トランプ体制下で「排除」された彫刻をケネディ・センター元理事長が3億円超で「救済」

ケネディ・センターから突如撤去されたジョエル・シャピロの《Blue》を、同センター元理事長のデイヴィッド・ルーベンスタインが購入した。本作は今後、ルーベンスタインが理事長を務めるワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーの彫刻庭園で展示される予定だ。

ケネディ・センターのREACHに展示されていた《Blue》。2019年8月に撮影。Photo: Bill O'Leary/The Washington Post via Getty Images
ケネディ・センターのREACHに展示されていた《Blue》。2019年8月に撮影。Photo: Bill O'Leary/The Washington Post via Getty Images

9月2日、事前の説明なくケネディ・センターの敷地から撤去されたジョエル・シャピロの彫刻作品《Blue》(2019)に、新たな所有者が決まった。ニューヨーク・タイムズ紙によると、購入したのは実業家でワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー理事長を務めるデイヴィッド・ルーベンスタインで、今後は同美術館の彫刻庭園に展示される予定だ

ルーベンスタインは、ドナルド・トランプ大統領が理事会を自身に近い人物で固めるなど、ケネディ・センターの体制刷新を進めた2025年初頭まで同センターの理事長を務めていた。また、《Blue》が展示されていた増築棟「REACH」の建設にも多額の資金を拠出していた。

ルーベンスタインは、ジョエル・シャピロの遺産を管理するジョエル・シャピロ&エレン・フェラン財団から本作を購入しており、価格は200万ドル(約3億1200万円)を超えるとされる。数多くのミニマリズム彫刻を手がけたシャピロは、生前、《Blue》について「行動やリスク、パフォーマンス、エネルギーを表現し、何かが起こりそうな予感を称える作品です」と語っていた。

《Blue》が撤去された理由は明らかにされていないが、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、内部文書には、トランプ大統領による人事刷新後に「排除の対象とされた」ことを示す記述があったという。今回の撤去に対して娘のアイビー・シャピロはこう語る。

「父が生きていたら、自分の作品が撤去されたことにきっと動揺したと思います。父にとって《Blue》は、手がけたなかでも最も重要なコミッションワークのひとつで、喜びや自由、創造性を称える作品でした」

今回の撤去は、ケネディ・センターで作品を発表してきた他のアーティストたちにも衝撃を与えている。彫刻家のデボラ・バターフィールドは、《Blue》の解体が始まった翌日、US版ARTnewsに対して「打ちのめされている」と語った。バターフィールドが手がけたブロンズの馬《Milk River》は現在REACHに展示されているが、自作が次の撤去対象にはならないと考えている。ただし、こうした判断が他の作品や芸術表現に及ぶことには懸念を示し、こう述べた。

「この決定の背景には、徐々に広がる悪意を感じます。人々の考え方や、何を見るかまで支配しようとする動きは、本当に恐ろしいことです」

《Blue》の撤去をめぐっては、トランプ政権によるケネディ・センターの刷新が、運営体制だけでなく作品や施設そのものにまで及び始めたとの批判も出ている。アーティストやケネディ・センターの元職員らで構成されている抗議団体「Hands off the Arts」は、今回の撤去を「トランプの権威主義的傾向を示す最新の事例です」と非難し、ジョン・F・ケネディの「芸術はプロパガンダの一形態ではなく、真実の一形態だ」という言葉を引用した。同グループは9月18日、ケネディ・センターでデモを行う予定だという。

ルーベンスタインによる《Blue》の購入は、ケネディ・センターの今後をめぐる対立が続くなかで明らかになった。同センターの理事会は、トランプ大統領が主導する改修に伴い、施設を閉鎖する方針を議決している。ただし運営側は、REACHについては連邦法により故ケネディ大統領の記念施設として機能させることが義務付けられているとして、閉鎖中も開放し続ける案を提示しているという。

一方、ルーベンスタインに代わって自ら理事長に就いたトランプ大統領は、建物に自身の名前を加える計画も進めてきた。施設の閉鎖とトランプの名前の掲示はいずれも連邦判事によって一時的に差し止められている。運営側は現在、閉鎖の実施に加え、議会から改修資金を確保するうえでトランプ大統領が果たした役割を称えるとして、その名前をファサードに掲げることについても、裁判所の許可を求めている。

from ARTnews

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