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日本からは長谷川愛が参加! 新進気鋭の女性作家を紹介するNMWA「Women to Watch 2024」が開幕

ワシントンD.C.の美術館、National Museum of Women in the Arts(NMWA)が3年ごとに開催している国際グループ展「Women to Watch」が2024年も現地時間4月14日に開幕した(8月11日まで)。女性による作品のみを収集する同館が世界各国の注目のアーティストを紹介するこの展示に、日本人アーティストとして初めて長谷川愛が出展している。

長谷川愛《(Im)Possible Baby, Case 01: Asako & Moriga》(2015年)。Digital photo prints and videos, dimensions variable; Courtesy of the artist; Photo courtesy of the National Museum of Women in the Arts

世界で初めて女性アーティストによる作品のみを収集する美術館として開館した、ワシントンD.C.のNational Museum of Women in the Arts(NMWA)。同館は2008年から3年に一度、各国の女性アーティストたちを世界に向けて紹介することを目指す展覧会シリーズ「Women to Watch」を開催している。

2023年のリニューアル後初となる2024年の展覧会のタイトルは、「New Worlds: Women to Watch 2024」。混迷を極める現代において、アーティストたちが過去や現在、未来をどう見つめ、その先にどのような世界を描き出そうとしているかを紹介する意図が込められた。出身も文化もさまざまな28人のアーティストが選出され、絵画、彫刻、写真、インスタレーション、映像、テキスタイルなどメディウムもさまざまな作品を展示している。

「Women to Watch」について特筆すべきは、アーティストの選出方法だ。NMWAはアメリカ内外に28の委員会を設立しており、この委員会が各地域のキュレーターとともにショートリストを作成。このリストをもとに、NMWAのキュレーターが作家と作品を選出していく仕組みになっている。2021年には日本でも委員会が設立され、その推薦アーティスト5人のなかから最終的に長谷川愛が選ばれた。

NMWA館長のスーザン・スターリングはこうコメントしている。

「『New Worlds』に参加しているアーティストたちは、今日の現状に疑問を投げかけ、問題を多角的な視点から見ることをうながし、多くの人が想像しうる未来とは異なる未来を描いていることが評価されています」

以下、ジェンダーや環境、生命倫理、移動やアイデンティティなど、それぞれの視点で探究する本展の出品作品の中から一部を厳選して紹介する。

長谷川愛《(Im)Possible Baby, Case 01: Asako & Moriga》(2015年)

同性カップルの遺伝子データをベースに架空の子どもの姿や性格をシミュレーションし、家族写真として視覚化した作品。将来、技術的にはありえるかもしれない子どもたちの存在を通して、生命倫理の議論を一般に開く試みだ。長谷川愛《(Im)Possible Baby, Case 01: Asako & Moriga》(2015年)Digital photo prints and videos, dimensions variable; Courtesy of the artist

マリーナ・バルガス《Intra-Venus》(2019~20年)

マリーナ・バルガスはスペインの彫刻家。《Intra-Venus》(2019~20年)は、乳房切除とがん治療を経た自身の身体をモデルにした裸婦像だ。古典的な彫刻のかたちをとることで、芸術における女性像の理想化や男性性を過度に追い求める姿勢に疑問を投げかけている。《Intra-Venus》(2019~20年)Carrara marble, 77 ½ x 26 ¾ x 26 in.; Courtesy of the artist; Photo courtesy of the National Museum of Women in the Arts

フランシスカ・ロハス・ポールハンマー《Chakana-Drone 1 from Universalis Cosmographia (detail)》(2023年)

作品のモデルは、出身地であるチリの小さな村、キンチャマリで何世代にもわたってつくられてきた女性型の置物「ギタレーラ(Guitarrera)」。通常その手に持たされているギターをライフル銃に置き換えることで、伝統的に男性のものとされていた軍事の領域に女性性を加える試みだ。フランシスカ・ロハス・ポールハンマー《Chakana-Drone 1 from Universalis Cosmographia (detail)》(2023年) Glazed ceramic and copper, approx. 10 x 10 x 4 in.; Courtesy of the artist; Photo courtesy of the National Museum of Women in the Arts

メリル・マクマスター《Lead Me to Places I Could Never Find on My Own I》(2019年)

マクマスターは先住民族にルーツをもつカナダの写真家。かつて祖先たちが奪われた緑豊かな土地を取り戻した架空の世界線を、セルフポートレートを通じて描いている。メリル・マクマスター《Lead Me to Places I Could Never Find on My Own I》(2019年) Digital C-print, 40 x 60 in.; Courtesy of the artist, Stephen Bulger Gallery, and Pierre-François Ouellette art contemporain; © Meryl McMaster

ノエミ・グーダル《Below the Deep South》(2021年)

フランス出身、イギリス在住のノエミ・グーダルによる映像作品《Below the Deep South》(2021年)のワンシーン。ワンテイクで撮影された短編映像で、世界の生態系が直面する危機と終わりのない地球の変容の両方を表現している。Video 11 min.; Courtesy of the artist

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