザインはドバイ万博で日本館を手がけた永山祐子が担当し、当時、日本館で使われた「組子ファサード」を再利用する。

同館のグローバル アーティスティック リードに選ばれたのは、U2、ビヨンセ、アデルなどのコンサートなど、数々の伝説的ステージを演出してきたイギリスの舞台美術家でアーティストのエズ・デヴリン。ドバイ万博では、女性として初めて英国パビリオンを手がけた。

ウーマンズパビリオン内観。©Cartier_RVB

デヴリンがキュレーションを手掛ける1階では、3名の女性のパーソナルな物語を追体験するという没入体験が来場者を迎える。ここでは、来場者が入口で自分の名前を伝え、それぞれの名前を介したアイデンティティがストーリーの一部に組み込まれるという仕掛けも。

また2階では、「WA」スペースと名付けられた空間で会期を通じて150ものトークセッションが繰り広げられるほか、フランスの俳優で映画監督、アーティストのメラニー・ロラン、現代アーティストの千葉尋と森万里子が作品を展示予定だ。また、映画監督の河瀨直美が同館のプレリュードムービーを、案内係の制服をsacaiのデザイナー兼クリエイティブディレクターの阿部千登勢が手がける。

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