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カニエ・ウエストが「イジメ」と題した最新作で森山大道とコラボ! 東京で制作したジャケットを公開

ラッパーのYe(イェ)ことカニエ・ウエスト東京に滞在していると報じられて久しいが、10月23日、ウエストは日本の写真界の巨匠、森山大道を起用した最新アルバム『Bully』のジャケットをSNSで公開した。

2024年2月23日、イタリア・ミラノ で開催されたマルニの 2024-2025年秋冬レディースコレクションのショーに出席したカニエ・ウェストとビアンカ・センソリ。Photo: Arnold Jerocki/Getty Images

カニエ・ウエストとして知られているラッパー、Ye(イェ)は10月23日、自身のインスタグラムで日本の写真家、森山大道が手掛けた最新アルバム『Bully』のジャケット写真を公開した。

写真は、歯を見せて笑うウエストの顔を、森山作品独特の粗くぼやけた画面で捉えている。ウエストの歯には、アクセサリー「グリルズ」が装着されており、中央が黒く塗りつぶされている。その意味について、イタリアのデジタルマガジンOutpumpは、日本で古代から明治期まで存在した風習「お歯黒」をイメージしていると解釈した。お歯黒は主に既婚女性が行っており、英国歯科ジャーナル誌によるとその原料は「酢酸と鉄粉を野菜や茶から抽出したタンニンで混ぜ合わせた」もので、女性たちは数日おきに剥がして塗ってを繰り返す。当時は虫歯が多かったため歯の粗を隠すことが出来、なおかつ口腔環境の衛生にも役立っていたという。

今回ウエストのジャケット写真を撮った森山大道は、1938年大阪生まれ。写真家の岩宮武二や細江英公のアシスタントを経て1964年に独立し、戦後の日本の変化と近代化が文化に与えた影響を捉え続けている。森山は1960年代から70年代にかけてハイコントラストや粗粒子画面の作風を確立し、「アレ・ブレ・ボケ」と形容され世界的な評価を得た。彼は、1974年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された「New Japanese Photography」展で注目を集め、2012年にはロンドンのテート・モダンで個展を開催。また2019年はハッセルブラッド国際写真賞を受賞し、11万ドル(現在の為替で約1700万円)相当の賞金と個展の開催権利が贈られた。

85歳になる森山は現在も旺盛に活動しており、2023年には、ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーで初となる回顧展を開催した。2024年10月には写真集『記録58号』を出版。現在は青山のAkio Nagasawa Gallery Aoyamaで出版記念展が行われている(11月30日まで)。

ウエストの最新アルバム『Bully』は、2024年2月にリリースされた『Vultures 1』、8月にリリースされた『Vultures 2』に続く、今年3枚目となるアルバム。アート好きとしても知られるウエストは、『Vultures 1』のティザー動画制作を映像作家のジョン・ラフマンに依頼し、Xで公開した。また、彼がアルバムで日本人アーティストをフィーチャーするのは、今回が初めてではない。2007年のアルバム『Graduation』と、2018年のラッパー、キッド・クーディとのコラボレーションアルバム『Kids See Ghosts』のジャケットは村上隆がデザインしている。

音楽ジャーナリストのトゥーレによると、ウエストは現在東京に滞在しており、『Bully』はホテルの一室でレコーディングされたという。一方で、ウエストと妻のビアンカ・センソリの不仲も噂されている。10月8日、Tokyo Weekenderは、ウエストがこの2週間センソリを伴わず行動しており、単独で新宿で開催された「プロレスリング・ノア」の試合を観戦し、渋谷のジャマイカンレストランGood Wood Terraceで食事をしたと報じている。(翻訳:編集部)

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