ブルドーザーが「1000年前の地上絵」破壊──米税関・国境警備局、国境壁工事業者による損傷認める
トランプ政権下で進められているアメリカ・メキシコ国境壁の建設工事により、アリゾナ州の先住民居住地に残る約1000年前の地上絵が破壊された。現地では地元の先住民や研究者から強い反発の声が上がっている。
アメリカ・アリゾナ州の先住民居住地に残る約1000年前の地上絵が、トランプ政権下で進められている国境壁建設工事によって破壊された。ワシントン・ポスト紙が報じた。
被害を受けたのは、アリゾナ州アホの西方、アメリカ・メキシコ国境沿いに位置する「ラス・プラヤス・インタリオ(Las Playas Intaglio)」と呼ばれる地上絵だ。インタリオとは、地表を削るなどして描かれた凹状の図形や文様を指す。
ラス・プラヤス・インタリオは約1000年前に制作されたとみられ、全長約60メートルにわたって魚の形が描かれている。こうした地上絵はアリゾナ州南西部では極めて珍しいという。
現地でボランティア調査を行っている元考古学者リチャード・マルティネックによると、損傷を与えたのは、トランプ大統領が推進する国境壁建設プロジェクトの工事業者だという。ポスト紙によれば、地上絵のうち約18〜21メートルが破壊された。
総事業費465億ドル(約7兆2500億円)を投じるこのプロジェクトは、1日あたり約5キロという急ピッチで進められており、現場作業員には強い工期圧力がかかっているとされる。同紙は、「工事は環境保護法などの関連法規を順守しておらず、自然保護活動家や国立公園職員、先住民コミュニティの間で深刻な懸念を招いている」と伝えている。
2026年4月に撮影された衛星画像には、地上絵周辺が乱されている様子が写っており、先週公開された最新画像では、「魚の形の約3分の1にブルドーザーの跡が走っている」ほどの損傷が確認された。ポスト紙が5月1日に報じた直後、アメリカ税関・国境警備局(CBP)も被害の事実を認めた。
CBPの広報担当ジョン・メネルは声明で、次のように述べている。
「2026年4月23日、国境壁建設業者が、アリゾナ州アホ西方の国境沿いに位置する文化遺跡『ラス・プラヤス・インタリオ』を誤って損傷しました。残存部分については保全措置を講じており、現地での保護活動を継続します」
一方、地元先住民族ヒア・セド・オオダム族の長老ロレイン・マルケス・アイラーは、ポスト紙の取材に対し、次のように語った。
「もし誰かがワシントンに乗り込み、アメリカの人々が大切にしている場所を次々と破壊し始めたら、どう感じますか。私たちに起きているのは、まさにそれと同じことなのです」
さらにアイラーはトランプ大統領を名指しし、「誰かがこの事態の責任を負わなければなりません。誰の責任なのか、皆わかっています。彼は責任を取るべきです。好き放題に行われているのに、誰も止めようとしません」と批判した。(翻訳:編集部)
from ARTnews