トランプ政権、「差別禁止法違反」でスミソニアンへの圧力強める──政府支援打ち切りを示唆
トランプ政権がスミソニアン協会への新たな圧力として、裁量補助金の打ち切りを示唆した。多数の博物館・美術館や研究機関などを擁する同協会は、大統領の2期目就任当初から「反米的」だとして非難の矢面に立たされ続けている。

ドナルド・トランプ米大統領は、スミソニアン協会が連邦の差別禁止法に違反しているとして、裁量補助金を打ち切る姿勢を見せている。ワシントン・ポスト紙の報道によると、8月28日にダグ・バーガム内務長官とヴィンス・ヘイリー国内政策担当主任がスミソニアン協会の理事会宛てに送った書簡で、同協会が政府機関からの支援を失う可能性があると警告したという。スミソニアン協会の資金の大半は連邦議会から拠出されており、その額は年間10億ドル(約1600億円)を超える。
バーガムとヘイリーの書簡にあるように、ホワイトハウスの国内政策会議は最近、「アメリカの物語を守る:スミソニアン国立アメリカ歴史博物館におけるイデオロギー的支配はいかにして我われの遺産を消し去ろうとしているか」と題された報告書を発表した。これを受け、トランプ大統領は「スミソニアン協会への信頼回復」を掲げた大統領令を発令。「スミソニアン協会(および国立アメリカ歴史博物館)の現在の指導部には、誠実さと感謝の念をもってアメリカの物語を伝えることを期待できない」と断じた。
同書簡によると、国立アメリカ歴史博物館は新たな「解説計画」を採用。あらゆるテーマを、人種とアイデンティティ、ジェンダーとセクシュアリティ、気候変動、移民、経済的不平等、技術革新、ナショナリズムとグローバリズムといった「現代の核心的な課題」と結びつけるよう職員に指示した。さらに、「それを満たさない対応は、現代社会との関わりを重視するという我われの責務を放棄することに等しい」と述べている。
上記の報告書ではまた、同博物館が「不法移民や国境の開放を正当化しようとしている」ことに加え、「生物学的な男性であっても女性になり得るとし、女性スポーツへの参加を認めるべきだという見解を提示しようとしている」との批判が記されている。
この件のコメント要請に対し、同博物館は直ちに回答しなかった。また、スミソニアン協会はコメントを控えるとした。
バーガムとヘイリーの書簡はまた、スミソニアン協会は「行政省庁や各機関からの支援を受けている」と指摘。「それらの省庁や機関は、現在の指導体制下のスミソニアン協会を支援し続けること(展示用資料の貸し出しや調達プロセスの実施、裁量的補助金の拠出など)を、良心に照らして容認することはできない」と付け加えている。
同書簡ではさらに、人種や民族、その他保護対象となる特性に基づいて機会や資金を配分したことで、「敵対的な職場環境の醸成を含め、連邦の差別禁止法に対する重大な違反を招く組織文化が形成された可能性がある」と主張している。バーガムとヘイリーはまた、スミソニアン博物館の文化がアメリカ博物館同盟(AAM: American Alliance of Museums)を「堕落させた」とも主張しているが、その具体例は挙げられていない。
博物館を代表する全米および国際団体はスミソニアンを支持
約2万2000の博物館・美術館などを代表する非営利団体のAAMは、広報担当者によるUS版ARTnews宛ての電子メールで、「本団体は、当該書簡における主張を退けるとともに、スミソニアンおよびアメリカの博物館の独立性を支持する従来の声明を重ねて表明します」と述べている。
一方、バーガムの事務所は、具体的にどの行政機関がスミソニアンとの関係を断つのか、あるいはスミソニアンがどのようにAAMを腐敗させたのかという具体的な点に関するUS版ARTnewsのコメント要請に対し、直ちには回答しなかった。ホワイトハウスもコメント要請に対してヘイリーの声明を送付するにとどまり、従来の立場を改めて示したのみで具体的な質問には回答していない。
2期目就任から2カ月後の2025年3月、トランプ大統領は自身が「反米イデオロギー」と呼ぶスミソニアン協会の問題に対し、「アメリカの歴史に真実と良識を取り戻す」とする大統領令を発令した。ただし、スミソニアン博物館は多額の公的資金の提供を受けているものの、1846年の設立時に連邦議会が定めた通り、政府の直接的な管理下にはない。
このように、トランプ政権のスミソニアンへの介入は就任当初から続いている。直近では国立アメリカ歴史博物館が7月に、「不正確な情報」が展示内容に含まれていることを示す掲示板を設置するよう命じられた。また、同館のアンセア・ハーティグ館長が同じ7月に開かれた2度の議会公聴会で、「あなたは『アメリカ・ファースト』の立場なのか」「アメリカを愛しているのか」などの質問を浴びせられ、厳しい追及を受けている。
こうした中、AAMがスミソニアンに対する政権の圧力を非難する声明を7月に発表した点は注目される。また、AAMと並ぶ主要な国際NGOである国際博物館会議(ICOM)も、8月にスミソニアンへの「揺るぎない支持」を示す声明を発表している。(翻訳:石井佳子)
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