ニューヨークで必見のパブリックアート20選──9.11を生き延びた球体、イサム・ノグチの「サイコロ」、唯一のキース・ヘリング彫刻など

ニューヨークの街角では、著名アーティストが手がけた数々のパブリックアートに出会うことができる。新しいワールド・トレード・センターや華やかなミッドタウン、活気あるブルックリンなどで存在感を発揮する作品をリストアップした。

ニューヨークのクーパー・スクエアに設置されたトニー・ローゼンタールの《Alamo》(1967)を回そうとする通行人(1974年10月10日撮影)。Photo: Allan Tannenbaum/Getty Images

パブリックアートの歴史は、人類の文明と同じくらい古い。長い年月の間に無数のモニュメントや彫像が建てられてきた。パブリックアートというと、期間限定の屋外インスタレーションを思い浮かべる人もいるかもしれないが、ニューヨークには恒久的に設置された20世紀半ば以降のモダニズムや現代アート作品が数多くある。その中から20の重要作品を紹介する。

1. トニー・ローゼンタール《Alamo》(1967)

トニー・ローゼンタール、《Alamo》(1967) Photo: Deb Cohn-Orbach/UCG/Universal Images Group via Getty Images.

設置場所:アスター・プレイス

ニューヨークで最も有名なパブリックアートといえば、アスター・プレイス・キューブとして知られる《Alamo》だろう。名門私立大学クーパー・ユニオンの向かいに設置されたのは、もう55年以上も前になる。立方体の1つの頂点でバランスを取っているこの作品は、一時的なインスタレーションの予定だったが、イースト・ヴィレッジの近隣住民に愛されたことで、恒久的なパブリックアートとしてアスター・プレイスに残されることになった。一辺が約4.6メートルの大きさで、重さは1トンもあるが、内部に心棒があるため、数人で押せばなんとか回転させることができる。これが人気を得た1つの理由だが、もともとは鑑賞者が参加できるインタラクティブなものを意図していたわけではない。作者のトニー・ローゼンタールは、回転させて位置を決めたら固定するつもりだったが、なぜかそれは実施されなかった。

この作品は、黒く塗られた錆びにくいコールテン鋼を用い、表面には幾何学的なモチーフが刻まれている。ローゼンタールの妻は、アーチ形の部分からテキサスにあるアラモ伝道所のドアを思い浮かべたといい、それが作品名の由来になった。なお、《Alamo》は過去2回、2005年と2016年にメンテナンスのためアスター・プレイスを離れている。

2. イサム・ノグチ《Red Cube》(1968)

映画『幸せはパリで』(1969)に登場した、マリン・ミッドランド・ビル広場のイサム・ノグチ作品《Red Cube》。Photo: CBS via Getty Images

設置場所:140ブロードウェイ(旧マリン・ミッドランド・ビル)

140ブロードウェイ前の広場で金融街のランドマークになっているイサム・ノグチの《Red Cube》は、《Alamo》と同じ巨大な立方体だが、2つの作品には大きく異なる点もある。1つは、ノグチの作品は周囲の摩天楼に呼応するように縦に引き延ばされたひし形状になっていること。もう1つは、《Red Cube》の中心には穴があり、背後の高層ビルへと視線を導くファインダーの役目を果たしている点だ。その華やかな赤の色彩とダイナミックな構成は、ビルの格子状のガラスファサードとの鮮やかなコントラストを生み出している。

近くにあるニューヨーク証券取引所のけたたましいカジノのような雰囲気と、高額投資のリスキーな性質にちなんで、ノグチはこの作品を転がるサイコロと呼んだ。

3. ジャン・デュビュッフェ《Group of Four Trees》(1969-72)

ジャン・デュビュッフェ《Group of Four Trees》(1969-1972) Photo: Eye Ubiquitous/Universal Images Group via Getty Images.

設置場所:28リバティ・ストリート(旧ワン・チェース・マンハッタン・プラザ)

ウォール街近くにあるもう1つのモニュメント《Group of Four Trees》は、28リバティ・ストリートの旧チェース銀行前の広場にある。作者は、1940年代後半にアール・ブリュットという言葉を生み出したフランス人アーティスト、ジャン・デュビュッフェ。アール・ブリュットとは、障がい者など正規の美術教育を受けていない人々による自由で無垢な創作を示すもので、彼らの夢想的な表現はデュビュッフェの作品に大きな影響を与えた。そうした影響の下で制作された作品の1つである《Group of Four Trees》は、一見3Dアニメのようで、黒い輪郭線に縁取られた白い樹木の幽霊が絡み合っている場面を思わせる。

この作品は、チェース・マンハッタン銀行の元会長デイヴィッド・ロックフェラーの依頼で1969年から72年にかけて制作され、アルミニウムとスチールでできた骨組みと、ファイバーグラスや樹脂、ポリウレタン塗料などの素材が用いられている。大きさは約11 × 12 × 10メートル、重さは25トンと、公開された1972年当時はパブリックアートとして最大のものだった。

4. チャールズ・レイ《Adam and Eve》(2023)

チャールズ・レイ《Adam and Eve》(2023) Photo: Brookfield Properties

設置場所:2マンハッタン・ウェスト

ニューヨークで最も新しいパブリックアートの1つである《Adam and Eve》は、ハドソンヤードの再開発地区から10番街を挟んだ向かいにそびえ立つ真新しいビル、2マンハッタン・ウェスト(9番街385番地)の前に佇んでいる。この作品(個人コレクションからの長期貸し出し)は、旧約聖書に書かれた原罪の物語の主人公アダムとイブを、自分たちが作り出した混乱にもめげず生きてきた老夫婦として描いている。ロサンゼルスを拠点とする作者のチャールズ・レイは、不気味の谷(*1)をうまく避けるようなアプローチの具象彫刻で知られる。等身大よりも大きなアダムとイブの像も細部まで写実的に作られているが、アルミニウムのつややかな表面がリアルになりすぎるのを抑えている。


*1 ロボットの外観が人間的になるにつれ、親しみやすさが増していくが、あまりに人間に近づきすぎると逆に不気味に感じるようになる現象。さらに人間に近づくと、親しみやすさは再び上昇するとされる。

レイは2人の像を、芸術家肌の老人、おそらくアーティスト夫婦として描いている。ベンジャミン・フランクリンのように肩まで髪を伸ばしたアダムと、無造作にスカーフを結んで座っているイブは、エデンの園から追放された後、ギャラリーのオープニングパーティに迷い込んだのかもしれない。

5. ルイーズ・ネヴェルソン《Shadows and Flags》(1977)

ルイーズ・ネヴェルソン《Shadows and Flags》(1977) Photo: Bill Wassman/Gamma-Rapho via Getty Images

設置場所:ルイーズ・ネヴェルソン広場

現代彫刻の先駆者で、「黒の女王」とも呼ばれるルイーズ・ネヴェルソン。彼女は、男性中心だった第2次大戦後のニューヨークのアートシーンで成功を収めた稀有な女性アーティストで、中でも男性的傾向が強い彫刻の分野でそれを成し遂げている。ネヴェルソンは抽象的なオブジェを収めた巨大な棚のような立体作品で知られるが、廃品や古い機械部品を用いて制作された《Shadows and Flags》も、そうしたアプローチを反映している。黒く塗られたこの作品は、高さ6~12メートルの円柱を中心に組み立てられており、それぞれの円柱はそよ風にはためく旗を連想させる曲線的なパーツを支えている。

《Shadows and Flags》は、1977年に金融街のレジオン・メモリアル・スクエア(リバティ・ストリート10番地)に設置されたが、翌年この場所はルイーズ・ネヴェルソン広場に改名された。これはニューヨークで初めてアーティストに与えられた栄誉だった。また、元は7体の彫刻で構成されていたが、2007年にトラックに衝突された1体は永久撤去となっている。

6. フランク・ステラ《Jasper’s Split Star》(2017)

フランク・ステラ《Jasper’s Split Star》(2017) Photo: Beata Zawrzel/NurPhoto via Getty Images

設置場所:7ワールド・トレード・センター

2021年、フランク・ステラの《Jasper’s Split Star》が、以前ジェフ・クーンズの「バルーン・フラワー」シリーズの作品が置かれていた7ワールド・トレード・センターの噴水の中心に設置された。12角形の星を膨れ上がらせたようなこの作品は、半分はシルバーグレーに塗装された面で覆われ、もう半分は鮮やかな色に塗られた格子状の構造でできている。《Jasper’s Split Star》は、ステラの初期作品《Jasper’s Dilemma》を彫刻的に再現したものだ。後者は2枚組の同心正方形の絵画で、一方にはさまざまな色彩が使われ、もう一方はグレースケールで描かれている。55年の隔たりがある2つの作品は、どちらもジャスパー・ジョーンズへのオマージュとして制作され、ジョーンズの「色を使えば使うほど、よりグレーに見えてくる」という言葉に着想を得ている。

このパブリックアートで、ステラはグラウンド・ゼロへのカムバックを果たした。かつてのワールド・トレード・センターには、彼の絵画作品が2点飾られていたが、9.11同時多発テロでビルとともに破壊されている。

7. ヨーゼフ・ボイス《7000 Oaks》(1982-2021)

ヨーゼフ・ボイス《7000 Oaks》(1982-2021) Photo: Johannes Schmitt-Tegge/picture alliance via Getty Images

設置場所:チェルシー

ドイツの伝説的なアーティスト、ヨーゼフ・ボイスによる屋外インスタレーション《7000 Oaks》は、10番街と11番街の間の西22番地に、さまざまな種類の木(マメナシ、コアメリカエノキ、イチョウ、エンジュ、ケヤキ、フユボダイジュ、アメリカガシワ、スズカケノキ、サイカチなど)と、高さ約1.2メートルの玄武岩のゴツゴツした柱を一定の間隔で設置したもの。ディア芸術財団が支援したこのプロジェクトは、もともと1982年のドクメンタで行われたアートアクションで、ドイツのカッセルに7000本の樫の木を植えようというものだった。

ボイスは、環境や社会問題に変化を起こそうという世界的な取り組みの一環として、このシリーズを世界中に展開するつもりだったという。計画は1986年のボイスの死で頓挫したが、その2年後にディア芸術財団は、22番街の西548番地にある財団の建物前に5対の木と岩を設置し、2021年までに33対を各所に追加している。

8. マーク・ディ・スヴェロ《Joie De Vivre》(1998)

マーク・ディ・スヴェロ、《Joie De Vivre》(1998) Photo: Werner Bayer

設置場所:ズコッティ・パーク

《Joie De Vivre》は、2つの三脚をその頂点で垂直につなぎ合わせたような抽象的な立体作品。「生きる喜び」を意味する作品タイトル、鮮やかな赤い色彩、そして両腕を空高く掲げた人物を思わせるそのフォルムは、まさに生への讃歌を表しているようだ。高さ21メートルを超えるこの作品は、以前はホランド・トンネル・ロータリー近くのセント・ジョンズ・パークにあったが、2006年6月にブロードウェイとシダー・ストリートの交差点に近いズコッティ・パークに移された。

ズコッティ・パークは後に、2011年のオキュパイ・ウォール・ストリート運動の拠点として有名になった。この運動は、2007年から2008年の金融危機の収拾策として連邦政府が銀行などを救済したことに端を発する抗議行動で、そのときには、ある男が《Joie De Vivre》に登り、警察に強制排除されるまで数時間もそこに留まるという事件が起きている。

9. キース・ヘリング《Figure Balancing on Dog》(1989)

キース・ヘリング《Figure Balancing on Dog》(1989) Photo: Richard Levine/Corbis via Getty Images

設置場所:ステート・ストリート17番地

キース・ヘリングの常設パブリックアートは、ニューヨークのあちこちで見ることができる。その多くは壁画作品で、最もよく知られているのは、1980年代にコカインの使用が広まったときにハーレムのハンドボール会場の壁に描かれた《Crack is Wack》(1986)だ。しかし彫刻作品は、バッテリー・パークの向かい、ステート・ストリート17番地にある《Figure Balancing on Dog》1点のみ。鉄板をつなぎ合わせ、消防車のような赤色に塗られたこの作品は、へリングの特徴である漫画のような輪郭が立体的に再現され、彼らしい気まぐれな雰囲気をまとっている。

聖エリザベス・アン・シートン教会の東側の角に設置されているこの作品は、ビルを挟んで反対側に置かれていたもう1つのへリング作品《Two Dancing Figures》と対になるものだったが、こちらは企業のロゴを設置するために2018年3月に撤去されてしまった。

10.アニッシュ・カプーア《Untitled》(2022-23)

アニッシュ・カプーア、《Untitled》(2022-23) Photo: Michael M. Santiago/Getty Images

設置場所:レオナード・ストリート56番地

アニッシュ・カプーアが制作した豆の形を思わせるこの彫刻作品は、シカゴのミレニアム・パークにある2006年のカプーア作品《Cloud Gate》(通称The Bean:マメ)とよく似ていることから、ニューヨーク・ビーン(あるいはミニ・ビーン)と呼ばれている。シカゴの《Cloud Gate》は市民に愛され、その誇りを体現する存在だが、ニューヨークの作品は高級コンドミニアムに付加価値を与えるハイカルチャーな「設備」と言ってもいいだろう。トライベッカ地区のレオナード・ストリート56番地にあり、その形状からジェンガ・タワーと言われる高層コンドミニアムは、スイスを本拠地とする世界有数の建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロンの設計で、著名アーティストのパブリックアートが建築の一部になっていることをセールスポイントにしている。

コンドミニアムは2017年にオープンしたが、ビルに潜り込んでいるように見えるカプーアの彫刻のほうは2023年にやっと設置されている。このニューヨーク・ビーンがお披露目されるや否や、輪郭や鏡面仕上げの表面がシカゴにある姉妹作品に似ていると話題になり、インスタグラムにその写真が溢れかえった。

11. グザヴィエ・ヴェイヤン《Jean-Marc》(2012)

グザヴィエ・ヴェイヤン《Jean-Marc》(2012) Photo: John Wisniewski

設置場所:6番街/53丁目

6番街と西53丁目の北東の角に立つ謎めいた人物──等身大よりも大きいこの全身像は、イブ・クラインを象徴する色であるインターナショナル・クライン・ブルーに似た色合いのセルリアンブルーに塗られている。作者のグザヴィエ・ヴェイヤンは、ニューヨークではまだそれほど馴染みがないが、母国フランスでは高い評価を受けているアーティスト。その作風はネオモダンのミニマリズムとでもいうべきもので、平面をプリズム状に組み合わせたキュビスム的造形が特徴だ。ヴェイヤンの友人で、同じフランス人アーティストのジャン=マルク・ビュスタモントをモデルにした《Jean-Marc》も、そうしたスタイルで制作されている。

ヴェイヤンは、3Dで対象物をスキャンしたのちに、工業用ポリウレタンやアルミニウム、あるいは《Jean-Marc》のようなステンレス鋼からそれを削り出すという手法を用いる。これまでヨーロッパやアジアで数多くの公共彫刻を制作してきたヴェイヤンだが、ニューヨーク近代美術館に近い6番街1330番地に設置されたこの作品は、彼にとってニューヨークで初めてのパブリックアートとなる。

12. ジョアン・ミロ《Oiseau Lunaire (Moon Bird)》(1946-49、66年に拡張)

ジョアン・ミロ《Oiseau Lunaire (Moon Bird)》(1946-49、1966年に拡張) Photo: John Lamparski/Getty Images

設置場所:ソロー・ビル

シュルレアリスム運動と密接な関りを持った(本人は正式なメンバーではなかったが)20世紀美術の巨人ジョアン・ミロの特徴は、夢の中のようなイメージを生み出す抽象的なフォルムにある。西57丁目9番地に立つソロー・ビルの北側にある約4.3メートルのブロンズ像《Moon Bird》も、その典型的な例と言えるだろう。ずんぐりとしたピカチュウのように見えるこの生き物を、ミロは月の神のようなものだと表現したが、確かに頭部、胴体、腕、脚が三日月形に連なっている。1940年代後半の制作時はもっと小さいものだったが、60年代半ばに大型化され、ソロー・ビルにある作品を含めて数体がブロンズで鋳造された。

実は、《Moon Bird》が設置されている場所には、かつてアレクサンダー・カルダーの動く彫刻、モビールがあった。しかし、ビル開発者のシェルドン・H・ソローが強風時に歩行者の危険になると判断したため、1994年にミロの作品を現在の場所に移設したという経緯がある。

13. ハンク・ウィリス・トーマス《Unity》(2019)

ハンク・ウィリス・トーマス、《Unity》(2019) Photo: Christina Horsten/picture alliance via Getty Images

設置場所:ティラニー/アダム・ストリート(ブルックリン)

2019年、ブルックリンのティラニー・ストリートとアダムス・ストリートの交差点に、右腕をかたどった高さ約7メートルのブロンズ像が設置された。以来この像は、人差し指を空に高く伸ばして、ブルックリン橋から降りてくるドライバーを出迎えている。「結束」を意味するタイトルが示すように、この彫刻はブルックリンの持つ多面性と、ニューヨークの5つの行政区の中で最も活気ある地域になろうと協力し合う地域性、そして民族・人種の多様性を讃えるものだ。以前、作者のハンス・ウィリス・トーマスは、「個人と集団のアイデンティティ、意欲、忍耐をこの作品で伝えたいと思った」と語っている。

トーマスは20年間にわたり、アイデンティティについて、そしてそれが国民を通してどう表現されるかを探求してきた。公共の彫刻作品も多く、たとえば巨大なアフロコーム(*2)が地面に突き刺さっている《All Power to All People》(2017)は、ハーレムやフィラデルフィアのほか、ネバダ州で年1回開かれる野外フェス、バーニングマンでも展示されている。


*2 歯の部分が長い櫛。

14. デボラ・カス《OY/YO》(2015)

ブルックリン・ブリッジ・パークに設置されたデボラ・カスの《OY/YO》(2015) Photo: Raymond Boyd/Getty Images

設置場所:ブルックリン美術館

デボラ・カスの《OY/YO》は、ハンク・ウィリス・トーマスの作品と同様、ブルックリンへの讃歌であり、この2つの言葉(*3)を絶え間なく耳にするニューヨーク全体を讃えるものだ。鮮やかな黄色に塗られたこの作品の大きさは、約2.4 × 5.2 × 4.6メートル。大文字のYとOを太字にしたもので構成され、片面からはOY、反対の面からはYOと読める一種の回文になっている。2011年にカスは、エド・ルシェが擬音語を作品にした《OOF》(1962)と同じフォントと色でOYという言葉を描いた。これがきっかけとなり、この言葉を両面から読める立体作品にした《OY/YO》が生まれている。


*3 Oyは驚きや諦め、うんざりした気分を表し、Yoは「やあ」「おい」といった呼びかけの言葉。

この彫刻はブルックリン・ブリッジ・パークの期間限定パブリックアートとして展示されたのち、ブルックリン美術館(イースタン・パークウェイ200番地)に収蔵され、エントランス前に設置された。

15. ヘンリー・ムーア《Reclining Figure》(1963-65)

ヘンリー・ムーア《Reclining Figure》(1963-65) Photo: Robert Nickelsberg/Getty Images

設置場所:リンカーン・センター

1967年にオープンしたリンカーン・センターは、きらびやかなミッドセンチュリー建築が特徴だ。しかし、この場所はかつてサンファン・ヒルと呼ばれ、アフリカ系やヒスパニック系を中心とした低所得者層の居住地だった。それを撤去して建てられたという負の歴史があるリンカーン・センターには、公的な記念碑が必要とされた。そこで設置されたのが、イギリスを代表する彫刻家、ヘンリー・ムーアのブロンズ像だ。リンカーン・センター・プラザのリフレクティング・プール(*4)にあり、周囲の建築と同じくモダニズムの精神を反映するこの作品は、水の中から立ち上がろうとする女性の姿を2つに分けて描いたもので、片方は頭と胴体、もう片方は脚を表現している。


*4 周辺環境を反射して景観とする人工池。

ムーアは、リフレクティング・プールの大きさをクリケットのフィールドほどもあると表現していた。《Reclining Figure》には広大なプールに見合う存在感はあるものの、このプロジェクトのために新しく創造されたのではなく、既存のアイデアを用いたものだった。リンカーン・センターは、自分たちの依頼が他の場所を提供しようという別口の依頼との競争に負けないよう、ムーアと交渉する必要があったという。

16. イザ・ゲンツケン《Rose Ⅲ》(2018)

イザ・ゲンツケン《Rose Ⅲ》(2018) Photo: Christina Horsten/picture alliance via Getty Images

設置場所:ズコッティ・パーク

ドイツ人アーティスト、イザ・ゲンツケンが手がけた《Rose Ⅲ》は、高さ約8メートル、重さ450キロを超えるバラの花を、スチールに塗装を施して制作したもの。オキュパイ・ウォール・ストリート抗議運動の7周年にあたる2018年9月に、ズコッティ・パークの北西の角に設置された。このタイミングが意図的だったかどうかは分からないが、ズコッティ・パークの所有者で、作品制作を依頼した不動産管理会社のブルックフィールド・プロパティーズにとって、2011年の抗議運動は好ましいものではなかっただろう。

ゲンツケンがスイスで摘んだ黄色のバラをモチーフにしたこの作品は、題名が示すように、シリーズの3作目にあたる。1つ目の作品は2003年に六本木ヒルズに設置され、2つ目の作品は2010年にニューヨークのニューミュージアムでインスタレーションとして展示された後、MoMAに収蔵された。

17. サンティアゴ・カラトラバ《The New York Times Capsule》(1999-2001)

サンティアゴ・カラトラバ《The New York Times Capsule》(1999-2001) Photo: NYC Department of Parks and Recreation

設置場所:アメリカ自然史博物館

ワーナー・ブラザーズのアニメシリーズのファンなら、古いビルを解体中の作業員が、中にカエルが入ったタイムカプセルを発見する話を覚えているかもしれない。飛び出てきたカエルが歌ったり踊ったりするのを見た作業員は、この驚くべき発見を金に換えようと、目をドルマークにしながら奔走する。しかし、劇場を借りてカエルを見せ物にしようとしたものの、カエルはうんともすんとも言わない。多額の借金を負った作業員は、次第に狂気に陥っていく。

ワールド・トレード・センター駅(通称オキュラス)を設計した人気建築家、サンティアゴ・カラトラバの手による《The New York Times Capsule》は、直径約1.5メートルのステンレスでできた近未来的な彫刻で、2001年にアメリカ自然史博物館(セントラル・パーク・ウエスト200番地)の敷地内に設置された。この作品はその名の通りタイムカプセルの役割を担っており、内部には100点あまりの20世紀のアート作品が閉じ込められている。しかし、残念ながらその中に不死身の両生類はいない。カプセル開封が予定されているのは3000年だが、そのとき人類はまだ存在しているだろうか?

18. フリッツ・ケーニッヒ《The Sphere》(1968-71)

フリッツ・ケーニッヒ《The Sphere》(1968-1971) Photo: Mario Tama/Getty Images

設置場所:リバティ・パーク

ドイツ人アーティスト、フリッツ・ケーニッヒの《The Sphere》に陥没した無数の傷があるのは、9.11同時多発テロの生き残りだからだ。高さ約7.6メートル、直径約5.2メートルのブロンズでできた抽象的な地球の彫刻は、1971年の落成から2001年の同時多発テロでツインタワーが崩壊するまで、ワールド・トレード・センター前の広場に設置されていた。そして、奇跡的に大きな破損なく残されたことで、悲劇を追悼する記念碑であると同時に復興のシンボルとなっている。

9.11の後、《The Sphere》は一時的に解体され、ワールド・トレード・センターの瓦礫と共にジョン・F・ケネディ国際空港の格納庫に移された。2002年から2017年にかけて、傷んだ状態のままバッテリー・パークで公開された後、9.11記念館や元あった場所を見下ろせるリバティ・パーク(シダー・ストリート155番地)に移設された。また、2001年に『Koenig’s Sphere(ケーニッヒの球体)』というTVドキュメンタリーが制作されている。

19. クリスティン・ジョーンズ&アンドリュー・ギンゼル《Metronome》(1999)

クリスティン・ジョーンズ&アンドリュー・ギンゼル《Metronome》(1999) Photo: UCG/Universal Images Group via Getty Images

設置場所:ユニオン・スクエア

不動産デベロッパーのリレイテッド・カンパニーズからの依頼で制作され、1999年に完成した《Metronome》は、時間とその哲学的重要性を表したものだ。ユニオン・スクエアに面したビルの前面を覆うように設置されたこの作品は、大きく2つの部分から構成される。1つは24時間表示での時刻とその時間の1日における割合を表示する大型LEDのデジタル時計、もう1つは部分的に金箔が施されたレンガ造りの巨大なレリーフだ。レリーフには巨大な岩や、騎馬にまたがったジョージ・ワシントン像の手の部分などがあしらわれ、中心にある穴から同心円状に模様が広がるデザインになっている。穴からは正午と深夜0時に蒸気が噴出される仕組みになっていたが、現在は機能していない。不具合はそれだけでなく、2010年から11年にかけて1年以上にわたり、デジタル時計が間違った時刻を表示していた。

《Metronome》はニューヨークの屋外彫刻で最も不評な作品で、ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとしたメディアから批判・嘲笑され、多数の苦情も寄せられた。なお、2020年にデジタル時計の部分は、人類が気候変動に対して行動を起こすのに残された年数・日数・時間を示すよう、アーティストのアンドリュー・ボイドとガン・ゴランによって改変されている。

20. メアリー・ミス《South Cove》(1984-87)

メアリー・ミス《South Cove》(1984-87) Photo: Battery Park City Authority

設置場所:バッテリー・パーク・シティ

アメリカのランドスケープアーティスト、メアリー・ミスの《South Cove》は、1970年代初頭にワールド・トレード・センターやトンネルなどを建設する際に出た土砂でできた埋立地、バッテリー・パーク・シティに設置され、当時のランド・アートが目指した美との調和を見せている。ミスは、こうした公園に求められるものを忠実に実践し、桟橋や心安らぐ緑地、見晴らしの良い場所といったサイトスペシフィックな要素を融合させて作品を制作した。つまり《South Cove》自体が、社会的・地理的背景を認識論的に捉えたウォーターフロント・パークと言ってもいいだろう。

そこでは、ニューヨークが海運の拠点として栄えた頃を思い起こさせる青い航海用ランプが遊歩道に沿って吊るされ、高台の展望台は遠くに見える自由の女神の王冠の形を模している。また、湾曲したドックは、ミスのランドスケープアーティスト仲間、ロバート・スミッソンの土塁彫刻《Spiral Jetty》を彷彿とさせ、スミッソンへの敬意が感じられる。さらに、樹木や岩は、オランダの植民地になる以前のマンハッタンの海岸線に沿って配置された。(翻訳:鈴木篤史)

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