クレス・オルデンバーグの「世界最大のガーデニングスコップ」彫刻を米大手メディアが売却
日本でも東京ビッグサイトの巨大ノコギリ彫刻などでおなじみのクレス・オルデンバーグ。彼と妻のコーシャ・ヴァン・ブリュッゲンが手がけ、アメリカ・アイオワ州デモインのランドマークとして知られる巨大なスコップ彫刻の売却が発表された。

8月22日、アメリカの大手メディア企業であるピープル社が、クレス・オルデンバーグとコーシャ・ヴァン・ブリュッゲンによる高さ7メートルの巨大彫刻《Plantoir(プラントワール)》(2001)の売却を発表した。同社は、7月末に旧社名のドットダッシュ・メレディスから社名変更をしたばかりで、第一報を伝えたデモイン・レジスター紙に次のような声明を寄せている。
「このほど、社屋の敷地の入り口近くにあるアートインスタレーション、《Plantoir》の売買が成立しました。我われはまず、地元の団体に売却をオファーし、その後、相当額を提示した州外の買い手への売却に同意しています。作品は9月末までに新しいオーナーに移管される予定です」
具体的な購入者や移設先、売却価格は伏せられており、作品の購入機会を提供された地元の団体についても、ピープル社はデモイン・レジスター紙に詳細を明かさなかった。
1トン強のアルミニウム、繊維強化プラスチック、スチールでできた《Plantoir》は、時速193キロ(秒速50メートル以上)の暴風にも耐えられるように設計されているといい、マイアミを拠点とするワールド・レコード・アカデミーによって世界最大のガーデニングスコップに認定されている。
デモインの旧メレディス社の敷地に設置されたのは2002年で、アメリカ有数の生活情報誌「ベター・ホームズ・アンド・ガーデンズ」の発行元である同社は、このとき創立100周年を記念して《Plantoir》を購入した。グレーター・デモイン・パブリック・アート財団によると、旧メレディス社の購入前、この作品はメトロポリタン美術館のルーフガーデンに展示されていた。
巨大スコップの彫刻は、デモインで2つ目のオルデンバーグとヴァン・ブリュッゲンによるパブリックアートだ。初めて設置されたのは、ダニエル・デフォーの小説『ロビンソン・クルーソー』に着想を得た《Crusoe Umbrella(クルーソーの傘)》で、グレーター・デモイン市民センターの依頼で1979年に公開された。作品は耐候性のスチール製で、ポリウレタンエナメルで塗装されている。
《Plantoir》には別バージョンがあり、現在ポルトガルのポルトにあるセラルヴェス財団の庭園に置かれている。また、青く塗られた《Plantoir, Blue(プラントワール、ブルー)》」は、2022年にニューヨークのロックフェラー・センター前のチャネル・ガーデンで期間限定で展示された。(翻訳:石井佳子)
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