美味なるビストロも。卓越した手仕事と美意識、革新性を表現する大阪・関西万博フランス館をレポート
ルイ・ヴィトンやディオールなどを擁するラグジュアリーコングロマリットLVMHがメインパートナーを務める、大阪・関西万博のフランス パビリオン。フランスの美意識やクラフツマンシップを革新的な手法で表現する同パビリオンをレポートする。

大阪・関西万博でフランスパビリオンのメインパートナーを務めているのが、ARTnews「TOP 200 COLLECTORS」の常連であるベルナール・アルノー率いるラグジュアリーコングロマリット、LVMH。同パビリオンでは、グループ傘下のルイ・ヴィトン、ディオール、セリーヌ、ショーメ、モエ ヘネシーが、フランスが誇るクラフツマンシップや豊かな生活のあり方を発信している。
これまでもランウェイショーやイベントなどで、真にエキサイティングなプレゼンテーションを発表してきた5ブランドが参画するフランスパビリオンが、来場者の期待を裏切ることはない。日本人クリエイターとタッグを組んで創出した日本とのつながりを感じさせる空間から、手仕事を大切にする姿勢をうかがわせる、所々に展示されたロダンの「手」の彫刻まで、パビリオンのそこここに同グループの思想や価値観が息づいているのだ。
視覚や聴覚に訴えかけるルイ・ヴィトンの幻想的な展示
5ブランドの展示の中で、建築家の重松象平とコラボレーションして「日本への愛」「時を超えるクラフツマンシップへの愛」をテーマにしたのは、ルイ・ヴィトンだ。ブランドのDNAであるトランクを84個配したライブラリーを満たすのは、現代音楽をリードする施設・フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)と共同制作された、同メゾンのアトリエの音を再解釈してリズムで表現したサウンドトラック。ちなみにIRCAMは、人気ピアニストの角野隼斗が学んだ場所でもある。続くスペースでは、トランクが惑星のようにゆっくりと回転していく映像作品が投影されている。こちらはメディアアーティスト、真鍋大度が制作したもので、とても幻想的だ。
ディオールは高木由利子、妹島和世とコラボレーション
シルエットのスケッチを立体的に表現した約400点の白いトワルが空間を覆うディオールの展示は、2023年に東京都現代美術館で開催されたディオール展を思い起こさせる。これら「服の素顔」の美しさを表現した展示に加えて、写真家・高木由利子の作品や建築家・妹島和世とのコラボレーションによるバッグ「レディ ディオール」が佇む様子は、圧巻だ。高木はディオールとの仕事をまとめた写真集の発刊を年内に予定しているという。
日本の伝統工芸でセリーヌのトリオンフを再解釈
セリーヌはアイコンのエンブレム「トリオンフ」にフォーカスした。石川県輪島の彦十蒔絵による漆を用いたトリオンフのアートピース、また漆と同色で彩られたセリーヌのアイコンバッグ「トリオンフ」は、まさに日本の伝統工芸とセリーヌの美意識との融合だ。これらは展示終了後、セリーヌの限定店舗で展示・販売される。さらに、現代美術家の中村壮志によるトリオンフが日本の美しい風景の中を旅する映像作品は屏風のようなミラーに投影され、幻惑的な印象をもたらす。全体を通じて、クラシカルかつコンテンポラリーに、トリオンフが再解釈されている。
美意識とクラフト、食に触れる旅
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン社長のノルベール・ルレは、次のように話す。
「日本と弊社には、18世紀にヘネシーのコニャックが日本にもたらされて以来の長い関係があり、アルノー会長はフランス パビリオンへの参加を打診された際には即決しました。来場者の方には、フランスの手仕事を知る機会を提供し、LVMHの店舗に足を運んだことのない人、あるいはわれわれの製品を購入したことがない方にも興味持ってもらえたら嬉しい」
ホスピタリティパートナーとして参加するモエ ヘネシーは、パビリオン4階に位置する「ビストロ」のメニューやイベントで提供されるワインやシャンパンを提供している。フランスを代表する各メゾンの展示を見終わったら、美味なるフレンチに舌鼓を打ちながら、しばし鑑賞の余韻を楽しもう。
ルイ・ヴィトンとディオールは常設で閉幕の10月13日まで展示。セリーヌは5月11日までの期間限定だ。9月1日から閉幕までの後半では、ショーメが登場する。フランスパビリオンは万博東ゲート正面というアクセスしやすいロケーション。ラグジュアリーブランドの美とクラフトの真髄、そして食に触れる高揚感あふれる体験から、万博巡りを始めることをおススメしたい。

フランス パビリオン
場所:大阪・関西万博 東ゲート側
会期:4月13日(日)~10月13日(月)
時間:9:00〜21:00
https://www.expo2025.or.jp/official-participant/france/