草間彌生と加藤泉がトップ10ロットにランクイン。フィリップス香港の近現代アートセール結果速報
出品作の7割がオークション初登場というフィリップス 香港の近現代アートセールが、5月27日に行われた。落札総額7900万香港ドル(約14億円)、セルスルー率87%となった同セールから、注目作品の結果を見ていこう。

5月27日、香港のフィリップスがモダン&コンテンポラリーアート・イブニング&デイセールを開催した。良好とは言えない昨今の市場環境で、同社はオークション初登場の作品を多く集め、全体の7割、イブニングセールでは9割が初出品の作品となった。
結果は落札総額7900万香港ドル(約14億円)で、106ロットの出品のうち92ロットが落札され、セルスルー率はロット数ベースでも金額ベースでも87%。「フレッシュ・トゥ・マーケット」と言われる作品群でアート市場のニーズに応じる戦略は功を奏したようだ。

トップロットはアジアで人気のあるジョージ・コンドの《Blues In F》(2021)で、予想落札額が1200万から2000万香港ドル(約2億2000万〜3億6000万円)だったのに対し、落札額はその下限をやや上回る1376万香港ドル(約2億5000万円、手数料込み、以下同)。コロナ禍の中で制作され、淡いブルーが基調のこの作品には、その頃の孤独や疎外感が滲み出ているように感じられる。

また、現在ニューヨークのグッゲンハイム美術館で個展を開催中のラシード・ジョンソンの《Untitled Escape Collage》(2017)は、今回がオークション初出品。予想額350万から550万香港ドル(約6300万〜9900万円)のところ、落札額第3位となる381万香港ドル(約6900万円)を達成した。
日本人アーティストで事前の注目度が高かった草間彌生、加藤泉はいずれもトップ10ロットに入り、草間彌生のカンバスにアクリルの作品《Infinity (C)》(1986)は予想落札額150万から250万香港ドル(約2700万〜4500万円)のところ、228万6000香港ドル(約4100万円)で落札。
加藤泉によるほぼ等身大の木彫作品《Untitled》(2022)は、予想額の180万から280万香港ドル(約3200万〜5000万円)に対し、215万9000香港ドル(約3900万円)で決着した。このセールには、加藤の大型インスタレーション《Untlitled》(2018)も出品されており、そちらは予想額40万から60万香港ドル(約720万〜1100万円)のところ、53万3400香港ドル(約960万円)で落札されている。

そのほか、塩田千春の《State of Being (Dress)》(2020)は予想最高額の60万香港ドル(約1100万円)を大きく上回る82万5500香港ドル(約1490万円)で、ロッカクアヤコの《Untitled (ARP19-049)》(2019)も予想最高額の85万香港ドル(約1500万円)を超える92万7100香港ドル(約1670万円)で買い手がついている。
今回の近現代セールで好調だったのは中国の現代アーティストだ。1970年代から90年代生まれのアーティストに限るとセルスルー率は100%で、多くの作品が予想落札額を上回る結果だった。
また、呉冠中(ウー・グァンヅォン)と常玉(サンユー)など中国近代美術の人気の根強さも目についた。呉冠中の《Springs and Autumns》(1994)は、予想最高落札額480万香港ドル(約8600万円)のところ、482万6000香港ドル(約8700万円)で落札額第2位となっている。