今週末に見たいアートイベントTOP5:笹原晃平らが表現する「社会的身体」、8人の現代作家が三島由紀夫の遺作小説に挑む

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

「体を成すからだをなす– FRAC Grand Large収蔵作品セレクション」展示風景(2025年) © Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
体を成す からだをなす – FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展(銀座メゾンエルメス ル・フォーラム)より、「体を成すからだをなす– FRAC Grand Large収蔵作品セレクション」展示風景(2025年) © Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

1. チェン・フェイ展「父と子」(ワタリウム美術館)

会場風景  Photo: Osamu Sakamoto
会場風景  Photo: Osamu Sakamoto
会場風景  Photo: Osamu Sakamoto

中国のアーティストが見つめた「繋がり」と「自身」

1983年中国山西省に生まれ、現在は北京を拠点に活動するアーティスト、チェン・フェイの個展。チェンは自伝的なアプローチを用いて親しい知人との関係を描き、その中に中国人画家としてのアイデンティティについての物語を織り交ぜている。

本展は2022年から2025年にかけて制作された新作絵画15点に加え、高さ7メートルの壁画、インスタレーション、ドキュメントなどがサイトスペシフィックにキュレーションされた空間で展示される。展覧会の出発点は、ナチス政権下に生きたドイツの著名な漫画家E.O.プラウエンが制作した名作『Vater und Sohn(父と子)』。プラウエンの物語に共鳴するように制作された作品は、夫と妻、父と子といった家族関係や、同僚や友人を含む社会的な力関係を掘り下げており、画家自身の芸術家としての職業的イメージについての思索にも及んでいる。

チェン・フェイ展「父と子」
会期:7月3日(木)~10月5日(日)
場所:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
時間:11:00~19:00
休館日:月曜(8月11日、9月15日を除く)


2. ジュリアン・シャリエール「ミッドナイト・ゾーン」(ペロタン東京)

Caption: View of the exhibition “Midnight Zone" at Perrotin Tokyo. Photo by Osamu Sakamoto. Courtesy of the artist and Perrotin.
Caption: View of the exhibition “Midnight Zone" at Perrotin Tokyo. Photo by Osamu Sakamoto. Courtesy of the artist and Perrotin.
Caption: View of the exhibition “Midnight Zone" at Perrotin Tokyo. Photo by Osamu Sakamoto. Courtesy of the artist and Perrotin.

「深海の世界」から私たちの暮らしを問う

スイス系フランス人アーティスト、ジュリアン・シャリエールは火山のクレーターや氷河地帯、放射能汚染地域といった地球上で最も過酷な地域への探検から作品のインスピレーションを得ており、これらの作品を通して私たちが自然界をどう想像し、どのように住まうのかを問い続けている。

本展のタイトルは、太陽からの光子が到達できないほど深い場所を意味する。海底をゆっくりと降下しながら、魚や鮫の大群がひしめく中を進んでいく映像で構成された《Midnight Zone》は、観る者を海洋の深淵への幻視的な旅にいざなう。一方で立体作品《A Stone Dream of You》は、溶岩が生み出した物体がこの奇怪な世界の住人さながらに潜み、深海に適応した生物の不気味な静寂をたたえながら深い思索へと誘う。

ジュリアン・シャリエール「ミッドナイト・ゾーン」
会期:7月9日(水)~8月30日(土)
場所:ペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9)
時間:11:00~19:00
休館日:日月祝


3. TEXTURE PUNK(PARCEL)

Teppei Kaneuji, White Discharge(Plastic Bottle)#2, 2003 Plastic Found Objects, Pigment, Resin, size variable Photo: Riko Takagi
Teppei Kaneuji, Sea and Pus (Photograph of Monkey #4), 2006 Framed Page of Encyclopedia, Collage, 30.5×27.5×3.5cm Photo: Riko Takagi
Chihiro Mori, Rotten Sign (Chewing Gum), 2005 paint on signboard and clay, 95.5×90×7cm Photo: Riko Takagi

大阪で起こった幻のダイナミズムを追う

2000年代初頭、大阪を中心に現代アートの独自のダイナミズムが巻き起こった。そしてアート、ファッション、音楽が混沌としながらも交差し、刺激し合うことで新しい表現が生まれる土壌が形成されていった。本展は、当時このうねりの渦中にいた作家たちを集め、その熱気が何だったのかを検証。1990年代後半から2000年代初頭に生み出された作品を通じて現代に蘇らせる。

企画は金氏徹平。展示作家は金氏に加えて森千裕、コズミックワンダー、∈Y∋、今村源、木村友紀、伊藤存。金氏は、同じ時代と感覚を共有していると思える友人と相談しながら、私的な視点で、アーティストとしての自我を形成していった時期に周囲に存在したり影響を受けたりした作品やアーティストで展覧会とライブを作りたいと思ったと語る。関西全体に及んだダイナミズムの熱気を肌で感じてもらいたい。

TEXTURE PUNK
会期:7月12日(土)~8月24日(日)
場所:PARCEL(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL 1F)
時間:14:00~19:00
休館日:月火祝、8月13日~17日


4. 永劫回帰に横たわる虚無 三島由紀夫生誕100年=昭和100年(GYRE GALLERY)

三島由紀夫の遺作小説に現代美術家が挑む

三島由紀夫と彼の作品に焦点を当てた展覧会。フランスの哲学者ロラン・バルトと三島由紀夫の双方が捉えた日本の「空虚」を前提にして、三島の遺作小説『豊饒の海』とデビュー作『仮面の告白』をテーマに次世代の表現で逆照射を試みる。意味から解き放たれた、中心が無い空虚な戦後美術史のある風景を、三島の世界観と重ね合わせながら露わにしていく。

企画は飯田高誉。展示作家は中西夏之、ジェフ・ウォール、杉本博司アニッシュ・カプーア、池田謙、森万里子、平野啓一郎、友沢こたお。国内外の現代美術家の作品によって、三島由紀夫のこの壮大な小説のテーマ「阿頼耶識=相関主義」の一端を浮かび上がらせる。

永劫回帰に横たわる虚無 三島由紀夫生誕100年=昭和100年
会期:7月15日(火)~9月25日(木)
場所:GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
時間:11:00~18:00
休館日:8月18日


5. 体を成す からだをなす – FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展(銀座メゾンエルメス ル・フォーラム)

「体を成すからだをなす– FRAC Grand Large収蔵作品セレクション」展示風景(2025年)
© Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
「体を成すからだをなす– FRAC Grand Large収蔵作品セレクション」展示風景(2025年)
© Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
「体を成すからだをなす– FRAC Grand Large収蔵作品セレクション」展示風景(2025年)
© Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
「体を成すからだをなす– FRAC Grand Large収蔵作品セレクション」展示風景(2025年)
© Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

13人の作家が表現する「社会的身体」

エルメス財団がフランス・ダンケルクの現代美術地域コレクションFRAC Grand Largeと共同で開催するグループ展。本展では、1960年代以降のフランスおよび国際的な現代美術とデザインのさまざまな潮流を紹介するFRAC Grand Largeの公共コレクションから、「社会的身体」をテーマに選ばれた13人のアーティストによる1973年から2025年までの作品を展示する。現代社会に潜むヒエラルキーやジェンダーといった今日的な問題が映し出される作品群を通じて、アートが日常や秩序の可変性をもたらすプロセスを浮き彫りにする。

展示作家はアバケ/オバケ、アンドレ・カデレ、ヘレン・チャドウィック、ジェシー・ダーリング、クリスティーヌ・ドゥクニット、ジェシカ・ダイアモンド、ポーリーヌ・エスパロン、タレク・ラクリッシ、ポール・マへケ、ブルーノ・ムナーリ、ネフェリ・パパディムーリ、笹原晃平、アナ・トーフ。ヘレン・チャドウィックのジェンダーを問う《In the kitchen》や、アンドレ・カデレの《丸い木の棒》などの1970年代を代表する写真作品から、ネフェリ・パパディムーリの映像作品《森になる》、大阪在住の笹原晃平による傘を用いたインスタレーションも展示され、多様な視点や行為が交差する場を提供する。

体を成す からだをなす – FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展
会期:7月19日(土)~10月12日(日)
場所:銀座メゾンエルメス ル・フォーラム(東京都中央区銀座5-4-1)
時間:11:00~19:00(入場は30分前まで)
休館日:水曜日

あわせて読みたい