マルレーネ・デュマス作品が約19億7000万円で落札。存命女性アーティストの最高額を更新

マルレーネ・デュマスの《Miss January》がクリスティーズ・ニューヨークのイブニング・セールに出品され、約19億で落札された。これにより、ジェニー・サヴィルが2018年に樹立した存命女性アーティスト最高額の記録が更新された。

マルレーネ・デュマス《Miss January》(1997) Photo: Courtesy of Christie's
マルレーネ・デュマス《Miss January》(1997) Photo: Courtesy of Christie's

5月14日にクリスティーズ・ニューヨークで開催されたイブニング・セールにおいて、マルレーネ・デュマスの絵画が1360万ドル(約19億7700万円)で落札され、最も高額で取引された存命女性アーティストの記録を更新した。

《Miss January》(1997)には1200万〜1800万ドル(約17億4400万〜26億2000万円)の予想落札価格が設定されており、記録更新が確実視されていた。本作は、ARTnewsが毎年発表しているTOP 200 COLLECTORSに名を連ねるルベル・ファミリーのコレクションから出品され、第三者による保証も付いていたという。

《Miss January》はオークション開始から1分も経たないうちにハンマーが下ろされ、最終的にはクリスティーズの戦後・現代美術部門の副会長サラ・フリードランダーが代理を務めた匿名のコレクターが落札した。手数料を除いた1150万ドル(約16億7200万円)での落札に、会場からは記録更新を祝う拍手が沸き起こった。

落札された《Miss January》は、デュマスが10歳のときに描いた初期作品《Miss World》を再解釈したものとされている。またこのタイトルは、1992年にアムステルダム市立美術館で開催されたデュマスの初の回顧展「Miss Interpreted」や、自画像と考えられている《Misinterpreted》(1988)の延長線上にあると考えられる。

デュマスが記録を更新する前は、ジェニー・サヴィルの自画像《Propped》(1992)が2018年にサザビーズ・ロンドンのオークションで950万ポンド(当時の為替で14億円)で落札され、存命女性アーティストとしての最高額を樹立した。《Propped》には当初、300万〜400万ポンド(現在の為替で約5億8000〜7億7000万円)の予想落札価格が付けられていた。

デュマス作品の最高額は、サザビーズ・ロンドンが2008年7月に開催したオークションで318万ポンド(現在の為替で約6億1500万円)で買い手が付いた《The Visitor》(1995)だった。

デュマスのオークション結果上位10点のうち、7点が手数料込みで予想最高落札価格を上回り、そのうち6件はニューヨークで開催されたオークションで落札されている。

しかし近年の傾向としては、2022〜2024年の間に15作品がオークションに出品されたものの、100万ドル(約1億4500万円)以上で落札された作品は5点にとどまり、手数料込みで予想最高落札価格を超えた作品は2点しかなかった。Artnet Price Databaseによれば、この3年間にオークションに出品されたデュマスの作品の大半はパリ、ロンドン、香港で落札されたという。

ルベル・ファミリーは、自身のコレクションから作品を手放すことがほとんどなく、今回《Miss January》が出品されたことは極めてまれなケース。ドン・ルベルは過去に、ニューヨーク・タイムズの取材に対して「50年間の収集活動で5000点以上の作品を集めたが、手放したのは20点にも満たない」と語っている

この作品は、昨年12月に開催されたアート・バーゼル・マイアミの期間中、ルベル・ファミリーが運営するルベル美術館で展示されていた。(翻訳:編集部)

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